第5話『影に躍る』
writer:シュレディンガーの猫刄
この暗夜──闇に猛る2人の男がいた。
いつもは多くの生徒が歩いているであろうこの道も、こう、総動員で事を起こすとここまで静かになるのかと、関心を寄せたくなる。
と、いっても私は実際にここへ踏み込んだのは初めてで、本当に毎日人々が行き交っているかはしらない。
しかし………、潜入前に外側から明かりのついている部屋──即ち、曹操の部屋を確認したが…。
こう、中へ入ってみると案外分からなくなるものだな…。
私は"お嬢"の選んだ、歪な-と言ったら彼女はオシャレだと修正をもとめるだろうか-形のメガネに指を当て、凸凹したフレームで弄びながら、脳内で現在地と事前情報の地図を整理して、繋ぎ合わせる。
そうこうしている時、バタリと扉の開く音がした。
壁を伝い、音のなった方を伺う。
音のなった場所へは一本道だった。
奥に光の漏れる扉が見えるが………人の気配は無い…ッ!!
"では一体誰が開けたのか"
その考えに至っと同時だった。
首筋に鋭い刃……否、鋭い殺気を放つ手刀が当てられていた。
「李儒 文優だな?」
手刀の主が抑えた声で質問…否、尋問をする。
「……なぜそう思う」
「董卓の配下は現在華雄と李儒だけだ
このような凝った芸当は野蛮な華雄にはできまい」
「ほぅ……?
はじめから私を董卓軍と決めつけているようだが?
既に現れている袁紹とは思わないのかね?」
「袁紹とは既に同盟関係にある」
「ふむ…?
そんな機密を漏らしても構わないのか?」
「どうせお前のことだ、もう情報は掴んでいるのだろう」
「ッハハ、バレてたか
………そっちも、はじめから私である確証を得てながら、名乗らせようとしたな
ウソツキな私なら分かるよ、ウソツキの君…いや、君たちの言いたいことが、私がどれ程の器か測り……合格すれば何かの話を持って来るんだろう?」
「ほう、そこまでわかるとはな……
奥でお姉さm………我が主──曹操孟徳様!!……が、お待ちだ」
「そうか…」
そう言って私は1歩扉の方へと進む。
それに合わせて後ろの人物-ここに待機しているのだ、事前の情報通りなら関羽から腕に怪我を負わされた……夏侯惇であるだろう-が手刀を下ろす。
──その刹那を見逃さないッ!!
私は、次の1歩を後へ引き、腰を相手側に向ける!!
その突然の行為に怯んだあいて-左眼の眼帯…やはり夏侯惇か!-のその顔を確認すると、未だ背を向け捻ったままだった身体を一気に振り向かせ、右拳を突き出す!!
「喰らえぇぇッ!!」
夏侯惇は顔を庇い、条件反射で両腕をクロスさせて拳を防──ごうとしたが、傷口を抉られ、そのままガードは崩れ、腕が顔面に当たり…悶える。
「ッ──グぅ!?」
その隙に無防備となった腹部へ左拳を突く!!
「う゛…ぐぇぇっ!?」
身体を丸め、コチラに突き出された頭部を蹴りつける
「グッ!」
バランスを崩した夏侯惇は壁にぶつかり、そのままもたれ掛かる様な体勢になる。
「せっかくだから教えてあげよう…」
私は右拳の手袋を取ると、鋭い手刀を作り渾身の力を込める!
「私の顕現能力は即効性の毒を生み出す力なんだよ……さぁ、私をナメたことを後悔して死ねぇ!!夏侯惇!!!
────毒手・刹那地獄!!」
「名前……だと?」
「そう!名前だよ!!」
「ちょうどいい……俺は今むしゃくしゃしてんだ」
「へぇ??一体誰だい??君がソコまあぁぁぁあでプンプンしちゃうテキの!名前は!!?」
「孫権……仲謀!!」
「……孫権仲謀か………プッククッ……クククククwwwクケケケケケ!!
………はぁ……ボクはとんだ大役を貰ってしまったようだね……精一杯務めさせて貰うよ!!
テキ!テキ!孫権!仲謀!
ボクの!名前!プッ……!
アハハハハハハハッ!」
孫権………仲謀……!!
俺の拳から熱いチカラが溢れるのが分かった。
やがてソレは、パチパチと弾けて……白く弾ける稲妻の剣となったのだった──!!