表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/18

第12話 デートの終わりと闇

 優衣が起こしてくれたらしく、もう3つ前の駅を過ぎたところだった。


「六華、起こしてごめんね、もうすぐ着くよ」

「うん、ありがとう。ふわぁーっと」

「ふふっ、おっきなあくびー」

「無意識だったわ、そんなに大きかった?」

「うん」

 そっかー気を付けないと。


『間もなく洲島、洲島。お出口は左側です』

「もう着いたのかー早いね」

「だねー」

「帰り、買い物して帰ろうよ」

「お酒とか?」

「そう、あとポテチとか」

「いいねー」


 改札を出て目的の店へ


「どうしよっかなー、とりあえずウィスキーだけ買っておくか」

「六華ーお酒ってどれがおススメ?」

「あたし、缶チューハイとか飲まないしなー。無難なとこだとこれか」

 あたしはカシオレを勧めた。


「これって甘いの?」

「あたしは普段、缶チューハイ飲まないからわかんないけど、甘いよ?」

「そーなんだー。じゃあこれ」

「あぁそうだ、ウォッカも買っとこ」

「ポテチこんなもんで良い?」

「うん、いいよ。あとね、チョコもあると良いかな」

「おつまみに?」

「そう」

「へぇー、そうなんだ」


 会計を済ませて店を出た。


「お酒はお風呂出てからね」

「うん」


 優衣の家に着いた。


「お邪魔しまーす」

「はーい」

「楽しかったね」

「そうね、また行こうよ」

「涼くんも一緒に良い?」

「もちろん、良いよ?」

「やった」

 小さくガッツポーズ。


「じゃあ、私お風呂準備してくるから」

「はーい」

 さて、テレビでも見て待ってますか。


 ソファに座ってたら段々眠くなってきた。

 今日は酒飲まないで寝ようかな?


「六華、お待たせー。やっぱ眠い?」

「うん、今いい感じに眠い」

「そっか、お風呂どうする?」

「入ってから寝るから、それまで耐える」


 でも正直寝たい。

 と思ってた矢先にお風呂が沸いた。


「さ、お風呂入ろ」

「…うん、がんばる」


 着替えを持って脱衣所へ。


「そういえば、聞きたいことがあったんだけど」

「何?」

「六華って涼くんのどこを好きになったの?」

「どこって言われても…かっこいいとこかな、外見も中身も」

「それだけ?でも、なんかわかる気がする」

「…もしかして優衣も涼くんのこと…」

 好きだったのかな?


「ううん、私は男の子とまともに話せなかった…から、好きになるとかそういうの無かったし」

「そっかー今は平気になったの?」

 ホッとした。


 もしかして優衣の好きな人を横取りしちゃったかと思った。


「誰に対してもじゃないけどね、今んとこ涼くん限定かなー何故かわからないけど」

「そうなんだー。まぁ、話せるようになっただけマシじゃない?」

「かもね、私も…その…普通に男の子を好きになってみたい…から」

「でも今は怖いのか」

「うん」

 この子も大変なんだなー。


「ねぇ、どうすればいいかな」

「どうすれば…か、アドバイスにならないかもだけど、優衣なりに頑張ってみたら?」

「私なりに…か」

「そう、例えば…涼くんと普通に喋れるならそこから慣らしていくとか…さ?」

「そっか、なるほどね。ありがとう」

「お礼とかいいから。とにかく、なんかあったらあたしか涼くんに相談してよ?」

「うん、わかった」

「さて、お風呂出ようか」

「だね」


 お風呂から出て髪を乾かす。


「六華って甘いにおいするよね?シャンプーとかボディーソープってわけじゃなさそうだけど、なんで?」

「そうかな?自分でもよくわかんないけど」

「そうなんだ、香水も無いよね?」

「うん、持ってるけど普段付けないからね。それに香水だったら消えるでしょ」

「あぁ、そっか」

「それに甘い系の香水、苦手だし」

「そうなの?」

「そう。なんかよくわかんないけどね。終わったよ」

「ありがと、次六華のやったげる」

「お願いしまーす」


 髪を乾かし終わって、寝室へ。


「明日どうしよっか」

「そうだな…あ、そうだメガネ買いに行きたいから付き合って」

「六華って視力悪かったっけ?」

「最近悪くなってきて、そろそろメガネかコンタクト作らなきゃなーって思ってさ?」

「そうなんだー、いいよ」

「ありがと、そしたら…どこ行く?」

「ベイシティモール行きたい!」

「じゃあ、そこ行こうか」

「やった!じゃあ9時に家出なきゃだね」

「うん、じゃあもう寝よっか」

「そうだね、じゃあ電気消すよー」

「うん、おやすみ」

「おやすみ」



 こうして波乱の初デートの日は終わった。



*****



 次の日


「優衣、そろそろ起きよう?」

「んー?あぁ、六華ーおはよー。今何時?」

「今7時ちょい過ぎぐらいかな」

「わかった、今起きるー」

 そう言って起き上がったは良いものの、髪と着衣が乱れ放題だった。


「優衣、なんか色々すごいことになってるけど大丈夫?」

「大丈夫、いつもこんなんなる」

「そうか」

「さて、準備しなくちゃね。顔洗ってくる!」

「いってらっしゃい」

「六華、朝ごはん適当に作ってくれる?冷蔵庫の物とか使っていいから」

「いいの?じゃあ何か作って待ってるから」

「お願いします!」

 そう言って元気に部屋を出る優衣。


 さて、朝ごはん作らなくちゃ。

 とりあえずキッチンに行って冷蔵庫の中を確認する。


「何作ろうかな…」

「六華ー」

 優衣が抱き着いてくる。


「どうしたー?」

「何作るの?」

「まだ決まってないんだけど、優衣は何が良い?」

「んー、クロックムッシュ食べたい」

「ごめん、作ったことないんだよ」

「そうなの?じゃあ、私作ってあげる」

「ホントに?お願いします」

「了解!リビングで待ってて」

「わかった」

 リビングに行って朝ごはんが出来るのを待つ。


「六華、タバコ吸っていいからね」

「いいの?」

「いいよ。テーブルに灰皿あるから。あと空気清浄機つけてね」

「わかった」

 えーっと、空気清浄機は…あれか。


 電源を入れてタバコに火をつける。


「ふぅー。ん?」

 ふとテーブルの封筒に気が付いた。


 洲島医師会病院って確か精神病院で有名なとこだっけ?

 優衣どっか悪いのかな?昨日もビタミン剤持ってたし…大丈夫かな?


「お待たせー」

「優衣、これって…」

「わ!私置きっぱなしだったー!中身見た?」

「見てないよ」

「なら良かった」

「優衣、どっか悪いの?」

「ううん、私はどこも悪くないよ。ただ…」

「ただ?」

「…ごめん、今は」

「そう…なら、しょうがないか…」

「…ホントにごめん」

「こっちこそ、変な事聞いてごめん」

「ううん、いいの。それより冷めないうちに食べよう?」

「うん、そうしよう」

 微妙な空気のまま朝ごはんを食べる。


 やっぱ、優衣の料理はおいしいな。


「どう?久しぶりに作ったから自信無いんだけど…おいしい?」

「そうだったの?そう思えないぐらいおいしいよ」

「そう?なら良かった」

「今度レシピ教えて?」

「もちろん良いよ」

 レシピ覚えて涼くんにも食べてもらおう。


「片づけは…帰ってきてからでいいか、皿とフォークだけだし」

「いや、あたしやるよ、作ってもらったし」

「そう?じゃあお願いしようかな」

「任せて!」

 ちゃちゃっと終わらせて出かけよう。


 量が少ないからあっという間に終わった。


「さ、でかけよう」

「うん、あ…ごめん、お金あんま無かった」

 財布を見て優衣が驚きの声をあげる。


「あたしが出すから、気にしなくていいよ」

「いいの?」

「任せなさい!」

「じゃあ、お願いします」

「じゃあそろそろ出かけようか」

「うん」



 あたしたちは予定よりちょっと早く家を出た。



*****



 駅に着いた。



「まさか2日連続でデートできるとは夢にも思ってなかったよ、ありがとね六華」

「ううん、お礼を言いたいのはこっちだよー」

「私…その…六華と付き合えて良かった」

「あたしも優衣と付き合えて嬉しいよ」

「そうなの?うふふ」

 顔を赤くして照れる優衣。

 

「そうだ、今日帰ったらちょっと大事な話があるんだけど良いかな?」

「いいけど、何?」

「…んーと、私の事もっと知って欲しいなー、なんて思ってみたり?」

「そうなの?とりあえず、わかったよ」

「ありがと。あ、電車来たよ」

「ホントだ」

 電車に乗って一路目的の駅へ。


 電車に乗ったは良いものの場の空気が悪い。

 何て言っていいか分からないけど、とにかく視線が痛い。

 昨日は何もなかったのに、なんでだろう?


(ねぇ、あれって…)

(やっぱ、そうだよ)

(なんで、化け物が乗ってんだよ…まさか俺たちまで殺す気じゃないよな?)

 やっぱターゲットはあたしか…


(あの子って確か、姫宮家の養子の子なんだっけ?)

(そうらしいね。だから本家の双子と似てないんだって)

 あれ?

 

 ターゲットは…優衣?

 養子?優衣が?


 周囲の会話は徐々に増えていった。


(人殺しがなんでここにいるんだ?)

(なんでも極度のファザコンで父親との間に子供を作ったとか)

(何それ、気持ち悪いな)

(しかもその子を要らないからって殺したってよ?)

(何だよそれ、とんだ鬼畜野郎だな)


 気づいたら優衣は真っ青になってた。

「優衣、大丈夫?」

「…うん、だいじょ…うぶっ!」

 優衣が吐きかけた。


 なんとか抑えられたが、それがトリガーになり、更に言葉の暴力は勢いを増した。


(うわ、あいつ吐きそうになってるよーきったねー)


「優衣、次の駅で一回降りよう」

 それにしても昨日の今日で何があったんだろう?


 次の駅で一旦降りた。


「大丈夫…じゃなさそうだね」

「…ううん、大丈夫だから。ちょっとお手洗いに行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい」

「大丈夫だからついてこないでね」

「でも…」

「ホントに大丈夫だから」

 …行ってしまった。


 10分くらいしても戻ってこなかったから様子を見に行った。


「優衣、大丈夫?」

 …返事が無い。


「優衣?」

「…ここ」

「大丈夫?」

 バタンとドアが開き、優衣が抱き着いてきた。


「おっとっと」

 あまりの勢いに倒れそうになった。


「…六華…ごめん…」  

「何で謝るの?優衣は悪くないでしょ?」

「そうだけど…迷惑かけたし、心配もかけたし…」

「何言ってんの、全然迷惑とも思ってないし、心配だってどんどんかけていいから」

「でも…」

「いいの。何があったってあたしはずっと優衣の味方だから。ね?」

「…うん」

「だから泣かないで、あたしは笑顔の優衣が一番好きだよ」

「ぐすっ…ありがとう…」

「涙はこうしちゃおう」

 優衣の涙を唇で拭う。


「えへへ、嬉しいな」

「やっと笑ったなぁ?かわいいんだから、このー」

 今度は唇を唇へ。


「んっ…もう、六華ってばー」

「だって、優衣があまりにも可愛くて、つい」

「もうしょうがないなー」

 そう言って優衣がキスしてきた。


「あはは、さてそろそろ行こうか」

「そうだね」

「あたし時刻表見てくる」

「じゃあ、階段下のベンチにいるから」

「わかった」

 

 一旦、優衣と別れて時刻表を確認する。


「えーっと、次は…」

 電光掲示板と腕時計を照らし合わせる。


 今10時13分で…直近だと20分か。


「六華、次何分?」

「20分だね」

「意外とすぐだね」

「…ねぇ、優衣?やっぱり今日は帰って家でまったりしない?今日しか行けない訳じゃないし」

「…もしかして、さっきの事を気にしてるの?だったら大丈夫だから、気にしないで」

 優衣は引きつった笑顔でそう言う。


「無理しないでよ」

「む…無理なんて…してないよ」

「今日は帰ろう。ね?」

「だから無理なんてしてないって…」

 今にも泣きそうな優衣。


「ごめん、もっかい行ってくる」

「じゃあ、ここで待ってるよ」

 ホントに大丈夫かな?


 なんかあの子ってあたしと似てるとこがある気がする。

 性格は逆かもだけど、趣味嗜好とか好きなタイプとか。

 

 そういえば、少し前に涼くんに『お前らってなんか似てるよな?もしかして生き別れの双子だったりして』って言われたことがあるけど、もしかして冗談じゃなくあたしたちって双子なのかな? 

 

 もしそうだったらどうしようかな…


 って何考えてんのあたし…そんなわけないじゃん…

 仮に双子だったとしても、あたしたちの関係が変わるわけないじゃん。

 

 1つ気になる…どっちがお姉ちゃんなんだろうか。

 優衣があたしの妹だとすると…


『お姉ちゃんだーい好き!』

『もう、お姉ちゃんの意地悪』


 …悪くない。


「六華、どうしたの?なんかにやけてるけど」

「優衣さん!」

「はい…なんでしょう」

「家に帰ったらやってもらいたいことがある」

「六華のお願いなら…いいよ」

「ありがとう、じゃあ帰ろうか」

「う…うん」

 、

 というわけでショッピングを中止して優衣の家でまったりとした休日を過ごすことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ