~六日目~
writer:みそラーメン
深い霧が辺り一面を覆う。
ぼんやりとした霞みの中に一つの影が落ちていた。ゆっくりと歩みだすそれはやがてかわたしの前に現れた。
(劉備さま!?)
一瞬だけ影がそう見えた。
しかし、次の瞬間にはそれがふわふわとした焦げ茶色の靄へと変わっていった。
(ちがうか…これは夢?)
どうやら夢みたいだ。
そうと自覚し始めたらどんどんと意識が深い闇の中へと沈んでゆく。
目覚めたら朝だった。
けたたましい目覚まし時計の音と共に意識がクリアになる。日付はやはり火曜日。
今日もループした。
そして、学園にて。
今日の昼休みも諸葛亮ちゃんと作戦会議を行った。
「…で、質問って何かしら?」
「劉備さまってどうしたらわたしと付き合ってくれると思う?」
「…随分と直球な質問ね。そうねぇ…まずは色気で誘ってみたら?男の子ってエロ大好きだし」
「…それはやめよう」
「そう?良い案だと思うわよ?」
「却下で」
この結末はもう知ってる、ふりふりのリボンを付けたメイド服を着て劉備さまのもとに行ったらひきつった顔で「ごめんな」と言われたんだ。あの屈辱はもう味わいたくは無い。
「うーん、他の案ねぇ…」
「何かあるかな?」
「では食事に誘ってみては?」
「つまりデートってことね。いきなりハードル上げるなぁ…」
そうぼやきながらもすぐにわたしは実行に移していた。諸葛亮ちゃんが劉備さまを呼ぶ、わたしは高級レストランの手配をした。空になった貯金箱がただ虚しく見えるが未来の為の投資だと割りきることにした。
「にしても…凄いところを用意したわね」
諸葛亮ちゃんが見上げるのはおよそ40階にも渡る巨大な摩天楼。このビルには三ツ星の高級レストランがある。ここで大企業の幹部や政界の大物たちがよく会食をすることはあまりにも有名な話だがデートというにはちょっと場違いかもしれない、と思い始めてきた。
「ごめん、ごめん!待った?」
劉備さまの声だった。
「ううん、今来たとこ!」
(嘘つけ!ずっと前から居ただろ!)
諸葛亮ちゃんがそんなことを言いたげな目でこちらを見ている。
「ささ!入ろ、入ろ!」
「あ、ああ!」
中に入るとどうやらここはビュッフェ形式のレストランらしいことが分かる。
適当に料理をお皿に乗せて、予約をしていた席へと座る。
「いただきます!」
美味しそうにステーキを頬張る劉備さまの顔がかわいい。思わずうっとりと見とれてしまう。
そんな時、ふと背後から声が聞こえてきた。
「ふむ…それで、例のシステムは順調かね?」
「ええ、問題は無いです。ですが…事が事なので私たちにそれを確かめる術は無いですが」
「まあ、全ては明日になれば分かるだろう」
システム?問題?ああ、そうかきっとIT企業の幹部たちの話だろう。そういえばここは高級レストラン、そんな人たちが居るのも納得だ。
「あれ?徐庶ちゃんは食べないのか?」
「ん?ううん!食べてるよ!これ美味しいですよね!」
わたしはあわてて皿に盛ってあったエビチリを食べてそう言った。
そして、一通り主菜を食べ終えると劉備さまともだんだん打ち解けて、いい感じの雰囲気になっていた。だから告白した。
「なんだい?」
「ずっとずっと前からあなたのことが好きでした!わたしと付き合ってください!」
わたしの渾身の告白。
しかし…
「うーん、気持ちは分かるけど…俺たちまだ早すぎないか?まだ今日一日の仲だし…」
わかっていた、わかっていた…たった一日じゃあ、そう簡単にはいかないと。
でも…
「あ、そろそろ時間だし…もう帰ろうか?」
「うん…」
これ以上、攻める勇気は無かった。
何より明日がある。だからこの一日は捨てることにした。
早く明日になって欲しい、そういう思いでベッドに入ったのだった。
【あとがき】
一日攻略無理ゲー。




