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44/102

分散

(1)

 左右をのどかな草原に囲まれた一本道をただひたすら歩く。日が暮れる前に次の村に到着したいから。乾燥させた木の実や果物と竹筒に入れたお水を頼りに。

 ソシアはアンダラと別れてから、言葉すくなげ。やはり恋か。と、なればとマルカランを見れば、一人(?)勝手にすたこらさっさと歩く。目当ての食事が食べられず、どうやら機嫌は悪いらしい。

「もう、みんな自分勝手なんだからっ!」



「金目の物を置いていけ」

 両脇から突然現れた盗賊たちに囲まれて私たちは怖じ気づいた。だから言わんこっちゃない。女と子どもの旅ではやはり無理があった。それにしてもこの黒装束どこかで見覚えが……そうだ!いつぞや、王と私をさらったあのときの。

「わかりました」

 私は、持っていた荷物を盗賊めがけて投げつけた。ひるむ。一瞬の隙。

 ソシアを右に押しやり、私は左に。マルカランは勝手にどっかに逃げる。うん。それでいい。

 私はただひたすら草原地帯を駆け抜ける。


(2)

 草原がこうをそうした。私の身長以上ある草がその姿を隠す。

これならソシアも大丈夫だろう。まっすぐだけじゃなく右に左に進んで盗賊を拡散させる作戦。「どっちだ」「わかるか!そんなこと」「手分けして探すんだ」「お前はそっち。俺はこっちだ」よしよし。こちらの思惑どおりだ。私は歩をさらに早める。

 しばらくして湿地帯にでた。足がとられて思うように歩けない。ここまでくれば大丈夫だろう。私は近くの道に避難した。

「待ってたぜ」

「えっ」

「上手く撒いたつもりだろうがおあいにく様だったな。実はここに誘導するように仕向けていたのさ」

「そんな……」

「盗賊はプロだ。素人の考えなんざ。とうにお見通しなんだよ。残念だったな」

「ソシアは?」

「捕まってるだろうさ。連中の中には子ども好きもいる」

「やめて。子どもは関係ないでしょ」

「お前次第だよ」

「そう言って私に近付いてくる」

 「?!ガッ、ゴンッ」大きな音が響いた。盗賊は後ろから大きな木の棒で叩かれてその場に倒れた。その後ろから現れたのは、

「イザイラ!」私は駆け寄る。

「あなたイザイラよね。よかった無事だったのね。どうしてここに?」

「あれから奴らに捕らわれ捕虜となっておりましたが、王都コウリア国が討伐隊を出しましてね。私は無事に救出されました。そして王様に志願してあなた様の護衛をお頼み申したのです」

「私の護衛?」

「女の一人旅は物騒ですから。それに……あなたのお命を狙う者がいるのです」


(3)

 盗賊をお縄にかけるイザイラに声をかける。

「ソシア。私の仲間、子どもがいるの」

「残念ですが、盗賊の手に落ちたようです」

「そ、そんな……」

「大丈夫です。この者含め盗賊の残党狩りが行われています。捕まるのも時間の問題。私も微力ながらプローリア様のお側におります」

「ありがとう」

 何より今の私には心強い味方が現れた。


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