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この日、トワカは弟子入り3年目を記念して、申し訳程度の酒を用意した。食後酒が入ったせいか二人の気分は高揚した。
「トワカ師匠の作る料理は確かに美味しいけれど、限界があると思います」
「なんじゃと!」
トワカは立ち上がった。怒りの感情を覚えたからだ。師としての威厳もある。
「生意気なことを申し上げて申し訳ありません。ですがあえて言わせてもらいます」
エメラルダは両手を組んで、トワカに対してお辞儀をした。それを見、少し落ち着きを取り戻したトワカは再び席に座す。
「よい。申してみよ」
「はい。恐れながら、子どもから大人まで幅広く誰もが楽しめる料理を提供する上で師匠の料理は幅が狭すぎます」
もっともな意見じゃった。だがわしにも誇りがある。弟子入りしたばかりの小生意気な小娘に言われる筋合いはないと思ったのが正直なところじゃった。
「具体的にどうするのじゃ。申してみよ」
「はい。西洋の料理や他国の料理を取り入れるです」
「なんじゃと?!わしは中国人じゃぞ。中国人が中国料理を作れずして、なんとする?エメラルダ。お主には愛国心がないのか?」
「そのようなもの……必要ありません」
「なんと……」
この言葉には、さすがのわしも度肝を抜いた。
「人を病から救うことと、愛国心とは別物です。そのようなものを取り除いてこそ、真の薬膳料理が実現するのです」
「トワカ師匠」
「なんじゃ?」
「私たちの目標とはなんです。薬膳料理の真髄とは」
「人々を病から救うことじゃ」
「そうです。そのために私たちcookは日々邁進するのです」
「……うむ」
諭された。これではどっちが弟子かわからんわい。




