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学園☆三國  作者: 私立叶慧学園
第一学期 英雄覚醒編
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第7話『閃光』

writer:シュレディンガーの猫刄


雲午(うんご)と名乗ったテキが自ら斬ったその腕に違和感を感じるまでの僅かな間にその結末は決まっていたのだろうか。


俺がその違和感に気付き、それまで押し黙っていた益徳(えきとく)が大声を上げながら(ソレ)退()けようとするのは同時だった。


そして2人の身体(からだ)が-思い思いの行動の為に-衝突した刹那だった。

(ソレ)はビリビリ、バリバリとレヱスを破り小窓の様なものが幾つも開いた。


その小窓からは目が眩む程の光が溢れ、目を閉じざるを得なかった。

だからこそ気付いたのだろう、否、気付いてももう遅かったのだろうが……小窓からは光と共に硝煙の臭いが漏れていたのだった。


やがて2人の身体は一瞬にして焼け、焦げ、崩れ………炭となった。


その瞬間に2人はただただ眩しさだけを感じ、痛みも、苦しもなく、音すら拾えずに……この闇夜-月明かりが漏れ始めたがそれでもまだまだ暗かった-に突如として轟音と共に地を(えぐ)り、爆風を起こしたその"閃光"の中に消えた。











私はここまで上手く進んでいた計画が一気に崩れたことに怒りを覚える他方法は無かった。


その怒りの矛先は己の快楽の為に勝手に動いた雲午だった。


私はジリジリと痛む頭を押さえながらその手に(つるぎ)を握った。


私のチカラが生み出す倚天剣(いてんのけん)だった。


雲午は自らの生き様を道化だとして胸を張り首を差し出したが、そもそも道化とは人を笑わせる、楽しませるための存在である。

もしも彼女が本当に道化ならば、それは自分自身のための自分自身(道化)ということになる。


自分が楽しいと感じることが、自分で実践するには恐ろしかったために生まれたもう1人の自分(道化)


そんな自己完結でしか楽しみを見いだすことができなかった彼女に私はかつての(曹操)の言葉を贈る。


「たとえ私が天下に背いたとしても、天下が私に背くことは許さない」


"自分"とはこうあるべきだと、彼女に贈る最期の言葉だ。




私は勢いよく剣を振り降ろした。


"ゴトリ"と……いや、"べちゃり"が先だったか。

そんな音を立てて彼女の頭部は床に転がった。


その衝撃で道化の面の外れた彼女の顔は、白く、綺麗で、優しい笑顔を浮かべて……ツーっと涙を零していた。




敵ならまだしも味方の首を撥ねるというのは些か不快感を抱くものだった。


できることならもう体験したくない出来事だと思っていた。


しかし、本当に運命というのは残酷だった。

私の耳には続いてまた、悲惨な情報がもたらされるのであった。


夏侯恩(かこうおん)の……子雲(しうん)の独断により関羽(かんう)を殺害。


ジリジリとジリジリジリジリと私の頭は(ひず)んだ様に痛み始めた。


その時私は初めて夢ならば覚めてくれと、そう深く願った。




その後、私の元には1つの……と言っては失礼かもしない。

かつても今も我が元に欲しいも願っていた1人だったモノと、紅茶を入れるのが上手で着替えの手伝いが丁寧で何よりたまにだけ垣間見せる笑顔が大好きだったあの子の首が届けられた。


言うまでもなくソレは、子雲が惨殺した関羽の形をしていたであろう肉塊と、その後関羽殺害の件から子雲を襲ったという(ひつぎ)を引き摺ったゴスロリの少女-おそらく逃げ出した令明(れいめい)であろう-によって斬られた子雲の首であった。




ジリジリ、ジリジリジリジリ、ジリジリジリジリジリジリ………私の頭部はどうして元の形状を保っているのか不思議な程だった。

むしろ、こんな痛みを形を変えずに出せるというのはとても恐ろしいものだった。


形が変わって、それも死んでしまうくらいにぐちゃぐちゃにべちゃべちゃにされている時はどんな痛みを伴うのだろうか。


想像する必要も無く真新しい死骸を思い起こし、吐き気がした。




そんな不安定な私の目前に、無慈悲にももう1つ新たなモノが運ばれてきた。


どれだけ嫌がろうと、ソレは目を伏せる間もなく公開される。


それは…………令明────であったモノだった……。




もうここまで来ると誰の身体が転がろうと何も反応をしない自信があった。


そして、再び令明の身体を見ると、その死因に気付く。


撃剣(げきけん)………近代的に言えば投げナイフという類のものになるだろう。


それが無数に、ドレスに混ざって飛び出していたのだった。


そして1人の人物の名前に行き当たった。




………徐庶(じょしょ)……元直(げんちょく)…………!!!!


その時私の頭に限界が来たのだろう。

痛み-と言うにはもう慣れてしまった刺激-が1層激しくなり、ブツリと意識が途切れてしまった。


その後なんとか意識を取り戻した私は、計画の破錠によって危うくなったこの事態を悪化させないために、あくまでも敵軍である李儒(りじゅ)の殺害を命じた覚えがある。


そして、子雲が最期に淹れていた-もう冷めてしまった-紅茶を一口飲んだ。




続いて目蓋を閉じる動作に入ったが、一瞬躊躇してしまった。

なぜならもう、これ以降二度と私が目を覚ますことはないと感じたからだ。

否、これはただのそうであって欲しいという願いだったのかもしれない。


だが、私はそれ以外にする事がなく。

元譲の膝枕で深く深く眠りに落ちていった。






学園☆三國

route 01

惨禍開演

THE END

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