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第1話 魔法士は準備をする

「さて、荷物はこれくらいか」


 俺は、自分に与えられていた執務室を整理していた。

 忙しすぎてほとんど自宅に帰っていなかったから、私物のほとんどがここにある。

 おかげでなかなかの量があってまとめるのも一苦労だ。


「あとはこいつを<収納>してっと……」

「おー、いつ見ても魔法ってのは便利だなぁ」


 不意に部屋の入り口かけられた野太い声を無視して、俺は次々に荷物を詰めていく。

 俺が魔法で作ったバッグは、その見た目にそぐわないほどの大容量だから七年分の荷物なんてペロりだ。


「ユーリィ……聞こえてるかぁ? いや、聞こえてるよなぁ……」

「ペロッペロッペローん♪」


 若干泣き出しそうな声をやっぱり無視して荷物を詰める。

 大体何を言いにきたのか分かってるんだから無視するのが一番だろう。

 ちなみにペロペロのうたは俺が大量の荷物を収納する時に歌う定番ソングだ。


「おーい、頼むよユー……」

「し、師匠っ!」

「ん、どうしたネネカ?」


 俺の耳は、焦りながら走ってきたネネカの声をキャッチした。

 ネネカの話ならばすぐに聞いてやらねばならないだろう。

 なんといってもネネカは俺が戦場で拾ってきた唯一の弟子なんだからな。


「あ、ラッセル騎士団長が先にお待ちでしたか……どうぞ」


 よくできた弟子は、先程から声をかけてきていた筋肉だるまに会話の優先権を譲るらしい。

 まぁ弟子がそういうなら仕方がないか。


「……チッ。おお、ラッセルじゃないか!」

「なぁ、気のせいか今舌打ちが聞こえた気がしたんだが……」

「その話か。それなら気のせいじゃないぞ! よし、話は終わりだな? それでネネカは——」

「終わってないぞ!」

「…………。で、ネネカは——」

「あの……まだ騎士団長のお話が終わっていないみたい、です……」


 まったく……俺にとっては弟子の話のが最優先だというのにネネカは序列にこだわりすぎだろう。

 まぁラッセルが待っていたらネネカも話しづらいか……。

 仕方ない、用件は分かっているが聞くだけ聞いてやるか。


「で、ラッセルはなんの用だ? 俺は永久休暇……じゃなくて追放されたらしいから出ていかねばならんのだが……」

「休暇は結構だが、本当に出ていくのか?」

「ああ、どうやらヒキガエルの機嫌を損ねたらしい」

「誰の事を言ってるのかはわかるが、その呼び方はやめてくれ」

「どうしてだ?」

「有事の時に思い出したら守る剣が鈍るだろうが」


 ラッセルは口をおさえながら顔を赤くしている。

 お前、絶対笑いをこらえているだろ。


「ああ……あの姿が目に入ったら剣を抜く気なくなるもんな」

「いや、そんなことは……おほん。ところでお前はもう魔法士団長ではないんだな?」

「この国から出ていけというんだからその職務もお役御免ってことだろう」

「そうか!」


 なぜかラッセルが嬉しそうにそういった。

 おい、こいつが裏で手を回したんじゃないだろうな?

 ……いや、そんなことはしないか。

 こいつは裏表がないからそんな事をするはずがない。

 じゃあここに来てる理由は……やっぱりあの件か。


「じゃあ出来るよな!?」

「ほらきた。まぁ一応何が出来るのか? と聞いておく」

「決まっているだろう、仕合いだよ! し・あ・い!」

「はぁ……そんなわ・た・しみたいな言い方されても萌えないんだが……」

「俺は燃えてきたぜぇ!!」


 話にならんと一度は首を横に振った俺だったが、すぐに思い直した。

 もうこの国は出るんだ、最後にもう一度だけ格付けをしてやるのもいい。


「わかったよ……。一回だけだぞ」

「もちろんだ! そういってくれると思ってたぜ! 練兵場はおさえてあるから用意が出来たら来てくれ!」

「根回し済かよ。まったく……」


 ラッセルは俺の了承を得ると、待ってるぞ!といって走り去っていった。

 前に一度だけ武術大会というバカみたいな見世物に出たことがある。

 その時に決勝でぶちのめしてやって以来、手合わせしろとうるさいんだよな。


「で、ネネカはどうしたんだ?」

「師匠が国を出るって聞いて、その……」

「ああ、もう聞いたのか。国を出るっていうか追放だな追放。お姫様に睨まれたらしい」

「じゃあついにヒキガ……じゃなくてフローディア様に手を?」

「出すわけがないだろう」

「じゃあ上げたんですか?」

「いや上げてもいないぞ。ま、バカ親……親バカだったか? どっちでもいいがその成れの果てが暴走したんだろ。悪いがお前のことはロゼルに任せて……は?」


 ネネカは何のつもりか大きな旅行用の鞄を俺の目の前に置いた。

 こいつまさか……。


「私ももちろんついて行きますよっ」

「えぇ……」

「なんでそんな嫌そうなんですか!? 私を拾ったのは師匠でしょ? ちゃんと最後まで面倒見てくださいよー」

「師匠離れは?」

「まだまだしませんっ!」


 ネネカはそういいながら控えめな胸を張るもんだからついつい目が()()にいってしまった。

 薄茶色の髪に、意志の強そうな赤色の瞳。

 胸は控えめだが、体が小さいのでむしろバランスはいい。

 そんなネネカを弟子といいながら俺が囲っているなんて噂もあったが、俺とネネカは断じてそういう関係ではない。

 残念ながら、な。


「はぁ、仕方ないか……ネネカは一度言い出したら聞かないからな」


 まぁこいつは俺が個人的に育てているだけで役職にもついていないし、育てられるだけ育てたらどこぞの国にリリースしてやればいい。

 俺はそう考えながらネネカの旅行カバンをしぶしぶ収納したのだった。

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