発表 料理コンテスト課題
(1)
人だかりを前に私は驚く。もちろん全員参加者ではないだろう。男性の姿もあるし、女性の中にだって家族や関係者。……それに野次馬だっているだろう。
兵士の鳴らす鐘がなった。一同注目する。
「只今より、料理コンテストの課題を発表する」
触れ書きが立った。再び一同、注目する。
「卵」
とあった。
「これは幅広いな」「卵といえば定番料理に絞られる」「いや、そうとも限らないぞ。洋菓子だってできる」「発想の転換でそのまま生でという手も」
いろんな声がいっせいにした。そんな中、私は心に決める。
(やっぱあれっきゃない!)
それからというもの、私は家に帰ればオムライス作りに試行錯誤した。
「おいしい」
と、言って食べていたソシア。
「おいしい」
三日目。
「・おいしい」
七日目。
「…おいしい」
八日目。
「……」
九日目。
ついに来なくなった。
そして私は、「やはり」と思い至る。足りない。そう。それはソース。母のあのソース。
料理コンテスト開催まで、残り31日。
(2)
カレーとも違う。かといって、トマトケチャップとはもちろん違う。いったいなんなんだろう。
私は、ビーフシチューをかけたり、ハッシュドビーフをかけたり、としてみた。でも違う。あの味とは。もっとまろやかでコクのある味。あの味がどうしても出せないのだ。なにか……決定的な何かが足りない。野菜、果物、調味料……それすらわからない自分に嫌気がさす。
料理コンテスト開催まで、残り30日。




