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栄光と滅亡のアトランティス -The truth of Atlantis-  作者: 陽向瑠璃
第三章 邂逅
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第45話 目覚め

 それから月日が立ち、また1年が経過した。

 オリハルコン歴1590年。

 私も19歳になった。

 そして、精神修行も大分進んでいた。


「今日からは、あなたの心を清めることを始めます」

 ラファティア姉さまが、そう話された。


「はい。ご指導、よろしくお願いいたします」


「ラム。あなたは今まで19年生きてきて、本当に真っ直ぐに信仰深く生きてきたわ。それは私もわかっているわよ」


「ありがとうございます!」


「でもね、それでもラムは過ちを犯しているの。それで心に曇りがあって守護天使と直接、交信ができないのよ」


「はい」


「だから心を清めることができれば、以前にカルディア様がおっしゃっていたように、直接交信ができるようになります。いよいよ、その段階にきました」


「ラファ姉さまのご指導のお陰です」


「それでは時間はがかるけど、今日から始めるわよ」


「よろしくお願いいたします」


「やることは反省よ。今まで噓偽りなく生きてきた? そういったことを産まれてから現在までのすべてのことに対して向き合い、トート神の教えと照らし合わせて過ちを認め、心から反省していくのよ」


「言葉では簡単そうですが、とても難しいように思えます」


「そうよ。難しいわよ。今まで生きていた自我が邪魔をするからね。でも反省であって、自分をイジメることではないから注意してね。過剰に自分を懲らしめることと反省は違うのよ」


「でも産まれてからすべてなど、正直思い出せません」


「大丈夫。反省が進んでくると自然に頭に浮かんでくるから、これも訓練が必要なの。大切なのは、トート神からみて恥かしくない行為だったか考えることなのよ。自我を排して、第3者からの視点で、そしてトート神からの視点としてとらえ静かに点検していくのよ。そして過ちは素直に反省すること、心の中でお詫びするの。それができると自然に涙が溢れ出てくるわ」


「はい。やってみます」


「それでは一番、思い浮かべた内容でいいから始めてみて」


 そうして精神を集中しくうの状態にもっていく。

 最初に浮かんだのは、アーク兄さまを差し置いて、皆をだまして巨人族との戦に参加したことだった。


『あのときアーク兄さまの立場も考えず、勝手にお父様に話を持ち掛け、実際に巨人と戦うつもりで戦場に向かった』


『私はみんなをあざむいた』


『アーク兄さまは出立時に悔しそうにしていたわ。私の兄であり近衛隊長という立場でもあるのに実戦を先に私が経験してしまった。お兄様の立場を考えれば、せめて事前に相談すべきだったわ。アーク兄さま、本当にごめんなさい』


 アーク兄さまの表情、言動が頭に浮かぶ。

『戦から帰ってきてからも、言葉では俺の立場がないというだけで結局は笑って許してくださった。私が無事で帰ってきたことに本当に嬉しそうだった』


 アモン兄さまも、ラファティア姉さまも、どれほど私のことを心配したのかと思うと胸が張り裂けそうになった。

『お父様にはご許可をいただいたけれど、私が実戦を経験しにいくとわかっておられても許して戦場へ向かわせてくださった。父としてどれほどご心配されたことでしょう。お母様を亡くし、私も死ぬかも知れないのに私の我がままをお聞きくださった。温かな広いお心で私を包んでくださった』


『あぁ、私はなんと自分勝手だったのだろう』

 そう思うと涙が溢れ出てきた。


 時間をかけ、更に深く反省していった。

 もう顔は涙でぐしゃぐしゃだ。


 この件の反省を終えると、心が爽やかな気持ちになれた。

 とても不思議な感覚だった。


「ラム。ちゃんとできたようね」

 ラファティア姉さまが褒めてくださった。


「はい! ラファ姉さま、私が嘘をついて戦場に出向いたこと、お詫びいたします。ご心配をお掛けし本当に申し訳ございません」

 と謝った。


「いいのよ。初めてだったけど、ちゃんと反省できたのがわかるわ。その調子よ。明日からも、続けて行こうね!」


「はい!」


「そうそう! 今日からは寝る前に、1日のことを思い出しておこなった、想ったことを点検し反省する点があったら反省する習慣を身に付けてね」


「わかりました」


「反省していって心が清んできても、日々生きていて小さなことでも心を曇らせてしまっては意味がないわ。だから毎日寝る前に今日1日を振り返ることが大切なのよ」


「なるほど」


「一番怖いのは自分は反省をすべて行ったと思い、知らぬうちに鼻高々の増上慢になり転落してしまうことなのよ。だから気を引き締めて毎日、自分を点検するの」


「ラファ姉さまは教え方が、本当に上手ですね。とても心の中でしっくりきました」


「うん。一緒に頑張ろうね!」


「はい!」


 こうして反省修行を開始した。



 1ヶ月ほど経つと、自分でも心が清んできているのが実感できた。

 しかし、ラファティア姉さまの忠告に従い、鼻高々にならないよう注意している。


 朝の祈りの時間を迎え水晶神殿で、トート神への祈りを終えると懐かしい声が聞こえた。


「ラムディア。聞こえますか? 私です。カルディアです」

 心の中心から頭に浮かびあがってくるように声が響いた。


「はい、聞こえます。カルディア様のお声が!」


「おめでとう。私もとても嬉しいです。やっと直接、あなたと会話ができるようになったのだから!」

 心底喜んでいるのが、笑顔のイメージとともに伝わってきた。


「ラファ姉さま、そしてカルディア様のご指導のお陰で、やっとここまで来ました。ありがとうございます」


「うん。今の心の感覚を感性‥‥本来は悟性と言うべきね。覚えておいて。この心のチャンネルが私と交信できる状態なのよ」


「はい! わかりました。この言葉では表現できない感覚。これが悟性なのですね」


「そうですよ」


「カルディア様、これからもよろしくお願いいたします」


「はい。一緒にアトランティスの滅亡を阻止しましょうね」


 こうして初の直接交信が終わった。


 いつの間にか来ていたラファティア姉さまが、

「カルディア様と会話できたみたいね」


「はい! ラファ姉さまのご指導の賜物です。本当にありがとうございました」


「したではないですよ。過去形ではなく、これからもずっとですよ」


「あ! はい。失礼しました。これからも、よろしくお願いいたします」


「ラム。鏡を見てみなさい」

 とラファティア姉さまがおっしゃった。


 言われたように神殿内の大鏡の前に立ち、自分を見てみた。

 私の髪の色が、綺麗なゴールデンピンクに変わっていた。

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