友だち
仕事から帰ったら、ソシアが顔と足から出血していて急いで病院に連れてった。
聞けばサッカーの練習試合でボールがラインを越えた越えないでケンカになったらしい。白熱するのは構わないけど、お痛はほどほどにね、ソシア。
診察室から出て歩いていたら、廊下でジュエッタを見かけた。女の子といた。声をかける。
「ジュエッタ」
「……プローリア。あんたなんでここに?」
料理コンテストが決まってから、ジュエッタの態度がなんだかそっけない。しかたないといえばしかたないのかもしれないが、なんだか寂しい。
「ソシアが怪我をしたの、それで。ジュエッタはどうして病院に?」
そのとき隣りにいた女の子がしゃべった。
「私、『マロエル』。6歳なの。みんなジュエッタお姉ちゃんのお友だち」
「そうよ。マロエルちゃん。よろしくね」
「うん」
そういってマロエルは、ニコリとほほえんだ。今の二人にとってこの天使のほほえみは、救いに思えた。
廊下を曲がったら、老夫婦の会話が聞こえた。
「おい。聞いたか。あのマロエルって子。難病らしいな」
「ええ。神様はむごいことをなさる。私ら老人を生かして」
「なんでも莫大な治療費がかかるらしい」
「聞けば両親はいないそうじゃないか。……むごいね」
私はソシアの手を引っ張ってそそくさとその場を去った。去りながら、やはり新料理長の座はジュエッタにゆずろうと、そう心に誓った。




