王への謁見
「事情は聞きました」
王妃の甲高い声が広間に響く。
翌日私たちは王への謁見を許された。王と王妃。その横にリオン王子がいる。王妃の言葉は続く。
「あとのことは王やわらわたち王国に任せて、そなたは料理コンテストの課題に専念なさい」
「えっ?」
「わからぬのか。もうそなたは役割を終えたのじゃ」
「わかりません」
「なにを言う」
王だった。威厳があり、怖い。
「これは私が乗った船です。途中で帰港なんてそんなことできません」
「殺されかけたのだぞ。わしの出したダルス率いる討伐隊がいなければそなたは命などなかったはずだ」
「ええ。わかっています。感謝申し上げます。王にも討伐隊にも。そしてダルス王子にも」
「それがわかっているの……」
「曲げられません。少なくとも母のレシピをこの手におさめるまでは」
私は王の言葉を切った。罰当たりな話だ。王国cook無勢が。
「母ステラの託した手紙を私は読みました。そこには母は、私にレシピを託す、とありました。その母の思いを私は無碍にしたくはありません」
「ならばどうするのだ。応えよ、王国cookスープ担当プローリア」
リオン王子は、王子として私に対した。私もそれに応じるように、王子の面前でひざまづいた。
「この手で、イザイラの逆暗示を解いてみせます。そして必ずやレシピを手に入れます」
「よくぞ申した。その言葉わすれるでないぞ。わが命は王国の命と同じ。そなたは、王国の命にそむいたのじゃ。もし、使命を達成できぬときは、覚悟はできておろうな」
「はい。王国cookとしての首 差し出す所存です」
「よくわかった。王。王妃。聞いてのとおりです」
「うむ。ならば、プローリアよ。イザイラの逆暗示、みごと解いてまいれ」
「期待していますよ」
「はい」
「しかるに王」
リオン王子が口を開く。
「なんじゃ?」
「余も同行してよろしいでしょうか」
「なんだと!」
「なにを言い出すのです。リオンよ」
「聞けば、逆暗示を解くための鍵は、薬膳料理を食べさすことにあると。その手がかりは、南国にある四川省にあるとか。四川省は、以前 私と王が視察にいった国であります」
「それがどうした?」
「あのときは、視察というだけで友好な関係を築くことは叶いませんでした。今度こそ友好な協力国とし関係を築きたいのです」
「しかし……今お前がいなくなるとな。いろいろと支障がな」
「なーに。案ずることはありますまい。時期スファン王国からダルスも戻ってきます。それにエメラルダも。心強い味方ではありませぬか」
「そうじゃったな。……うむ。ならば心配あるまいか」
「しかし長居は無用ですよ」
「わかっております。手がかりも手段もなにもなければすぐに帰ってまいります。いや、収穫を持って」
「どちらにせよご武運を祈ります」
「その通りじゃ。期待しておるぞ」
「はい。おおせのままに」
そうして私たちは王の間を出た。リオン王子とともに。




