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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

なろうラジオ大賞参加作品(1000文字以内)

俺の兄貴は勇者。だけど必殺技をだすときに「俺はブラコンだあああ!」と言うのは、泣くからやめてほしい。

作者: りすこ

残酷な描写があります。苦手な方はブラウザーバックしてください。

「後は俺に任せろ!」


 地面に膝をついた俺の横を通って、兄貴は駆け出した。

 目の前には魔王がいた。

 俺と仲間で攻撃をしたから疲弊している。

 あと一撃。

 兄貴が魔王の顔面を殴れば、戦いも終わりだ。


「やめろっ……!」


 必殺技だけは使うな!

 そう言いたかったのに、兄貴は渾身の力を込めて拳をあげた。


「俺はブラコンだあああ!」


 ──バキッ!


 魔王の顔面に兄貴の拳がめりこむ。

 もう、本当に嫌だ。

 その必殺技を叫ぶ兄貴は、大バカ野郎だ。


 必殺技をくらって、魔王は跡形もなく消えた。

 辺りは奇妙なくらい静かになった。


「やったぞ!」と、明るい声で兄貴が振り返る。

 俺は笑えなかった。

 だって、兄貴の体は石化が始まっていたから。


 兄貴は石になった足をバキンと折りながら、笑顔で俺の元にくる。

 その間も兄貴の石化はとまらなくて、体のあちこちがひび割れていた。


「泣いているのか? 気にするな。ここで俺が消えるのは、決まっていたことだろう?」


 分かっていたことだから、俺はぼろぼろに泣いた。


 俺と兄貴は勇者の血を引いていた。

 だけど、双子だった俺たちに勇者の力は半分しか受け継がれなかった。

 兄貴は必殺技を使えるが一度きり。

 魔王にトドメをさせるけど、命を燃やして石化する。

 俺はトドメはさせないけど、丈夫な体を持っていたから、兄貴を死なせまいと限界まで戦った。

 だけど、兄貴は逝ってしまう。

 悔しい。ちくしょう。

 レベルMAXにしても意味ないじゃんか!


 泣く俺の頭を兄貴がなでた。

 なでたそばから指が脆く崩れて、俺の涙はとまらなくなった。


「お前と仲間が戦ってくれたから魔王は倒せた。ありがとう」


「……俺は何もできなかった!」


「何を言っているんだ! お前は傷だらけで戦い抜いた! 胸を張って凱旋しろ! お前は勇者だ!」


 体から砂を撒き散らしながら、兄貴は笑う。

 涙でよく見えないけど、いつもの笑顔だった。


「いい嫁さんをもらえ。長生きして、俺みたいに笑ってくたばれよ? つまんないことで死ぬなよ?」


 最後まで俺のことばかり言って、兄貴は完全に石化した。

 脆い体は砂になった。


「骨ぐらい残せよ! ちくしょお!」


 砂を必死にかき集めて、俺は泣き叫んだ。



 兄貴の砂は俺の涙でぐちゃぐちゃで、小さな袋分しか集まらなかった。

 袋をしまって、顔をあげる。


 空は真っ青で、兄貴の笑顔みたいだった。

 なんか力が抜けて、笑っちまった。


 仲間と共に俺は歩きだした。


 俺もブラコンだからさ。

 兄貴が残してくれた命で、精一杯、生きてやるんだ。





第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞にノミネートされ、朗読されました。読んでくださったみなさま。応援してくださったみなさま。ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは泣く……泣いちゃう……。 タイトルで完全にコメディだと思ってたので見事に裏切られました。 どっちもブラコンだったのね。これは良いブラコン!( ;∀;)
[一言] オチが良いW まさかこう来るとはW 柴犬もサカキ様のところから来ましたW
[一言] サカキショーゴさまのところから来ました。 泣いた。。。 タイトルから見てコメディに見えたのですが、開始から泣かせてくるとは……。 たったこの文字数でこれだけ感動はすごい……! 読み終わった後…
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