伝説のcookトワカ 1
「山登りって健康的でいいね」
そうだけど、ソシアが言うと、なんだかおかしいでしょう。プローリアはほくそ笑む。
「リスタラ(湖の上の家の老人)」からトワカの居場所を聞いた。
やはり山奥にいましたか。隠居といえば鉄板でしょう。プローリアは初めての山登りに心浮き足立つ。
「ねえ。あの人様子がおかしい」
ジェシカが眼下の谷川を指す。確かに川の側に人がいる。プローリアたちは下りる。
近付けば女の子だった。プローリアは女の子に声をかける。
「大丈夫?」
「うん。ちょっと足をくじいただけだから。少し休めばすぐ良くなる」
とはいえ、かなり痛そうだ。
「慣れないことはするもんじゃないね。初めての山登りだし浮き足立っちゃって。魚取って焼いて食べようとしたらこの様さ。あー情けない」
あら、魚を取るだなんて、なんてワイルドでエキサイティングなのかしら。
「見せてみろ」
リオンが足をとる。
「ちょ、ちょっと大丈夫だってば」
心なしか頬が赤いような。
「これでよし!」
リオンが患部に古布を巻いて応急処置をした。
「ありがとう。助かったよ」
「どこまで行くの?」
こういうときのソシアは積極的に話しかける。こういうときというのは、女の子がいるとき。うん。きっと大きくなったら恋人に苦労しないだろうね。
「……とりあえす、5合目まで」
「じゃあ、僕たちと一緒じゃない。そしたら途中まで一緒に行こうよ。ね、いいでしょ!プローリア」
断っても強引についていくんでしょ。
「うん。いいよ」
「やったーよかったね」
「お世話をかけます」
「あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私はプローリア」
「僕はソシアだよ」
は、早い。
「俺はリオンと申す」
「私はジェシカだ」
「おいらは、マルカラン」
マルカランは、足元にすがりつく。
「トールよ」
「トールかいい名前だね」
うるさい、ソシ……めんどくさい。もうやめた。
ジェシカがおんぶする。
「えっ、いいのに」
「ま、甘えちゃいなさい。彼女強いし、頼りになるから」
「……じゃ、お言葉に甘えて」
ジェシカの背中の上からトールは恥ずかしそうにそう言った。




