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栄光と滅亡のアトランティス -The truth of Atlantis-  作者: 陽向瑠璃
第四章 巨人族
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第48話 巨人族の拠点

 アチ地区の最前線の拠点を占領されてから1年が経過し、オリハルコン歴1591年になった。

 その間は、更なる侵攻はなかった。

 飛行船で逐次偵察しているが、巨人族はアトランティスの拠点を破壊し、自分たちのサイズの砦を築いていた。

 更には、周りを耕し作物も育てているようだった。


 砦の建設中に、アトランティス軍は何度か攻めたが守りが堅く打ち破れずにいた。

 侵攻に対する防御戦は経験があったが、砦を落とすという攻め側の経験がなかったこともあるが、作戦や指揮を軍最高司令官ガハルの甥のガフェイが務めていたのも敗因だった。

 しかし、そのことは誰も言い出せなかった。

 なんといってもバックには、軍最高司令がおり作戦を伝えているのだ。

 軍規を破ったものには軍法会議が待っている。

 そうしているうちに、みすみす巨人族の砦を完成させてしまった。



 首都ポンティスでは、ガバルの苛立ちが止まらない。

 巨人どもは、とうとう砦を完成させた。

 生活できるように畑まで作っていると聞く。

 今までの作戦は見事に敗戦だらけで被害者を出すだけだった。


 砦ができた以上、巨人どもが第2拠点に侵攻を開始するのは目に見えている。

『なんとか、この状況を打破しなくてはならないが勝算がない!』

 正直に、敵の強さを認めていた。


『バレスタイン宰相からお叱りを受ける日々が続いている。なんとかしなくては』

 の堂々巡りであった。


『第2拠点を失っても首都のある南方へは山脈がある。我が軍は飛行船があるが、奴らにはない。だから失っても即首都の危機にはならない』

 そうした考えに、つい逃げてしまっていた。



 その1ヶ月後、巨人族がとうとう動いた。

 第2拠点での防衛戦が開始された。

 地の利があるにしてもアトランティス軍は防戦で手一杯であった。

 幸運にも巨人族の攻撃勢が少なかったことと強引に突破を計らずに退却したことにより、戦は短時間で終わった。



 巨人族の砦では、攻撃隊長のスーは満足気であった。

「初戦のため様子見程度に仕掛けたが、この拠点を失った小人どもは弱い!」

 何度か攻撃にしに来たが手ぬるいし動きも鈍い、あしらうのは簡単だった。


「次は本格的に攻め、第2拠点も占拠してやるぞ!」

 と絶好調であった。



 更に2週間後、今度は大部隊で一気に第2拠点を攻め落としに猛攻してきた。

「今回は、前回とまったく巨人どもの数も意気込みも違う。奴ら本気だ!」

 ラーゼは即見抜いた。


「ガフェイ指令、このままでは我が軍は壊滅します。撤退しましょう」

 と進言した。


「なにを言う! ろくに戦端も開いていない状態で、さっさと逃げるのか? 弱虫め! お前の意見など聞いておらぬ。でしゃばるな!」

 と叱咤を受ける始末であった。


『これは危険だ。本当に全滅してしまうぞ。命令違反だが、出来るだけの人数を逃がそう。将来の反撃のために!』

 罰則覚悟で誓い、即行動にでて拠点常駐部隊のところに急いで向かった。


「今回の巨人どもは本気で攻め落としにきている。前回のは様子見程度だったのだ」


「やはりそうでしたか。いや、そうとしか思えませんでした」

 配下の者が答える。


「このまま指令の命令を聞いていたら全滅する」


「‥‥はい」


「命令違反の罪を俺がとる。だから出来るだけ上手に引き飛行船で西方なり東方の拠点に逃れるのだ! 東方にはファーレン殿、西方にはクルツ殿がおられる。状況を説明すれば一時的にせよ保護してくれるに違いない。頼むぞ!」


「かしこまりました。ラーゼ殿も一緒に逃げましょう!」


「いや、俺は残る。ガフェイ指令に逆らえず死んでいく者たちと一緒に戦う。それが武人の責任だ。ファーレン殿、クルツ殿によろしくとお伝え申す。では、さらばだ! アトランティスの未来をよろしく頼む!」

 そういって前線に戻っていった。


『ラーゼ殿‥‥あなたは立派な指揮官であり武人でした。あなたを失うのはアトランティスにとって大きな損失となるでしょう。しかし、そのお心引継ぎましたぞ』

 そして急いで駐屯部隊の元へ行き、


「今、ラーゼ殿から撤退命令がでた。飛行船に乗れるだけ乗せ、東方のファーレン殿か、西方のクルツ殿の元へ避難するのだ。急げ!」


「は!」

 迅速に撤退を開始した。


 浮き上がる飛行船を見て、ガフェイは憤慨した。

「ラーゼ! お前、命令違反したな!!」


「はい。これもアトランティスの未来を思えばこそです。処罰は覚悟の上でございます!」


「叔父に訴えて、お前を処刑にしてやるからな。覚悟しておけ!」

 そう言いながらもガフェイは、浮足だっていた。


 戦場経験の長い駐屯部隊が撤退してしまった。

 西方、東方からの援軍は現在はいない。

 自分が首都から連れてきた兵士と急いで製造したクローン兵しかいない。

『俺も早く逃げねば死ぬ』

 自分が生き残ることしか、もう頭になかった。


「クローン兵ども巨人兵の猛攻の盾になれ!」

 強制的に命令する。


「アトランティスの軍人よ。クローン兵を盾に攻撃するのだ。いいな!」

 そう命令を下し、自分は飛行船の元へ向かった。

『奴らに時間稼ぎをしてもらっている間に首都へ逃げるぞ』

 まっしぐらに自分の船へ走った。

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