その6 攻略対象カミール・オスティン
「よく来たなユーフィリア、ほら手を」
馬車を降りる際に笑顔を見せて手を差し出してくれるカミールは昔からよく知っている優しいお兄様だった。
にこりと機嫌が良さそうに笑っているところを見るとどうやらまだ嫌われては居ないようで安心した。
本日はお嬢様がお世話になります、とメルがお兄様達に挨拶を済ませていた
私も会えて嬉しい、という気持ちを込めて淑女らしく礼をして挨拶をした
「ご機嫌よう、カミールお兄様。お会いできて嬉しいですわ」
「俺もだユーフィー、父さんも母さんもお前が来るのを楽しみにしてた」
母さんなんてお前の為にパイを焼いて待っているぞと言われ何だか嬉しくなってきた。
クリスティー叔母様の焼くパイは私の大好物で小さい頃からお兄様と一緒に食べていた思い出の味
それを私の為になんて、とっても幸福なことなのだ!
「入学前に学院の事を教えて欲しいなんて我儘を言ってしまって申し訳ありません」
「気にするな妹の我儘を聞いてやるのが兄だろう」
私のことを「妹」と呼んで笑いかけてくれるお兄様が眩しくて流石攻略対象キャラだ、と感嘆してしまう
カミール自ら私を庭の薔薇園にあるガゼボへエスコートしてくれるのが彼のルート内にあるお茶会を思い出させる
人が近寄りがたい雰囲気を出している彼は母親の影響から外で話をしながらお茶をするのが好き、という設定がありヒロインをエスコートして共にお茶をするのだ。
「あぁ、可愛いユーフィリア!会いたかったわ」
クリスティー叔母様が私を強く抱き締めてきた。
オスティン公爵家には娘が居ないからか叔母様と叔父様にはとても良くして貰っている
残念ながらジーク叔父様は今日はお仕事でいないようだが…。
「さぁ、お茶にしましょう?せっかくユーフィーの為にパイを焼いたんだから」
叔母様の言葉を聞いて私の椅子をメルが引いてくれたのでそこに座る
パイを口含むとあまりの美味しさに頬が緩んでしまう。淑女としてはしたないとわかっているが止められない
「相変わらずクリスティー叔母様のパイは美味しいですわ!」
子供っぽいところは本当に昔から変わらないわね、とクリスティー叔母様が笑う
お兄様も意地悪そうに淑女としてどうなんだ?と笑っていた