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ソロモン街で暮らすようになってから、ある日 年月というものを知った。カレンダーという物の存在を知った。
それはある人が与えてくれたきっかけが原因だった。―月に一回くらい来る私より年上のお兄さんはボランティアでソロモン街に来ては、生きていく上で必要な最低限の知識だ、と言っていろいろなことを教えてくれた。年月とカレンダーもその一つだった。その人が来て、その日を、私の誕生日にしようと、お兄さんが決めてくれた。名前も、「トール」とつけてくれた。
「君は小さいからな。大きくなるように願いを込めて」
「…あ、…あ・り・が・とう」
それは私がソロモン街で生きてきて初めて口にする、人への感謝の言葉だった。




