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栄光と滅亡のアトランティス -The truth of Atlantis-  作者: 陽向瑠璃
第五章 和平に向けて
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第75話 政府との会談2

「無償でと言いますが、これは和平協定です。グリーンラッド国の降伏ではありません。その辺りの認識を誤らないでください」

 と強く伝えた。


 しかし、まだ黙りこんでいる。


「お互いの国の長所で、相手国の短所を補い合えば、共に繁栄を迎えることができます。食糧は貿易すれば、それに見合う報酬が得られます。そしてなんと言っても今後、戦が起こりません。アトランティスの民は安心して生活することが可能になるのです」

 続けざまに伝えると、


「姫様のおっしゃることは、よくわかりました。ですが、あの好戦的な種族が協定を守るかどうか疑わしいですな」

 バレンスタインは、反旗をみせる。


「ですから互いが守る規則を設けるのです。和平交渉の段階で」


「ですから、協定を守るような種族なのかが疑わしいと申しております」


「そんなことを言ったら話が始まらないじゃない! 現に私たちは怪我一つなく帰国できましたよ。3日ほど巨人族の軍上官と一緒でしたが、人対人。ちゃんと話が通じました。心がありました。互いが信頼し合うことができました。ですから、信頼に値する種族です!!」

 必死になって説得する。


「私どもには、かの兵器がございます。戦えば絶対に勝てます。圧倒的な差がついているのです。今まで沢山のアトランティス人が殺されました。なのになぜ、こちらから手を差し伸べねばならないのでしょうか?」

 ガハルまで調子に乗ってきた。


 そこにアーク兄さまが、

「バレンスタイン、ガハル。ラムが命を懸けてラグナロク王を説得し、今後は戦ではなく互いが協力しあって発展、繁栄していこうと和平への道をつくってきたのだ。悪いが、政府にそういった働きかけは今まで一切してこなかったではないか。自分たちができないことをしてきたんだ。そんなに拒絶することもないだろう」

 と助け舟を出してくれた。

 と言うか、今まで良く我慢してくれていたと思う。


「アーク王子、それでは聞きますが」

 バレンスタインが言う


「ん? なんだ?」


「互いが協力し合い発展、繁栄と言いますが、ハッキリ申し上げてアトランティスには巨人族に助けて欲しいことなど1つもございません。身体的な力の差はありますが、アトランティスにはそれを補う科学力がございます。重いものは重力無効化のテクノロジーでカバーできます」


「そんなことはない。やはり身体が大きく力があることによって、活躍できる場もある。食糧生産など良いではないか?」


「それだって我が国は科学技術でカバーしております」

 もう和平など意味がないと言わんばかりだった。


「では、このまま戦を続けるのか? クローンを造り続けるのか? またあの気象兵器を使うのか?」


「はい。そうすれば、戦には勝てますし被害も少なくて済みます」

 ガハルが答えた。


「ハッキリいうぞ! 今度あの気象兵器を使用したらガイア神の怒りを買い、ムーのような反作用がアトランティスに起こるぞ」


「そのような世迷言など信じませぬ。ガイア神ですか? この星の意識と言いますが、この星自体が生命体だとのお考えには同調できません」

 バレンスタインもハッキリ述べた。


「この野郎! あの兵器を使いたくて仕方がないのだろう? 子供のオモチャじゃないんだぞ!!」

 とうとう怒りを爆発させてしまった。


「アーク兄さま、ご冷静になさってください。鎮まってください。ここは会談の場なのですから、お願いいたします」

 そうお願いした。


「悪い。少し頭に血が上ったようだ」

 そういって椅子に座り直した。


 そこへお父様(アカシック王)が、

「今、アークが伝えたことは本当なのだよ。言葉が悪かったのは申し訳なかったが、かの試作段階の兵器でガイア神は反応したのだ。ただ、反作用を起こすまではなさらなかっただけなのだ」

 そう冷静かつ沈着に伝えてくださった。


「では証拠をだせますでしょうか? ガイア神とやらが反応したという痕跡は何処にあるのですか?」


「この世の物理的には反作用を起こされなかったので、地上の何処にも痕跡はない」

 そうお父様が答えた。


「では私は信じることができません。ムーの沈没とて遠い昔の話です。徐々に海底に沈んでいったのを一夜で沈没したと誇張して伝説になっているとはお考えにならないのですか?」

 バレンスタインが、本性を現してきた。


「バレンスタイン宰相よ。私の毎月の法話を聞いているであろう? それは事実なのだよ」


「申し訳ございませんが、わたしめは王のご法話はお聞きしておりません。国民から信頼を得て政権運営しているのですから、忙しいのです」

 お父様まで軽んじるような話し方になっていた。


「申し訳ございませんが、本日は時間でございます。この話の続きはまた近々設けますので、今日はお引き取りくださいませ」

 いきなりバレンスタインがそう話し、会談を打ち切った。


「なんですって? 時間は2時間あると言っていたではありませんか? あと半刻以上は残っていますよ」

 私がそう伝えると、


「いえ2時間きっかりとは申しておりませんが、2時間ほどならとゴーランへ伝えたはずでございますよ」

 と、あっさりと言い返してきた。


『!!』

 私も堪忍袋の緒が切れそうになった。


「わかった。では、本日は王宮に帰るが、また近々の約束は守っていただきたい」

 とお父様が、会談終了を承諾してしまわれた。


『な‥‥なんてことに、なってしまったの? あぁ、ラグナロク王の信頼に答えたい。折角、私に時間をくれたのに』

 涙がでそうになったが、この連中になど涙を見せたくはなかったので必死にこらえた。


「お父様が、そうおっしゃるなら私も王宮に一緒に戻ります」

「俺も帰るぞ」

 こうして第1回目の会談は、ほぼ決裂状態で終わった。

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