第8話『命駆ける』
writer:シュレディンガーの猫刄
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人…人
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それはただの人だった。
運命を背負わぬ、過去の魂も持たない。
そう、ただの人。
なぜ彼女達がそうも立ち上がるのか。
その答えは知っている。
彼女達の瞼には、否、心には、主が居るのだ。
それはかつての我が主──義兄上がそうであったように、人々の心を集めているのだろう。
否、アレを義兄上と同じと言うのは無礼だろう。
アレは人の心を寄せさせるモノとは違っていた。
例えるなら洗脳。
もちろん、彼女達がその主に従うのは各々の自由からなのかもしれないが、私にはまるでその各々の自我があるようには見えなかった。
実際は自我はあるのだろうが、それは互いに同調し合い一つの塊のように見える。
そう、量産型という言葉が合うかもしれない。
一人一人の個性が見当たらないそれは、一見ただの雑草の様だが、されど…と、言った所か。
傷付けないよう加減して相手をすると、特に響くものがあった。
たった一人の主を同じ様に信仰する何人もの彼女達は執拗にしぶとかった。
そのフサフサとした衣装からまるで闇に溶けた──いやむしろ、闇その物が延々と迫っているようにも見えた。
しかし、そんなことで挫ける訳にはいかない。
私には彼女達の主よりも、生徒会長の座にふさわしき人物──主がいるのだから!!
俺たちは互いに声を発さなかった。
しかしそれでも伝わるものはあった。
虚無に支配されようとしていた俺を、彼女はその目で導き、今こうして引っ張って行ってくれている。
その現実離れした現実という、あまりにも残酷な世界の中でフワフワとしていた俺は今まさに考える暇などなく、ただ、直感したものに従うしか無かった。
彼女の名前は徐庶 元直。
これは互いに、届きたくても届かなかったその手が触れたことで、頬を伝う熱と共に溢れてきた名前だった。
彼女の枷-細かく記述するならば輪を繋ぐ鎖-をその手に生じた稲妻──いや、今はもう形となった白い剣が断ち切った。
その後彼女は俺の手を引き、早足に歩を進めていった。
次第に目が闇に慣れると、私が戦っていた蠢く闇の全貌が捉えられるようになってきた。
しかし、それはまだ全貌とは言えないかもしれない。
なぜならば、地を這う闇は視界全てを多い、果てを感じさせなかったからだ。
ここまでの量を相手していたとするならば、見えていなかった方がまだ楽だったとまで思える。
私の青龍偃月刀は殺傷を抑えるために使えずに居たが、致し方無しという言葉が脳裏にチラつき始める────────いや、それはないな。
もし、そのような人間ならば義兄上に顔向けできまい。
立ちはだかる闇に、変わらず徒手空拳で私は相手する。
その時ふと、小高い位置からこちらを覗く影を見つけた。
その影はやがてこちらの闇に指揮をする様に声を出した。
「メイド長夏侯恩 子雲が命じます……!!!!」
そして、月光を浴びて輝く剣が掲げられる。
あれは恐らく闇の主──曹操の持つ倚天の剣と対を成す青釭の剣だろう。
その剣は伸ばされた腕から弧を描き……私の胸を指す。
その意味は恐らくかつての曹操から考えても捕縛──────しかし、その考えは易々と砕かれるのだった。
夏侯恩が最初に発した言葉が甦る。
これは曹操の命ではない……!!
夏侯恩 子雲その人の命だったのだ!!
「全軍!速やかに関羽の首級を持ってきなさい!!」




