2・3
(2)
この日、朝早く出かけたトワカ師匠。
「農産乾物やこの山だけでは手に入らぬ生薬を買出しに行ってくる。なに、日が暮れる前には帰ってくる」
そう言って師匠は、街へと出かけた。
(さて、私は山を一巡りして、生薬の材料を復習しよう。それに本の続きを読もうかな。そうだ。昼食は何にしよう。トールと相談するとするか!)
(3)
「プローリア姉ちゃん」
山から帰ってきたプローリアにソシアが血相変えて飛び込んできた。
「どうしたの?ソシア」
「トールの様子がおかしいんだよ」
トールが倒れこんでいる。急ぎベッドに横になってもらう。
吐き気がある。体も冷えている。お腹も押さえている。風邪ではあるまいか。慣れない環境で体に堪えたのだ。お腹の痛みと吐き気があることから、もしかしたら胃腸をやられているのかもしれない。長旅で野菜が不足していることも考えられる。となると、総合的に動脈硬化の疑いもある。
プローリアは、頭の中で必要な薬膳を思い浮かべる。「クローブ」と「レモングラス」と「黒きくらげ」と「クコ」が必要。プローリアはソシアに材料を伝え、急ぎ煎じて茶にした。クコの実はドライフルーツがあったのでそのままにした。ベッドに横になりトールを上半身だけ起こして、飲ませ、食べさせる。
「よし。もう大丈夫よ」
「よかったね。トール。これでもう安心だ」
湯飲みを手に持ち、トールが言う。
「うん。ソシア。プローリア。どうもありがとう」
「いいのよ。気にしないで」
「そうだよ。僕たち仲間じゃないか」
「仲間……」
突然トールが持っていた湯呑みを落とした。ベッドから転げ落ち床に転がる。そしてトールがまた苦しみだした。トールの容態が改善する兆しはいっこうにない。
(なんで。なんでなの?)
目の前にはうめき苦しむトールの姿。
「トールしっかりしてよ」
ソシアが半泣きで必死で呼びかける。何が駄目なのか。
(トワカ師匠。私にはわかりません。助けてください。早く帰ってきて!)




