狩猟
(1)
皆さん。こんにちは。お元気でしたか。私は相変わらず元気です。ところで問題です。王様のご趣味はなんでしょう?制限時間は60秒です。……はい、終ー了!
正解は狩猟です。月に一度の一大イベントです。スープ担当の私は、昼食時、王様に熱々のスープを召し上がっていただくために同行しています。
「よし。できた!」
今日は「きのこ汁」にしました。疲れた体に栄養たっぷり。
突然。
「敵の奇襲だ」「王をかくまえ」「ちらばるな。ひとつにかたまるんだー」
たくさんの声が一度に聞こえた。私はどうしていいかわからず、その場でしどろもどろ。
「ここにも女が一人いたぞ」
「よし。捕まえろ」
(?!見つかってしまった)
「女。死にたくなければじっとしておれ」
黒装束二人に剣と槍をを突きつけられて私は覚悟を決めた。
馬車の荷台に乗せられた。王も一緒だっだ。お互い口の中に布をあてられ会話することができない。
(いったいなんだってこんなことに……)
日の暮れる夕日を目に焼き付けながら、私は己の運命を呪った。
(2)
野営をするたくさんのテントがはられている中の一つに私はいた。王は別の場所のようだった。
「おう。メシの時間だ。食え」
黒装束の男が、パンとスープを持ってきた。とてもじゃないが食欲が湧かない。それに……。
「なんだ。毒入りだと思うか」
私の心を男が代弁した。面をとった。そしてパンをちぎり食べ、スープを別のスプーンですくって飲んだ。
「安心しろ。それにやりたきゃとっくにやってる」
私は全身に悪寒を感じる。
(3)
「逃げろ」
「えっ?!」
食事に手をつけず、しばらく沈黙の間が流れたテントの中で、その声は、火を灯すみたいに響いた。
「今なら、連中は宴会の後で眠りこけてる。逃げるなら今だ」
「どうして…私にそんなことを……あなたはいったい?」
「連中のやり方に同意している奴だけじゃないってことさ。それに金で雇われただけだ」
「そうなの」
「急げ。王は近くのテントだ。誘導する」
そう言って笑った男の顔は、心強くてなんだかとてもかっこよかった。
(4)
「ここだ。早く、急げ」
男と一緒に王様のいるテントに行って王を解放した。見張りはいなかった。男の言う通り祭りのあとらしい。
「そなたたちは?」
「説明している暇はない。逃げるぞ」
男の先導で私と王はその後についていく。野営の出口までもう少しのところで人影に囲まれた。
「裏切り者」
「残念だったな。下戸だっているんだぜ」
男が私たちの前に立ちはだかる。
「俺がやつらをひきつける。その隙に逃げろ」
胸元から笛を取り出し、それを渡された。
「野営を出たらそれを吹け。俺の友だちが駆け付けてくれる」
「そんな。あなたはどうなるの」
王につかまれた。そして必死な目で見つめられた。
「だまって彼の言うことに従うんだ」
「……はい」
王の威厳がそこにはあった。
「いざ、参る」
「バカが」
「血迷いおって」
男が二人をひきつけた。王と出口に向かってひたすら走る。逃げる背中越しに男の姿を追いかける。そして気付いて後悔する。名前を名乗らず、名前を聞かなかったことに……。




