その9 ヒロインとの対面
ノックの音と共に執事さんの「ノア様達がご到着されました」という声が聞こえ、ついに来たのねと身構えてしまう。
「わかった、ユーフィーはここで待っててくれノア達を迎えに行ってくる」
「ええ。わかりましたわカミールお兄様」
素直に頷きカミールが出て行った後にはぁ、と溜息をつく
なんだろう、この自分の番まで注射を待つみたいな嫌な感じの時間は
やる事は決まっててそれを待っている苦痛と言ったらなんとも辛い
「メル、逃げてもいいかしら?」
「カミール様の善意を無駄にしてはいけません、それに戦うのでしょう?」
「やっぱり戦うのキャンセルしますわ」
などとメルと戯れていたら扉が開いてしまいカミール達が戻ってきた
仕方ない、やるしかない!と私は挨拶をする為に椅子から立ち上がる
「ノア、紹介しよう従兄妹のユーフィリアだ」
「ご機嫌よう、ユーフィリア・アティベルトと申します。本日はお会いできて嬉しいですわ」
アティベルト家の令嬢として恥じない挨拶をしなくてはいけない
ドレスの裾をつまみ笑顔で、出来るだけ好印象になるように
「ユーフィー、こっちは友人のノアだ」
カミールが紹介してくれたノアは紫の髪に空色の目を持った美しい青年だった
うーん、流石攻略対象キャラの中でお色気担当なだけあると思わせる美形っぷりだ
「ノア・ネヴィルだよ、よろしくね」
「ええ、よろしくお願いしますわノア様」
そしてノアの横に隠れるように立っている美しい少女こそヒロインであるノエルだ
ふわふわとした金色の髪に見つめるだけで全てを魅了する翡翠の目、私とは正反対だ
「カミール、この子が僕の可愛いノエルだよ」
「こ、こんにちは!カミールさん。ノエルです」
緊張しているのかどこかたどたどしい挨拶だ。
それだけでなく許可ないのに格上の貴族に対して「さん」呼びをしている
こういうところがユーフィリアは気に入らなかったのだろうな
一般的な貴族からすればそれは無礼な行いであり叱られるのも当然だ
「実はノエル嬢とユーフィーは同い年で来月から学院に入学するんだ。良ければ仲良くしてると嬉しい」
呼び方についてカミールは特に気にしていないようなので私が口を出してはいけないな、と心に留める
「是非、友人になってくれると嬉しいですわノエル様」
カミールの優しさを無駄にしてはいけないのでにこり、とノエルに向かって微笑む
「こちらこそよろしくお願いします、ユーフィリアさん」
この可愛いらしい子が私の運命を左右する存在なのだと思うと少し恐ろしかった