第14話『夜明けの日烏』
writer:シュレディンガーの猫刄
俺は雲長の────いいや、名前も知らない彼女にとってどういう存在なのだろうか。
今、どの様に見えているのだろうか。
彼女はぼんやりとした瞳で俺を見つめている。
しかし、どれほど覗き帰しても俺は映っている様にはみえなかった。
だが、不意にその深奥に人影が映る。
それは────フラフラとこちらへと朧気な足跡を作りながら近づいてくる………メイド服、切れた鎖…枷…………徐庶!!
振り向いた俺はボロボロになりながらも、それでも闘い続けてくれた彼女の…その勇姿を目に焼き付けようとした。
しかし、それはできなかった………。
なぜなら彼女は、いや、徐庶の姿を模したダレカが嗤うのだ。
愚行を、失態を、罪を………嗤う、嗤う、嗤う、嗤う。
ケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタケタケタゲタゲタ
こびり付いて離れない彼女の歪んだ顔は、自分の覚悟を歪ませる。
………董白、貴様はなぜ自分を警戒しながらも、咎めようとはしないのだ。
小さな少女のただの笑みにここまで掻き乱されるとはな……。
ひょっとしたら、ただ初めて彼女の笑みを見た為に驚いて誇張されて見えていただけなのかもしれない。
しかし、自分は彼女に恐怖を感じていた。
祖父、董卓仲穎を凌ぐ程の野性を…。
ヒトの姿をした獣、という言葉はまさに今の彼女の感想だ。
この乱れた気持ちに整理をするために…"アレ"を呼ぼうとも思ったが、しかし、アレは恐らくまだ仕事をしているのだろう……遊びが好きな性質はノリやすいが、こう、融通が効かない所が瑕だな。
あの道化の身体を担いで影からヌッと、大きな影が現れる。
それはいかにも胡散臭い雰囲気の男であった。
お師匠が逃げた先を大丈夫だと思った理由はそれであった。
協力者────それも、私よりも頼りになる。
何故なのだろうか、何故お師匠は私なんかを連れるのだろうか。
私よりも優秀な人材がいるのならば私など必要無いだろうに……。
私に劣等感を味合わせたいのだろうか?
いじめているのだろうか?
しかし、私はそれでもお師匠様の事が好きである。
だからこそ、この行き場の無い感情は……その男に向くのだった。
嫉妬心というものが初めて私のチカラに点火する……!!
その日の夜明けは、実に明るかった。
なぜなら、太陽の先鋒として御前が居たからだった。
大地を焦がす日の遣い、婑で言う──八咫烏ッ!!




