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1-3 お嬢様はお転婆娘?

 無事だった馬を馬車に繋ぎ直して、怪我人のカークさんは馬車に乗せて出発した。


 俺が魔法で倒した盗賊二人は、すでに息絶えていた。背中に大火傷、落馬で首の骨を折ってたらそりゃ死ぬわ。


 ゲームの中っぽいとはいえ、自分の魔法で人を殺したわけだけど、精神的にどうこうというものはなかった。


 直接剣で肉を断ち切って、殺したのであればまた違うのかもしれないけど、あの盗賊たちをみる限り、この世界で生きていくには、いずれ覚悟を決める必要はありそうだ。


「そういえば、アキラさんは冒険者登録など、どこかでギルド登録はされてますか?」

「いえ、特にはしてません。かなり遠くの国から来たというか、色々と旅をしていたらここが何処だかわからない状態で、どっちかというと迷子なんです」


 街へ向かう途中、マーカスさんと雑談になる。まあ嘘は言ってない。

 マーカスさんはこの先にある、ニーアという城下町で雑貨商を営んでいるそうで、隣の街へ取引と仕入れをした帰りに、盗賊に襲われたらしい。


 ジェイクさんが馬車を逃がしたけれど、相手に馬が多く、止めきれなかったため、盗賊に追い付かれたところで、俺の登場だったようです。


「街に着いたら、何処かで登録されてはどうですか? この国で身分証の代わりになりますし、私が紹介者になればスムーズに登録できるはずです。損はないと思いますよ」


「そうですね、どんなギルドがあるのかとか、その辺をちゃんと調べて登録するときはお願いできますか」


「ええ、もちろんですよ。しばらくは私の家にぜひ滞在してください、ゆっくり街を見て回られるといいでしょう」


 盗賊から奪った馬のお陰で護衛のジェイクさんたちの機動力もあがったため、日が暮れる前にニーアの街にたどり着くことが出来た。


「では、ジェイクさん、今回も護衛ありがとうございました」

「いや、今回はヘマをしてしまって申し訳ない。俺たちが賊を抑えきれていれば」


「いえいえ、時間を稼いでくださったからこそ、アキラさんに出会うことが出来、こうして無事にたどり着けました」

「そう言ってもらえると助かります」


 マーカスさんのお店兼、住居にたどり着き、護衛依頼を完遂したジェイクさんと別れることになったが、明日また会うことになった。カークさんを助けたお礼に飯を奢ってくれるらしい。


 お礼のレベルで揉めそうになったけど、食事一回と困ったときに助けてもらうということで納得してもらった。


「では、アキラさん、狭い家ですがどうぞ。風呂と食事の準備をさせますので、それまで部屋でゆっくりとして居てください」


 と言っているが、そこそこ大きな家なんだよな。倉庫とかもあるからかも知れないが、風呂があるのは助かる。


「あ、あの、助けていただいてありがとうございます。お礼を言うの遅くなってしまって……その怖くて……ごめんなさい」


 何度か視線を感じていたけど、馬車に乗っていた娘さんから初めて声をかけてもらったが、やっぱり可愛かったな。


 肩より少し長い、ブラウンの髪は見るからにサラサラで、大きな瞳に、艶々な唇と、両家のお嬢様っぽい雰囲気が漂っていた。


「はい、疲れたでしょうし、ゆっくりと休んでください」

「はい、えっと……私、アイシャです。では失礼します、アキラさん」

 とたとたとアイシャさんは家の中に駆けていった。


 お風呂が先に用意できたので、頂きましたがラッキースケベ展開など皆無でしたよ。そもそも男と女で分けてあるっぽい。


 食事の時間になり、マーカスさんと奥様にアイシャお嬢様と同じ食卓で頂くことになったんだけど、良いんだろうか。


「マーカスさん、ちょっと疑問に思ったことを伺っても良いでしょうか?」


「なんですか、アキラさん」


「アイシャお嬢様のことなんですが、どうしてわざわざ不便な思いをしてまで、隣街まで付いて来られてたのですか?」


「それは、そのなんというか……」


 俺の疑問を聞いて、アイシャお嬢様が顔を赤らめてモジモジし始める。


「恥ずかしながら、娘はかなり好奇心が旺盛と言いますか、お転婆というか、ただ隣街を見てみたかっただけなんですよ」


 と、お酒も入っているのもあり、マーカスさんは笑いながら理由を話してるけど、結構危なかったと思うんだけどな。


「お、お父様!」


「アイシャ、盗賊に襲われなんとか無事に帰って来ることができ、笑いながら話せてはいるが、アキラさんの助けがなければ今頃どうなっていたかなど、想像できるな」


「……はい」


「まあまあ、無事に帰って来られたんですから、良いじゃないですか。アイシャお嬢様も、マーカスさんは本当に心配して仰ってるんですよ。奥様だって話を聞いた直後は大変だったじゃないですか、しばらくはあまり心配をかけるようなことはしないほうがいいですよ」


「それはそうですけれど……。あと、お嬢様は不要ですよ、今まで通りにアイシャと呼んでください」


 店の人たちが、お嬢様って呼んでるから気を遣ってみたけど、余計なお世話だったみたい。


 その後は、アイシャさんのお転婆話に花が咲いて、穏やかな夕食となったけど、化学調味料に慣れた舌にはちょっと薄味だったかな。美味しいのは美味しいんだけど。


 何だかんだ疲れたので、朝食の手配は断って、明日は心行くまで寝ることにした。夜はジェイクさんと約束があるから、起きたらそれまで街を散策するかな。


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