第四章 4 市木清田
よろしくお願いします。
「そうかぁ。決まったかぁ」
彼はアパートに届いた内定通知を見ていた。
「私もサラリーマンの仲間入りだな」
同窓会の時に丸山に言われた言葉を思い出す。
「お前、ムーミンパパみたいやな」
「どう言う意味だ?」
「ムーミンパパって、シルクハット被って、パイプ吹かして、書斎で座ってるやん」
「そうだ」
「でも、自分のこと小説家や言うてるけど、一冊も書いた本ないねんで」
「うーん」
唸る事しかできなかった自分を思い出している。
このままではいけない、と同窓会が終わった数日後、アルバイト生活に区切りをつけて就職活動を始めた。
そして、シルクハットなど最初から被ってはいないが、煙草と小説に別れを告げる事に決めた。
今まで何も書けなかった殆ど白に近い原稿用紙を整理し始めると、古びた一枚の紙片を見つけた。
市木清田は、その紙片を見つめながら目が潤んできた。
皆んな馬鹿だよ。
誰もあの頃から全然変わっていないじゃないか。
その紙切れには、こう書かれていた。
10代後半の幼い発想である。
連判状
丸山 武
梅本一義
近藤勇二
市木清田
私達は、どんな状況に陥っても、運命からの質問状に対して逃げはしない、人として、紳士らしく答えを見つけるであろう。
これをもって私達は紳士連盟を結成する
ありがとうございました。