表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/102

20

牢屋にひとりの女が来た。

「これは。これはエメラルダ食医。このようなむさ苦しい所にいったい何用で?」

「後はわらわがやるゆえ、その方 下がれ」

 大きな返事をして門番が去った。

「娘。いったい何があった?」

「……」

 トールは何も答えない。

「話そうが話すまいが死ぬことに変わりはない。そうじゃろう?お前は死ぬのじゃ」

「……」

 墟空を見ていたトールの目が初めてエメラルダを見た。

「ならば、せめて己の人生を話してから死ねばよいではないか」

「あたいの人生」

「そうじゃ。わらわを遺書だと思え。人は遅かれ早かれいずれ死ぬ。わらわとてそうじゃ。少しお前の方が早かっただけのこと。……のう、お前の人生とはなんじゃ?生きてきた意味、証しをわらわに示してみい」

「遺書……生きてきた意味、証し……」

「そうじゃ。わらわがそなたの人生の語り部となろう」

「聞いてくれるの?あたいの人生」

「ああ。わらわがそなたの人生譚じんせいたん 責任をもって聞こうぞよ」

「……わかった。話すよ。えっと、……そうだな。どこから話せばよいのかな」

「どこからでもよい。話しやすいところからでよい。なーに。時間はたっぷりある。いくらでも話せ。いくらでも聞こう。わらわはお前の良き味方じゃ。おくせずいくらでも話すがよい」

「うん。わかった」

 そう言ってトールは、ゆっくりと、思い出すようにソロモン街からの人生を、エメラルダに語る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ