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第17話 終業式とダブルカップル

 12月半ばにあたしはようやく退院できたけどもう終業式だった。


 あの日以来優衣とメールはしてるけど会っていない。

 優衣、元気かな…


「おっす」

 涼くんが頭に手を乗せてきた。


「おはよー」

「元気ないけど、どうした?」

「なんか嫌な予感がするんだよね…」

「嫌な予感って?」

「んー例えば教室に行ったら机に献花されてるとか?」

「そんなわけないだろ」

「だよねー」


 だけど教室に着いてドアを開けるとクラスの喧騒が一気に止んだ。

 違和感を覚えつつ自分の机に目を向けると花瓶が置いてあって、一輪の花が刺してあった。

 おまけに落書きまであるし…


「なんだよこれ…おい!誰だよ、こんなことするやつは!」

「いいよ、大丈夫だから」

「大丈夫って…」

「さ、さーて体調悪いし保健室行こうかなー」

 精一杯強がってみる。


 とりあえず教室を出て…

 だけどどうしよう。


「おはよう六華…ってどうしたの?」

「…あぁ優衣、おはよ。ちょっとね体調悪くて」

「そうなの?大丈夫?」

「まぁ保健室行って少し休めば大丈夫だと思うから」

「じゃあ一緒に行くよ」

「でも…」

 正直今優衣と一緒に居たくない…


「もしかしてこの前の事気にしてる?」

「…うん、ちょっと」

「そう…なんだ…実はね私も気にしすぎて会いたくないなぁって思ってたの」

「優衣も?なんだー一緒かーホッとした」

「やっぱ私たち双子なんだね」

「だねー」

 なんかすっごく小さい事を気にしてたのかって思った。


「やっぱ、屋上行こうかな…」

「屋上?」

「うん、一緒にどう?」

「行く!」


*****


「ホントに入って大丈夫なの?」

「うん大丈夫」

 鉄のドアを開けて屋上へ。


 屋上に出てすぐタバコに火をつけようとしたところで優衣が「私にも一本」と言ってきた。

 この感じだと冗談じゃないな。


「いいよ、その代わりに…」

「代わり?」

 よし、これで念願のシガーキスできる!


「シガーキスを…」

 何それ?って顔してる、知らなくて当然か。


「あたしが火をつけるから…」

「ああ、なるほど」

 今のでわかったのか、この子すごいな。


「じゃあ」

「うん」

 優衣がタバコをくわえて、キス顔をする。


「いくよ?」

「うん」

 なんか変に緊張する。


 初めてだけどなんとか上手くいった。


「優衣もタバコ吸うんだ、なんか意外」

「基本吸わないよ。ただ、たまにお父さんの貰って吸うぐらい。それより六華の方が意外だよ」

「そう?」

 そんな意外かな。


 とそこに。

「おい、六華!ここでタバコ吸うなって何回言ったらわかるんだぁ」

 生徒指導の藤島が来た。


「はいはい、わかってますって」

「それに姫宮まで一緒か」

「はい…」

 優衣が不安そうな顔を向けてくる。


「大丈夫、何かよくわかんないけどこれ冗談だから」

 ウイスキーを飲みながら優衣に耳打ちした。


「わりぃタバコ貰えるか?」

「えー、どうしようっかなー」

「いつも見逃してやってるだろ?」

「…しょうがないなー」

「サンキュ」

「火は?」

「あるから大丈夫」

 ライターはあるんかい!


「まったく、JCからタバコ貰う教師ってなんなの?」

「そんなこと言ったら、別に不良ってわけじゃないお前らがタバコ吸ってんのもおかしいだろ」

「はーい、あたし不登校な上に保健室通いの不良娘でーす」

「自分で言うな」

「すんませーん」

 優衣が置いてけぼりにされてポカンとしてる、"この人たちなんなの?"って言いたそうな顔してる。


「あのー」

「ごめんね優衣、こういうコントだから気にしないで?」

「…そうなんだ」

 苦笑する優衣。


「それにしてもお前酒つえーな」

「ん?そうかな」

「だってそれストレートだろ?」

「そうですよ、飲みます?」

「いや、仕事中は飲まない主義だ」

「そうですか」

「おっといけね、戻んねえと怒られる。お前らどうすんだ?」

 時計を見ながら焦っている藤島。


「自主休校しまーす」

「そうか。担任には言っとくよ」

 藤島はそう言って、屋上を後にした。


「やっと行ったか」

「そう…みたいだね」

「これからどうする?」

「とりあえず終業式終わるまでここに居よっか」

「お?優衣さん、ワルだねー」

「そういう六華だって同罪だと思いますけどぉ?」

 いたずらっぽい笑みを浮かべる優衣。


 こういう表情がたまらないなぁ。


 そこに

「ちょっと、2人ともこんなとこで何やってるんですか」

 湖姫先生が来た。


「なんで先生を呼ばないんですか!」

 先生もサボる気満々なんですか。


「なんでって言われても…ねえ?」

「ねえ?」

「ていうか先生、式始まるんじゃないですか?」

「あ!そうでしたそうでした。じゃあ私は行きますね、終わったら呼びに来ますね」

「はーい」

 湖姫先生が大慌てで屋上を後にしようとする…けどやっぱり転んだ。


「あうっ!」

 それでも気にせず屋上を後にした。


「12月だから寒いね」

「そうだねー、くっついてようか?」

「そうしよ、六華はお酒飲んでるから温かそうだし」

「酔った勢いで何するか分からないぞー」

「…うん。でも六華になら何されてもいいかな…」


 ちょっと優衣さん?冗談だよ冗談。

 でも確かに優衣からなら何されてもいいかもしんない…


「六華、それちょうだい」

「これ強いよ?」

「いい、飲みたい」

「じゃあ、どうぞ」

「いただきます…うっ…」

 優衣が顔をしかめる。


「六華、良くこんなの飲めるね…」

「慣れだよ、慣れ」

「慣れるの?」

「…うん」

 あたしはタバコに火をつけながら答える。


「飲めるんだったら飲み干していいよ?」

「…無理だよー」

「あはは、冗談だよ」

「もー、六華のいじわるー」

「あはは、ごめんごめん」

「謝る気ないでしょー」

「あるよー、ほら」

 さらっとキスする。


「もう、キスでごまかさないでよー」

「だって、優衣かわいいんだもん」

「もう…ありがとう…」

 そう言ってキスしてくる。


「お熱いねーお2人さん」

「み…美沙希!いつから見てたの?」

「んー?六華がタバコに火をつけた辺り?」

「もうそんな前からいたんなら声かけてよー」

「だって2人がイチャついてたから邪魔しちゃいけないかなって思って」

 もうこの子はー。


「別にいいのに、ねぇ六華?」

「そうだよー」

「そう?じゃあ今度は突撃しようかな?」

「それもそれでちょっと困る」

「冗談だよ冗談」

 冗談かい!


「ところで優衣と美沙希っていつから仲良いの?」

「小2の時だっけ?」

「私が転校してきたのが丁度そん時だから、そうだね」

「そうだったの。優衣ってどこから来たの?」

「京都だよ」

 いいなー京都か


「こっちに来たのは親の都合?」

「うん、確か」

 何かを思い出したらしく少し悲しい顔をした。


「ごめん、聞いちゃいけないこと聞いちゃった?」

「ううん、大丈夫」

「ならいいけど」

「それより、六華ってタバコ吸うんだ」

「吸うよ?優衣もだよ」

「ホント?」

「うん、ホントだよ」

「2人とも意外だなーていうか不良だったんだねー」

「六華、もう一本貰える?」

「いいよー」

 美沙希の前で再びシガーキス。


「わざわざ見せつけなくていいよー」

「そう?」

「うん…って何飲んでんの?」

「ん?ウイスキー」

「マジか…」

 美沙希さん困惑の表情。


「学校の屋上でタバコを吸うのみならずお酒まで飲むとはどういうことですか!」

 湖姫先生、再度登場。


「担任来たけど大丈夫なの?」

「大丈夫。先生も飲みます?」

「先生、職務中は飲まない主義なので遠慮します。ちなみに何飲んでるんですか?」

「ウイスキーですよ」

「ま…まさか、水割りかロックですよね?」

「いや、ストレートですよ?」

 湖姫先生驚きの表情。


 とそこに

「うーっす」

 藤島も来た


「ちょっと藤島先生聞きました?この子中学生のくせにウイスキーをストレートですって。私なんかアルコール一滴でも酔いますのに」

「ええ、知ってますよ。こいつ俺が来るといっつも酒勧めてくるんですよ」

「そうなんですかー」

「先生、このことは他の先生には漏らさないように頼みますよ」

「わかってますって」

 この先生たち大丈夫なのかな…


「それより先生、式終わったんですか?」

「終わりましたよ」

 早くないか?


「そうですか、じゃあ、優衣帰ろっか?」

「うん、美沙希はどうする?」

「お供させていただきます」

「という訳でこれで帰ります」

「その前に渡すものがあるので、2人とも職員室来てください」

「わかりました、美沙希は校門のとこで待ってて」

「わかった」


 あたしたちは職員室へと向かった。



「これが冬休みのしおり、これが宿題プリント、自由課題のプリント、あとは…これは六華ちゃんに…

これだけかしら…はい、プレゼント」

「プレゼントなら、いらないです」

「ショックですー生徒から受け取り拒否されましたー」

「あー六華ってば先生泣かしたー」

「冗談だよ。先生、冗談です、ありがたく頂戴します」

「そうですかー」

 先生の顔がパーッと明るくなる。


「もう、六華ちゃんてばー、そういう子にはこうです、おでこ出してください!」

「こうですか?」

 デコピンされた後、キスされた。


「赤くなるといけないですから、絆創膏代わりです」

 あまりの出来事に一瞬、固まってしまった。


 なんだろう、このかわいい生き物。


 ふと横を向くと優衣がむくれてた。


「わ!ごめんなさい、お詫びに…優衣さんもおでこ出してください」

 優衣が前髪を上げて…めっちゃかわいい…思わず鼻血が出そうになった。

 …すいません冗談です。


 先生は優衣のおでこにもキスした。


「な、なにするんですかー」

 優衣まで驚きの表情。


「優衣さん、むくれてたので…つい」

「だからって…さ…まあいいか」

「さて、2人とも楽しい冬休みを過ごしてくださいね」

「わかりました。さあ帰ろ、優衣」

「うん」

「じゃあ先生、さようなら」

「はい、さようなら」


 あたしたちは職員室を後にして美沙希の所へ。


「ごめん、お待たせ」

「お!意外と早かったね」

「そう?」

「待ってる間、校庭5周くらい出来るかなぁって思ってたくらいだよ」

「さすが、陸上部…」

「あれ、涼くんは?」

「呼んだか?」

 後ろにいた。


「俺もいるぞー」

 ヒロくんもいた。


 まあこの2人はだいたいセットか。


「ねえみんな?この後、家来ない?」

「優衣の?行く!」

「わたしもー」

「俺らもいいのか?」

「もちろん」


 4人で優衣の家に遊びに行くことになった。



*****


 道中男子の会話が聞こえた。


「なあ、涼」

「なんだ?」

「俺、女の子の家行くの初めてだからなんか…」

「見た目チャラいくせに?」

「チャラいは余計だ」

「すまん」

「お前は緊張しないのか?」

「すまん、夏休み中ずっと六華の家にいたから別に普通」

「な!お前なー」

「言わなかったっけ?」

「聞いてない!」

「そうだっけ?」

「そうだよ!くぅー、お前に先越されるとは…」

「まあ、いいじゃないか」

「良くねえよ」

「でも今回優衣の家にお邪魔できるのは誰のお陰かな?」

 勝ち誇る涼くん。


「そうだよー?」

「な!美沙希まで」

「ヒロくんその見た目で、実は普通だよねー」

「俺らまだ中1だぜ?さすがにそれはねえだろ。なあ?涼」

 それを涼くんに振るか。


「悪いな大樹、俺こうだから」

 そう言ってあたしと優衣の肩を軽く叩く。

 

「ぬわー!なんでお前だけそうなんだー!羨ましすぎる!」

「ヒロくん?私じゃ不満?」

「そんなことは…無いです」

「じゃあ、いいじゃない」

「はい」

 美沙希に咎められ頭が上がらないヒロくん。


「涼くん、耳貸して」

「ん?こうか?」

「ヒロくんに…」

 涼くんに耳打ちする。


「お前な…でも面白いか。やってみ?なんなら優衣も」

「私も?いいけど…ホントに言うの?」

「もちろん」

「よーし。ヒロくんちょっと耳貸して」

 あたしと優衣でヒロくんを挟んで両側から耳打ちする。


 優衣に手で合図する。


「ヒロくん…好きだよ」

 普通に言わずわざと耳に息を吹きかけるように言った。


 ヒロくんはその場に膝から崩れた。

 近くで聞いてた美沙希は大爆笑。

 涼くんは笑いを必死にこらえてた。


「お…お2人さん…それは…反則…です」

「作戦成功!」

 優衣とハイタッチする。


「はー、一瞬で意識、飛びかけたわ」

「大樹、グッジョブ!」

「なにがじゃ!」

「ヒロくん、おもしろーい」

 女性陣3人で茶化す。


「なんか女性陣からの扱いひどくないか?」

「そんなことな…プフッ…いって…」

 涼くんはどうやらツボに入ったらしい。


「お前もいつまで笑ってんだよ!お前一回やられてみろ、この気持ちわかるから」

「いいぜ?六華、優衣さっき大樹にやったやつ俺にも」

「え…やるの?優衣どうする?」

「やろうか」

「優衣が言うなら」


 ヒロくんにしたことを涼にもする。


「…想像以上の破壊力だな…これ」

「だろ?」

「でもお前みたいにはならんぞ?」

「くそー負けたー!」

 何に?


 そうこうしてる内に優衣の家に着いた。

ご指摘いただいた箇所を直すためしばらく休載します

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