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紳士の条件  作者: 織風 羊
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第二章 5 医療現場での言葉遣い

よろしくお願いします。



 梅本一義は、市木清田と別れると病院へ向かった。

梅本は市木が丸山の娘を見舞いに行こうとしていた事を知らない。

喫茶店を出て別れを告げると梅本は近道になる裏通りを抜けて病院へ向かった。

市木は表通りの並木道をふらふらと歩き出していた。

並木道に心を惹かれず、可愛らしい洋菓子店が無ければ見舞いにいこうなどとは思わなかったかもしれない。

 

 外来診療を終えて市木と話をし、病院に戻るとカルテの整理をし、其の後で入院患者の容態を診て回ろうと思っていた。

外来カルテの整理が終わった頃は夕方の四時前になっていた。

結構な時間になってしまったなと思った。

入院患者用の夕食が配膳されるまでに容態を診ておきたい。

そう思うと梅本はナースステーションに行き、冗談と労いの言葉を交えながら患者の様子を聞いていた。

自分が担当している患者のある程度の情報を前もって確かめると、各々の病室、大部屋のベッドの上にいる患者に会いに行った。

容態が良くない、と聞いている人はいなかったのでいつもの様に回り、いつも通りの大して変わらない会話をする。


「どうですかぁ」


「先生、いつ頃退院できますでしょうか?」


「うーん、そうですね、順調に回復してるようなので明日の検査で異常がなければ、て事でいかがでしょうかねぇ」


「じゃ早速、家族に連絡してみます」


「ええ、事務手続きの事とかもありますし、検査終わって直ぐって言う訳にもいきませんので、まぁー看護師さんと相談してください」



「どうですかぁ」


「先生、良くなるんでしょうか?」


「そーねぇー、手術は成功してるんですよ、だから良くならないって事はないですし、手術前よりも悪くなることもないんですよね。まぁ、こういう病気は手術をしたからと言って急に良くなると言う訳でもないので、そうねぇ、ゆっくりと時間をかけて様子を見ていきましょうかぁ」



「どうですかぁ、薬が効いてないんじゃないかって心配されているって聞いたんですけど」


「いやー、どうもねぇ、良くなっているのか、なってないのか、よく分からないのですよね、どうなのでしょうか?」


「ああー、成る程ねぇ、其れですよねぇ、まぁ良くなると思いますけども、もしかしたらぁ、はっきりした効果が現れない事もあるんですよね。ただねぇ他に何種類か違う薬もあるんですよ。暫く様子を見て余り効果がないようでしたら別の薬に変えてみましょう」

 

 このような感じで残りの数人の患者も診て回る。

漸く病棟から医局へ戻ると缶コーヒーの栓を抜き一口飲むと、腕を組んで椅子の背もたれに上半身を預ける。

梅本は市木との会話を思い出していた。

「いつから標準語を喋るようになった?」そうだな、関西弁混じりの変な標準語は間違いなく病院で働いてからだな。


「梅本先生、関西弁でムンテラするのは親しみが出て良いとは思うけど、先生みたいに関西訛りが多すぎるのもどうかと思うよ」上司にそう言われると直さざるを得ない。

言い方は優しいが絶対的なものがある。

「だよなぁ、あの時くらいからかなぁ、関西風イントネーションの標準語は」梅本は声を出さず笑うと、別にたいしたことではないと、過去の記憶へ戻して仕舞った。


そして缶の中のコーヒーを最後の一滴まで飲み干すと、


「さて、最後の仕上げは丸山の病室だな。行くとしますか!」


ありがとうございました。

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