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第四話 シンデレラ、母に会う

部屋には沈黙が続き、ハインツ叔父さんは悔しそうな顔をしていた。

そんな重い空気のなか、私はさっきの言葉の意味を理解出来ないでいた。

「治癒魔法がきかない」、どうやらお母さんは魔法が効かない病気らしい。けれど、薬などはあるのではないだろうか。


しかし、その薬という概念が無かったら・・・。

もしかするとこの世界は何でもかんでも魔法で処理しようとしているのではないだろうか、という思考に到った私は、ダメもとでも薬について聞いてみることにした。


「おじしゃま、魔法がきかないなら、他の直す薬はないのでしゅか?」

うん、わかったわ。この3歳児の体、はっきり発音できるようになってない・・・。高校2年生でもおじしゃまはきついわ・・・。


「エラ、君はまだ知らないかもしれないけど、この国で最高峰の治癒士にかっかたら治せるかもしれない。でもその治癒魔法は王国の王族にしか受けることが出来ないんだよ・・・。だから、義姉さんはどうしようもないんだ。治癒魔法以外の治療法もないしね」


確定した。この国には薬という概念がないんだ。病気になったら治癒魔法、魔法がきかなかったら打つ手が無いとされているんだ。


そこで私は王族しか治療しないという治療士にむくむくと怒りがわいてきた。

王族しかみないことで、どれだけの人が死にそうになってるんだ。


そんな治癒士なんて、いらない。私がお母さんを治す。

私なら、前世の記憶とヒロイン補正でなんとかなるかもしれない。


「おじしゃま、治癒魔法に必要な魔法って、どうやったら出来るようになる?」

「エラ、君にはまだ早い。属性が分かるのは、5歳に洗礼をうけて教会でのことなんだ。それに、光属性の僕が言うのも何だけど、光属性は数が本当に少ないんだ」


むむむ、5歳といったら、お母さんの余命に間に合わないじゃないか!

ふむ、魔法に頼るのはやめたほうがいい、か。

だとすると、方法といえば前世の記憶を頼らないといけないけれど、お母さんがどんな状態なのかも知らないで、それは出来ない。


「おじしゃま、おかあしゃまのご容体はどうなの」

「義姉さんの、ねえ。エラでも君に言ったとしてどうなるの?3歳の君になにかが出来るとは思えない」


ぐっ、正論だわ。たしかに私は3歳児。だけど、心は高校2年生よ!

突撃るのみだわ!

「いいからおしえてくだしゃいませ、おじしゃま!!教えないと、おじしゃまの秘密をばらしますわよ?」

これははったりだ。成人男性の一人、やましいことなんて山のようにあるだろう。

私の予想通り、ハインツ叔父さんは冷や汗をだらだらと垂らしていた。


「エラにはかなわないな。今日はちょうど後に用事がないから、私の部屋おいで」

よっし!第一関門は突破したわ!

ハインツ叔父さんは私達が話していた間に寝てしまったお母さんを起こさないように、と私に言って、ドアをあけたら、私が部屋に入るために閉め出したお父さんがいた。


寝てるし、お父さん。

「兄さんも疲れてるんだね。このまま寝かせてもいいけど、運ぶのも面倒くさいから、後で起こしておくか」

うわ、ハインツ叔父さんのお父さんへの扱い雑っ!まあ、良いけどね。

「ああ、兄さんい殴られた後が痛いんだよね。自分には治癒をかけたくないけど、痛いししょうがないか」

歩きながら、ハインツ叔父さんは殴られた頬をなでながら、治癒していた。

治癒魔法を使う姿は始めてみたからか、私はハインツ叔父さんの手に集まる光に釘付けになってしまった。


「よし、傷も治ったし、エラ、着いたよ」

そうこうしている内に部屋に着いたようだった。

ドアを開けてくれたので、3歳児の小さい足を動かして部屋に入ると、あふれんばかりの書物にビックリした。

「あ、ごめん。片付けるのを忘れてたよ。座れるところを作るから、ちょっとまってくれる?」


あ、前世の私のオタク部屋に急にお母さんに侵入された時に少し似てる。

どんがらガッシャーン、と盛大になにかが落ちた音を聞いて、音の聞こえるところに駆けていったら、ハインツ叔父さんが本に埋もれて気絶していた。


「もう、おじしゃま重いです!」

なんとかそこから救い出したものの、意識が戻るにはまだ時間がかかりそうだったから、私はそこら辺にある本で役に立ちそうなものを物色しているときに、「魔力と禁忌」といういかにも怪しげな本があったので、手に取った。


それが後の私に大きな影響をもたらすとも知らずに・・・。

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