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「王だってまず、体の管理を食医がします。そして治らないということであれば内科医、外科医と続く。こんなにも信頼されている素晴らしい職業って他に類をみないですよ」
「ああ。そうかもしれんのう」
弟子入りして、わしの家に通っていたエメラルダはわしの作った薬膳料理を食べながら、ある日こう言った。
「何がおかしいのです。師匠」
そうかわしは笑っていたのか。トワカはエメラルダの話を聞きながらついつい笑ってしまった自分を認める。なんとも滑稽な話ではあるまいか。思えば一人暮らしが長いトワカにとって団欒というものはない。そして今 感じとる。ああ、これが団欒というものなのか、と。
「わたくしは、真面目な話をしているのでございますよ。失礼でございますわ」
「悪かった。悪かった。そう怒るな。エメラルダは食医を目指すのか」
「はい。そして王国に使え、王国から市井へと発信していくのです。『薬食同源』というこの国が誇る素晴らしき文化を」
そう目を輝かせながら、自信たっぷりに言うエメラルダを見て、またほくそ笑んでいる自分をトワカは認める。そして同時に思う。ああ、団欒とはなんと良きものなのかと。




