第5話 晩餐、そして‥‥
本日の晩餐で、お父様より説法開始についての報告があった。
「昨晩、話をしたようにバレスタイン宰相と王家顧問ゴーランと相談してきた。ゴーランは興奮して喜んでくれたが、宰相は乗る気にない様子だった。『政府として議論をしたい、また開始することとなれば準備期間も1ヶ月ほどは必要です』との回答であった」
私は、
「思ったより、前向きにお話が進んでいるご様子で安心いたしました」
といったのだけど、ラファティア姉さまからは、
「政府には念のため、ご用心くださいますよう申し上げます」
と言葉を発した。
お父さまは、
「それは私も認識しているが、ありがとう」
「いえ。差し出がましい話でした」
とラファティア姉さまは恐縮そうだった。
「よいよい。どの道1ヶ月ほどはかかるだろうから私もトート神にお教えを受けながら準備をしていく。さぁ、難しい話はここまでにして楽しい食事をしよう」
*
場所は変わり、ここは首都ポンティスにある政府宮の一室にある一同が顔を合わせていた。
宰相のバレスタイン
軍の最高司令官のガハル
王家顧問ゴーラン
科学主任のマシュロン
バレスタインが口を開く、
「アカシック王が、何をとち狂ったのかトート神のお告げがありアトランティスの民に説法を開始したいと言ってきて驚いたぞ」
ニヤリと笑い、
「しかしゴーランの演技はなかなかものだな。心底喜んでいるようにしか見えなかったぞ」
「それは恐縮です。私は王家顧問ですから立場がございます」
「うむ。それで良いのだ。今はな、今は。しかし、どうしたものか。捨ておくわけにもいかないが、あまり王家にしゃしゃり出って欲しくはないのだがな」
その後、ガハルに顔を向け、
「ガハルよ。北方の巨人族との戦はどうなっておる」
ガハルからは、
「やつらは平均5メートルほどもあり、頑丈な肉体の上に結構な装甲を着装していますので、手ごわいです。力も強いですし、あの好戦的な民族には手を焼いています。先週の侵攻には、死者100名ほど出してしまいました」
マシュロンを見ながら、
「何とか手はないものでしょうか? 奴らを簡単に屠れるような装備でも開発されれば良いのですか」
と報告と相談があった。
「マシュロン、例の開発の状況はどうだ? 進捗を報告せよ」
そう使命があると、マシュロンは熱を帯びた一種の狂気をはらんだように報告をおこなった。
「そうか! それは朗報だ。‥‥それならば、王に好きなことをさせて置いて、我らが協力的であると思わせた方が良いな。時間稼ぎにもなる」
「よし! ゴーランよ。アカシック王には『政府は全面的に協力いたします。但し、準備に1ヶ月ほどいただきたい』と明日早々に報告にいけ」
「はい。かしこまりました」
一同で目を合わせた後、この部屋では笑い声が響き渡った。