最初の村
(1)
日暮れ前になんとか村に着いた。テナス村までの道のりは、途中のアイダル国最大の都市、「スファン」までは未知だ。そこからなら私の知ったところだ。
まずは宿を探そうと思う。そしたら猫が足元に近付いて、じゃれてきた。
「さっきはありがとう」
「あら。アンタ、この村にきたの」
「『マルカラン』」
女の子が歩いてきて、挨拶をした。
「あら、あなたたち。もしかしてマルカランを助けてくれた人」
「そうだよ。森で罠にかかってたんだ」
ソシアがでしゃばった。女の子だから?
「よくなついてる。人嫌いな猫なのにめずらしいから。私は『アンダラ』。助けてくれて、どうもありがとう。お姉ちゃん」
「いいえ。どういたしまして」
「だから僕だって言ってるだろ」
「あなたもありがとう」
「私は、プローリア。ほら、挨拶は?」
「僕はソシアっていうんだ。よろしく」
「よろしくね。ソシア。プローリアさん」
すでに呼び捨てにされたことにか、ソシアはふてくされている。
(2)
アンダラに両親を紹介された。事情を話したら、「泊まっていけばいい」と口をそろえて言われた。感謝。ありがたく受けることにします。
「プローリアはどこに行くの?」
「僕が入っていないだろ」と、ソシアの声が聞こえたような気がした。
「テナス村。私の古里なんだ」
「そう。どこにあるの?」
「この国の最北西にある」
「そりゃ、遠い」
父が言った。
「なら、尚更ゆっくりしていきなさいよ」
母が続いた。
「ありがとうございます。恩に着ます」
「なーに困ったときはお互い様さ。それに……」
「マルカランを助けてくれたもの」
「そう。アンダラの言う通りさ」
父が笑い、母と子がつられたように笑った。マルカランは野良猫らしい。食事どきの時間にアンダラの家に現れては、ほどこしを受けるらしい。しっかりしているというかがめついというか。
この日、私は床に入るとすぐに眠りについていた。




