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休暇
私の古里は遠い。とてもじゃないけれど、日帰りでなんて帰れない。料理長に直談判して有給休暇を使って、国に帰ることの承諾を得ようとした。
「なりません」
副料理長「ザバン」さんだった。
「料理コンテストに参加する者が。なおかつ王国の調理場を預かる者が長期休暇などと、……断じてなりません」
「まあ、よいではないか」
「料理長」
ザバンさんがほえた。
「プローリアはもういいおとなです。自分の責任は自分で取れる立場にあります。そうですね?プローリア」
「はい」
「料理コンテストまでには帰ってくるのですよ。こなければ確実に次期料理長の座はジュエッタです」
「はい」
「そうです。自己責任。あなたが戻ってこなければそれは自己責任。例えどんな理由があったにせよ、ね」
その顔はいつぞや、私が失敗をしでかしたときに見た笑いに至極 似ていた。(※注1)
※注1 王子が周りの目があるときは冷たいのに、二人だけの時はやさしい 参照。




