第69話 アチ地区拠点到着
こうして予定より1日遅れたけど、巨人族が着く前にアチ地区の拠点に到着することができた。
上空から見る新しい砦などは流石、最近建築したものだ。
前のものより頑丈で大きく造られていた。
砦の前で止まり、声を掛けた。
「私は、第2王女のラムディアです。突然の訪問ですが着陸させていただきますね」
そう言ってベール機長に、
「砦の中に入って、発着場に降ろして頂戴」
とお願いした。
「かしこまりました」
そして静かに着陸した。
「色々と説明してこなくてはいけないから、私とシルバー、ライゼン、カイオンのみ下船します」
そう伝えて、ベール機長、操縦士、イーシュナを残して下船した。
下船して格納庫にノックしてから、
「ギラン殿。今から私が拠点の者と話をしてきます。しばらく、そのままお待ちください」
と伝えて、指令所のある建物に向かった。
*
指令所から、何かやら太々しい兵士がでてきた。
「これは、ラムディア王女。突然、如何されましたか?」
「緊急の用があって来ました。あなたは?」
そう聞くと、
「はい。私めは副拠点長のボーツと申します。姫様にお会いでき光栄にございます」
と媚びを売ってくる態度で返事が返ってきたので、少しムカついた。
「そんな挨拶はいいの。早速、拠点長に会いたいの。案内して」
「かしこまりました。こちらへおいでくださいませ」
そう言って案内し出したのでついて行った。
少し広い謁見室のような部屋に案内された。
「それでは、拠点長を呼んできますのでお待ちくださいませ」
そう言って、そそくさ出て行った。
「なんか武人って感じのしないイヤな人だったわ。あれで副拠点長なの?」
と愚痴をこぼすとシルバーが、
「彼は、ガハル軍最高司令官の甥っ子なのですよ」
「なんですって! また血筋だけで拠点のまとめ役に任命したの?」
怒りがフツフツと沸いてきた。
「呆れてものが言えませんな」
近衛隊のライゼン部隊長も呆れ顔で答えた。
しばらく待っていると、扉から拠点長と思われる人物がノックをしてから入ってきた。
その者は入室したとたん、片膝を着いて、
「突然の来訪に驚きましたが、ラムディア王女にお会いでき光栄に存じます」
と武人らしく、しっかりとして口調で挨拶をしてきた。
『拠点長は、まともそうでホッとしたわ』
心からそう思った。
『同じ言葉でも、あの太々しいボーツと同じような言葉でもこれほど差がでるのも人格ゆえなのね』
とも思った。
「顔をあげて、拠点長。緊急の話があるの、椅子に座って」
「はい。それでは失礼いたします」
と向かい側の下座に座った。
「私は、拠点長のクラウドと申します。それで緊急の内容をお聞かせくださいませ」
「クラウド、ありがとう。それでは早速、話させて頂くわ」
クラウドが頷く。
「実は政府と軍には秘密で、グリーンラッド国のラグナロク王と会ってきました」
クラウドは思わず立ち上がって、
「何ですって!」
と叫んだ。
「申し訳ございません。あまりに衝撃過ぎたので思わず叫んでしまいました」
「そんなことは、どうでもいいの。話を聞いて」
「はい」
「細かい話はあとでするから先に結論を言うと、ラグナロク王と1ヶ月停戦の約束を取り付けてきました」
「なんと大胆なことをなさる」
身の乗り出してきた。
「まだ巨人族の攻撃隊は、それを知りません」
「ではどうやって開戦を止めるのでしょうか?」
「私の飛行船に使者が1人乗船してきました。彼がラグナロク王の攻撃中止命令書を持っています」
「なんですって! 巨人が来ているのですか!!」
「慌てるのはわかるけど落ち着いて頂戴。彼が、巨人族に向けて攻撃中止を伝えます。ですから彼‥‥名前はギランと言いますが、ギランは私の客人です。絶対に危害を加えないと約束してください。これは私が命に代えても守らなくてはならない約束なのです」
「余りにも急なことが続きますので、少しお時間をください」
そう言って深呼吸をし始めた。
両手で頬をバシーンと叩くと真顔になり、
「ようやく落ち着きました。拠点の者には私から説明しますが、可能でしたら姫様にも立ち会っていただきたいのですが可能でございましょうか?」
「もちろんよ! 私が直接説明してもいいわ」
「いえ、拠点長として私から説明いたします。色々と質問がでると思いますので、その対応をお願いいたします」
「わかったわ。それでは詳細を説明するわ」
と最初から話をした。
*
「私は軍人です。いかに姫様からの話といえど、ガハル軍最高司令官の許可が必要です」
「当然ですね。それは私がします」
「よろしくお願いいたします」
そうして通信室に移動し、首都ポンティスの軍司令部へ通信を繋いてもらった。