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第15話 夢とあたし

視点戻ります

 優衣との波乱の初デートから3週間経ったが、結局窓ガラスの件は犯人が見つからなかった。


 優衣はここ最近休んでばっかりですごく心配だな、今度家に行こうかな?



 そんなある日、優衣からやっとメールが来た。

 だが送り主は本人ではなかった。


『智華です。話したいことがあるのですが今日お時間よろしいでしょうか?』


 智華さんからだった。


『はい大丈夫です』

 と返信する。


『ありがとうございます。では17時に洲島駅前のザ・ローズにてお待ちしてます』


 返信は早かった。


『わかりました』


 なんだろう、あたしのことか、優衣のことか…考えてもしょうがないか。



*****



 あたしは17時に間に合うように早退して駅に向かう。


 洲島駅は中学校から徒歩で15分くらいの距離にある。

 その駅のすぐそばにあるザ・ローズは幅広い年齢層から人気のあるカフェである。

 

「やぁ、六華ちゃん。3週間ぶり…だっけ?」

「そうですね」

「敬語使わなくていいわよ?それと、もかでいいから」

「うん、わかった…もか姉」

 ちょっと気恥ずかしい。


「よろしい!じゃあ、お店入ろうか」

「うん」


 店内に入って席に着く。

「いらっしゃいませ」

「ブレンド2つお願いします」

「かしこまりました」


「あ、ごめんコーヒーでよかった?」

「うん、大丈夫」

 とりあえずコーヒーを待つ。


「お待たせしましたブレンドです。ごゆっくりどうぞ」

 コーヒー到着。


「どうぞ、今日は私のおごりでいいから」

「いいの?ありがとう」


「今日は来てくれてありがとう。話は2つ、まずは優衣のことなんだけど、

今体調崩して入院してるけどもうすぐ退院できるみたいだから心配しないで欲しいって」

「わかった」

「次は…」

「おい、智華!」

 声のした方を見ると、そこに智輝さんが立っていた。


「智輝、なんでここが」

「あのことは話すなって言ったろ」

 あのこと?


「智輝さん、あの事って何ですか?」

「すまない、今は話せない」

「どうしても話せないんですか?」

「あぁ、ホントにすまない」

「そう…ですか…」

 そう言われると逆に気になるな…


「すまんこいつが先走ったせいで君に迷惑をかけた。すまない」

「いえ、いいんです」

「じゃあ俺たちは帰るから。ほら行くぞ智華」

「わかったわよ」


 2人は帰った。

 

 さて私も帰るか。


 店を出て少し伸びをする。


 せっかくだから駅前で買い物でもして…

 ドスッ!

 前から来た人に刺された。


 刺されたところから血が溢れてくる。


「ま…て…」


 あたしは意識を失った。



*****



 目覚めたらベッドの上だった。


「やっと、起きたか。心配したぞ?」

「…涼…くん?」


 ここ…病院?


「ああ、どうした?」

「あたし、どんくらい寝てた?」

「3日くらいだな」

「そっか…」

 そんな寝てたのか…余計な心配かけちゃったな…


「体、大丈夫…じゃないか…」

「…うん、まだ傷が完全に治ってない…し、体力も戻って…ない」

「そうか、とにかくゆっくり休め」

「…うん。そうだ、涼くん…」

「ん、どうした?」

「…ごめん、なんでもない…」

 聞きたいこといっぱいあるのに…言葉にできない。


「そうか。それにしても広い部屋だよなぁここ」

「特別室だからね。なんでもあたし専用らしいんだよね」

「そうなんだ、でもなんで?」

「さぁ?あたしにも分かんない」

「そっかー」

「あたし、少し寝るね?」

「おう、おやすみ」


 あーなんだかすっごく疲れた…眠い。

 寝よう。




*****



「バイタルの方はどうだ?」

「現在は安定してます」

「そうか」


 これは…夢?


「この間、チャイルドルームで子どもが1人死んだらしいな」

「詳しいことはわかりませんが、コード01が癇癪を起して力を使ったみたいなんです」

「癇癪か…」

「なんでも、おもちゃで遊んでたらそれを他の子に取られたらしく、取り返そうとして無意識に力

を使ったみたいですね」

「そうか…どうやら考えを改めなければいけないようだな」

「というと?」

「私は反天使派でな?これまで天使に良いイメージを持ってなかった、人間とは違う化け物だと。

だから癇癪を起こすなんて想像もしてなかった、結局、天使も姿形は違えど人間なんだなと」

「なるほど…」

「コード01と02…六華と優衣か…この子たちにこんな酷な運命を背負わせるなんて…上は何を考えてるん

だろうか…」


 ん?01ってあたし?というかなんで優衣が?

 あ、でも夢かこれ…夢なのか?もしかしてあたしが忘れてるか覚えてないだけで過去にこんなこと

あったのかな?


「で巻き込まれた子どもはなんて名前だったかな」

「確か、篠田さんの娘で彩華ちゃん…だったかと」


 涼くんのお姉ちゃんなのかな?


「そうか…篠田さんも大変だな、確か他に子どもっていなかったよな?」

「確かそうですね、1人娘だったかと」

「そうか…」

「チーフ、そろそろ」

「ああ、そうだな」


 やっぱりコード01はあたしだ…02も優衣の小さいころはこんな感じなんだろうって思うし。

 これが過去にあったことだとして…もか姉が言いかけた事ってこれなのかな?


 そこで場面が変わった。


 そこは恐らくさっき言ってたチャイルドルームだろう、そこにはあたしがいた。

 あたしは部屋の隅で1人で遊んでた、今いくつくらいなんだろう?


 男の子が近づいてきた。


「なんだよそれ、貸せよ!」

「イヤ!これ大事なもの」

「うるせえ!貸すくらいいいだろ!」


 男の子が小さいころのあたしの首にかかってたネックレスを取り上げた。

 強引に引っ張ったせいで、ひもが切れて真珠がバラバラになった。


 小さいころのあたしの悲鳴と同時に目の前が真っ暗になった。


 ようやく視界が明るくなって見渡すと、小さいころのあたしの前に体をずたずたに引き裂かれた

女の子が横たわってた。

 加害者の男の子は右腕を千切られ、あまりの苦痛に顔を歪めながら倒れてた。


 何これ…あたし2回も人殺ししたのかな…



*****



 そこで目が覚めた。

「六華、大丈夫か?」

「涼くん…」

「うなされてたけど大丈夫か?」

「大丈夫、それよりあたしうなされてた?」

「ああ、うなされてた」

「そっか…」


 聞かれてたー!恥ずかしい。

 でもあれってホントにあったことなのかな?


「ねえ、涼くん、変な事聞いてもいい?」

「なんだ?」

「涼くんってお姉ちゃん居たの?」

「え、姉ちゃん?ほとんど記憶ないけどいたっぽい話は聞いたけどな。でもなんで?」

「なんか夢に出てきたんだよね…」

「そうなんだ…」


 2人の間に沈黙が流れる。

 聞かない方が良かったかな…


「…変な事聞いてごめん」

「いや…気にすんな…ところで…さっきからそこで覗いてるのは誰だ!」

「は!バレたか」

 そこには優衣が立ってた。


「優衣、なんでそこに立ってるの?」

「いやー、なんか入っちゃいけない雰囲気だったから入りづらくて」

「そうか…まぁとりあえずこっち来いよ」

「そう?じゃあ失礼します」

「ケガしたって聞いたけど大丈夫なの?」

「うん、ケガは大丈夫なんだけどまだ入院してるの。で、偶然同じ病院って知って覗きに来たら

なんか入りづらい空気だったからさ…」

「そうだったの…ごめん」

「ううん、気にしないで」

 優衣はえへへと笑う。


「やべ!もうこんな時間か、悪い俺帰るわ」

「うん、またね」

「おう、2人とも早く治して学校来いよ」

「「わかった」」


 涼くんが部屋を出て。


 優衣と2人きりになった。

 

「ねえ」

「うん?」

「2人きりだね…」

「そうだね」

「…そういえばこの前もか姉と会ったんだよね?」

 な…なぜ知ってる!って送信履歴見ればわかるか。


「うん、駅前のカフェで」

「そう…何の話したの?」

「えーっとねー、優衣の事と何か重要な事を言いかけて智輝さんに止められてた」

「そっか…兄さんにお礼言うべきかな…」

 優衣は思案顔でそう言った。


「なんで?」

「機密事項だから…ね?」

「機密事項?」

「そう、だから知ってはいけないし聞いてもいけないの。それをお姉ちゃんはおしゃべりだから…」

「それって、あたしにも関係のあること?」

「え!?い…いや、六華には関係ないよ」

「そう」

 関係あるんだな、じゃあ夢も過去にあったことなのかな?

 

 天使はときどき、はっきりした予知夢や過去にあった重要事項を夢として見ることができる。

 ただ見ようと思っても見れるものじゃない、何かそれに関する出来事が起きた後に見れることが多い。

 特に謎を残したままだと見やすい。

 ただ、なんであの夢を見たのか謎だ。


「ちょっと、電話していい?」

「いいよ」

 優衣が窓際に移動して電話で誰かと喋ってる。


 なんだろうと考えてると、電話がかかってきた。

 ディスプレイには見たくない四文字が光ってた。


「なんだよ」

『なんだよとはご挨拶だな、六華』

 相手は天人の第1分家の杉村 瞭だった。


 天人家には第1から第7分家まであり、第1分家の瞭は杉村家の長男で1番年上、第2から第6までは

同い年で第7だけ2つ下である。


「何か用?」

『用が無かったら掛けちゃいけない?』

「別にそんなこと言ってないじゃない!」

『まあ、そう怒るなって。話を戻そうか、最近どうだ?』

「何?そんなこと聞くためにわざわざ電話してきたの?」

『ひどいなー、よし聞き方を変えよう、誰かに何か言われなかったか?』

 思い当たる節がいくつかあって答えていいかわからない。


「姫宮の…」

 と言ったところで兄さんの声色が変わったような気がした。


『姫宮…姫宮智輝か?それとも智華の方か?』

「え?」

 急変しすぎて戸惑ってしまった。


『智輝か智華かって聞いてるんだよ!』

「兄さんどうしたの?」

『答えろ』

 なんかいつものチャラい感じが無くなって、何か怖い。


「…両方」

『両方!?で何言われた?』

「何も…多分、兄さんが思ってるようなことは何も言われてないよ」

『そうか…それならいいんだが』

「そうなの?ねえ、兄さん…」

『なんだ?』

「…兄さんはあたしの何を知ってるの?」

『すまん、それは言えない』

「なんで?言えない理由は?あたしは…何なの?」

『すまない…ホントに今は何も話せない』

 何かいつもの兄さんらしくない。


「わかった、その代わりもう二度と電話してこないで」

『…約束はできない』

「…もういいや、切るよ」

『ああ』

 はあ、何なの…まったく…


 それにしても優衣のお兄さんといい、バカ兄貴といいあたしの何を知ってるんだろう?

 気になるな…


「誰から?」

 優衣が電話を終えてソファに戻ってきた。


「兄貴から」

「六華ってお兄さん居たの?」

「直接の血縁関係は無いけどね」

「分家?」

「そう、第1分家の杉村 瞭、あたしたちの3つ上なの」

「そうなんだ。他にもいるの?」

「うん、2から6は同い年で7だけ2つ下だね。連絡会って言うのがあってみんな仲がいいの」

「そうなんだ。今度会ってみたい」

「ただ、全員東北に住んでるから中々難しいんだよ」

「そっか」

 がっかりする優衣。


 とそこに、ドアをノックする音がした。


「はーい」

「六華いる?」

 聞き覚えのある声だった。


「いるよー、入ってきて」

 まさか兄貴以外全員集合なんてないよね?


 だがそんな予感は奇しくも当たってしまったのだ。

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