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「トールはどこに行くの?」
ソシアが訊いた。うむ積極的じゃない。
「そういうあなたたちはどこに行くのよ」
「僕たちはね、うっほん」
ソシアが、変な間をとってためた。
「もったいぶらずに早く言いなさいよ」
プローリアの言おうとしていたことを代弁してくれた。ナイス!トール。
「伝説のcookトワカに会いにいくんだぜ」
「……えっ」
突然トールの表情と動きが固まった。いったいどうしたというのだろうか。
「そうなの。アンタたちトワカ様に会いにいくの……」
そう言うと、トールは懐から金を取り出し机の上に置いた。
「私の分よ。お釣りはいらないわっ!」
席を立ち上がる。
「ちょっとどうしたっていうのさ。僕なんか気に障るようなこと言った?」
ソシア必死。なにせこれが二度目だもの。恋せよ少年。
「別に。私もトワカ様に会いにいくから」
「え、そうなの」
プローリアが口を挟んだ。各々の驚きもあった。
「そういうこと。トワカ様は隠居なされたけれど、肝心の薬膳料理の極意は伝承せずまい。四川省のcookを一人捕まえて、はかしたの。話によれば、数々の関門を突破したものに授けるらしい。あの湖の上の老人が偽者だとあなたたちも見破ったのでしょう?」
「ええ」
「なら。第一関門は突破ってわけね」
「トールはじゃあ、私たちが訪れる前にもうすでに来てたのね」
「そう。だからあなたたちとはライバルってわけ。馴れ合いはいやだわ。情が移って悪い結果になったらいやでしょ」
「それはそうだ」
リオンが笑った。さすが大人。対応が冷静ですね。
「仲良く協力して学べばいいじゃないか。せっかく知り合ったのに」
ソシアが叫んだ。
「トワカ様の後継者は一人だそうよ」
「そうなんだ」「そんな……」
プローリアとソシア同時であった。
「ごめんあそばせ」
トールは去っていった。




