あとがき リン
よろしくお願いします。
「そろそろね、この山を越えると、海に出るはず、約束の場所ね」
夕暮れの山奥でカラスの鳴き声が聞こえた。
「そう言えば、この星の誰かが言っていたわね、ヒメコンドルは何処に腐乱死体があの
か判るのではなく、何処かで此れから腐乱死体が出るのかが判るのさって」
彼女はリュックから水筒を取り出そうとした。するとスケッチブックから千切った一枚の画用紙が出てきた。
そこには彼女の似顔絵が描かれている。
旅先で出会った少女が描いてくれたものだ。
「お姉ちゃん綺麗ね、お顔、描いてあげるね」
彼女は其の絵を見ながら思う。
「この星の人達は、少しだけ勘違いをしているところがあるみたいね」
そして、暗くなり始めた空を見つめて星を探すような仕草をしたが、まだ星が見える時間でもない。
「夢は叶えるためだけにあるのじゃない、叶えようとする努力に美しさがあるってことをね」
彼女は出しそびれた水筒に手を掛けて続ける。
「この絵のように、不完全だけど、とても綺麗な絵。この星の有名な画家さんが、どうしても満足がいかないって、亡くなるまで手直しを続けていた絵があるけど、今じゃ誰も知らない人がいないくらいに有名な絵になっている。素敵な夢は叶えられなくても、語り継がれていくものなのにね。この星の人達が、少しでも其れを知ってくれたら、未来は変わるかもしれない」
そう言うと彼女は、上着を脱ぎ、中のシャツのボタンを外して、胸の扉を開けた。
そこからペンギンそっくりの異世界生物が出てきて、
「って、やってられるかい! 誰やねん、こんなエージェントスーツ作ったん。おかげで変な男がうじゃうじゃくっ付いてくるし。初めて地球いう星に来たけど、こんなエージェントスーツはあかんわ。星に帰ったら言うたらなあかんな。今度からエージェントスーツは、カビ臭い店で働いてる、同んなじくらいカビ臭い爺様くらいにしとかんかい! てな」
杉浦美咲
杉浦美咲は、洋菓子店の店長の都合で移転した店を辞め、再就職が決まっていた。市木清田が就職して、半年後のことである。
最後まで読んでくださった全ての方々に深く感謝をいたします。
本当に!ありがとうございました。