第10話 奇妙な事件と優衣の家にお泊り
ここから六華視点に戻ります
「優衣、おはよー」
「おはよう、六華」
優衣と付き合い始めて2日が経った。
「2人とも、おはよう」
涼くんが来た。
「涼くん、おはよう」
「おはよー、涼くん」
優衣は男性恐怖症だけど涼くんだと平気みたいだ。
「そういえば、優衣少し痩せた?」
「え?あー、最近ちょっと寝不足なんだよね…」
そうなんだ…心配だな。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
がんばって笑顔作ろうとしてる感じするな。
「悩み事あったら、いつでも相談してね?」
「うん、ありがとう…ふぅあー」
ホントに眠そうだな。
「優衣ホントに大丈夫か?」
涼くんも心配してる。
「大丈夫だってばー、もう2人とも心配症だなー」
笑ってるけど、目が笑ってない。
ガララ…
教室のドアが開いて、担任が来た。
先生!ちゃんと足元見て歩かないとつまず…
ガン!と鈍い音がした後、先生が転んだ。
「うう…痛いですー」
教室中が沸く。
「せーんせ!今日もかわいいですよ!」
進藤が茶々を入れる
「ちょっと、からかわないでくださいよー」
でも確かにかわいいよなー実際。
「…っか、六華!」
呼ばれて振り向くと優衣がいた。
「何見てたの?」
「そ…その…」
「先生見てたでしょ?」
この子嫉妬してるの?
「い…いや?」
「絶対嘘。…私は見てくれないの?」
かわいいなー、チューしちゃお。
もちろん唇に。
「…こんなのじゃごまかされないからね?」
「じゃあ今日家行っていい?」
「え?今日?」
「うん、今日」
急なことだし、都合悪いかな。
「…部屋は…うん。リビングは…大丈夫。お風呂もキレイにしてるし…」
なにやら考え事をしてるようだ。
丸聞こえだけど。
さっきから疑問なんだけど、涼くんの膝上に座ってるのはなぜ?
「あのー姫宮さん、席に戻ってくださいませんか?」
優衣は注意された。
「あ、ごめんなさい」
「はい、ではホームルームを始めますね」
と言った瞬間。
パリーン!
教室の窓がいきなり全部割れた。
窓側の生徒は全員ケガをした。
「優衣!」
2人で同時に叫んでしまった。
幸いにも優衣は無傷で済んだ。
「みなさん、慌てないで避難してください」
先生は冷静に避難誘導し、ケガをした生徒を他の先生と一緒に運び出した。
その後、軽傷の生徒は保健室へ、重傷の生徒は病院へ搬送された。
残りの生徒は体育館に集められ全校集会を開いた。
*****
その日は全校臨時休校になり、全員帰宅した。
帰り際に校舎を見渡してみた。
「見事に校庭側は全部割れてるね」
「だな」
そこに刑事さんが来た。
警察手帳を見せながら、「天人 六華だな?」と聞いてきた。
「はい、そうですけど?」
何かな…もしかしあたし疑われてる?
「窓が割れた瞬間、君はどこにいた?」
「廊下側の自分の席にいましたけど?」
「証明してくれる人はいるか?」
「俺が」
涼くんが間に入ってきた。
「君は?」
「こいつの彼氏です。教室の窓が割れた時、六華は席に座ってました!なにもしてません」
「そうか、わかった」
そこに物凄い勢いで先生が駆けてきた。
「刑事さん、私の生徒に何の用ですか?」
「あなたは?」
「この子たちの担任ですっ!」
多分刑事さんにはそう見えないと思います。
「そうですか、失礼しましたあまりに幼く見えたもので」
「ホントに失礼な方ですね!早く帰ってください!」
こう思う場面ではないのはわかってるけど、怒ってもかわいいのか、最強だな。
「わかりました、では」
刑事さんは帰っていった。
「あなたたち、大丈夫?何か変な事言われてない?」
「はい、涼くんがいてくれたから助かりました」
「俺も大丈夫です」
「それにしても2人はとってもお似合いねー羨ましいわー」
「そうですか?」
そうなら嬉しいな。
「じゃあ気を付けて帰ってくださいね」
「はい、また来週」
先生と別れて帰路についた。
「六華!待って」
優衣が駆けてきた。
「優衣、大丈夫?」
息切れするほど全力疾走してきたのか。
「大丈夫…だよ。今日ウチ来ていいよ」
「いいの?」
「うん、今日誰もいないから泊ってってほしい」
「うんわかった。準備して行くよ」
「わかった。涼くんは?」
「俺もいいの?」
「うん。夜リビングで寝てもらうことになるけどそれでもいいなら」
「…いや俺は良いや、また今度にするわ」
「そう、わかった」
「じゃあ六華、優衣また来週な」
「うん」
あたしたちは涼くんと別れた。
*****
夕方、あたしは準備をして優衣の家へ。
「お邪魔します」
「はい、どうぞ」
きれいな家だなー、さすが優衣だな。
「これから夕飯作るからリビングで待ってて」
そう言って、エプロンを着ける優衣。
エプロン良く似合うなー。
「うん、ありがとう」
優衣の手料理かー楽しみだな。
にしても作り出すの早い気がするけど、そんなにすごいの作ってるのかな?
「六華は苦手なものある?」
「特にないよー」
「わかった」
基本あたしは好き嫌いはないからなんでも食べられる。
何が出てきても驚かないよ?
「はい、お待たせ」
テーブルに並ぶのは見覚えの無い料理ばっかりだった。
ただハンバーグとソーセージだけはわかった、後は知らない。
「優衣これは?」
「えーっと、おかずはブルストとザワークラウトとアイスバイン、スープはアイントプフだよ」
え?なんか聞いたことあるものもあったような…
「ドイツ料理なんだけど、白飯に合うようにちょっと味付けを変えてみたんだよ」
なるほどドイツ料理か。
「いただきます」
「…どう?」
「うん!美味しい!」
「良かった…久しぶりに作ったから不安だったんだよ」
「そうだったんだ」
「ごちそうさまでした」
「はい、おそまつさまでした」
「片づけ手伝うよ」
「ありがとう」
2人で片づけをする。
自然と距離が近くなる、それにしても良いにおいだなー、シャンプーなのかな?
それとも優衣のにおい?
「どうしたの?」
「いいにおいだなーって思って…」
「そう?」
髪のにおいを嗅ぐ…シャンプーじゃなさそうだな…てことは優衣のにおいか!
どうも変態な六華でした。
「六華もいいにおい」
「そう?」
「うん」
そんなやり取りをしながら片づけを終わらせた。
「お風呂入ろっか」
「うん」
初めて同い年の女の子とお風呂に入るわけだが…なんかドキドキしてきた。
「六華、洗いっこしよ?」
「もちろん、ただ手つきがやらしくなっても許してね?」
「…もう、六華ったら…しょうがないなー」
あれ?優衣の体…いや振れちゃいけないな。
「六華って胸大きいね」
さらっと言うな、この子は。
「優衣も大きいじゃん、あたしよりあるんじゃない?」
「えー、そんなことないでしょ」
そんなことあります!
「優衣はなんであたしだったの?」
「んーとね、小学校の時の事覚えてるかな?」
「えーっと…ごめん覚えてない」
「そっか、やっぱりね。私、小学校の時に六華に助けてもらったことがあるの」
「だったっけ?言われてみればそんなこともあったような…」
あたしは小学校の時のことをほとんど覚えてない。
「それが一回目、で入学式の日が二回目。であの件以来、六華の事が気になって気になって
しょうがなかったの、あぁこれが恋なんだって思ったの」
「そっか、実はあたしも入学式の日にすごくかわいい子だなぁって思って、好きになっちゃったのよ」
「じゃあ、両想い?」
「そうだね。ところで体のそれのこと聞いてもいいかな?」
気になって思わず聞いてしまった。
「ん?あぁ、これか…今は話したくないかな…」
「そうか…聞いてごめんね」
「ううん、いいの。いつか話せるようになったら話すから」
「うん、わかった」
「私からも聞いていい?涼くんとどこまでいったの?」
「まだ…その…キスまで…」
「キスまでかーってまだそこなの?」
驚かれた。
「うん、だってあたしたちまだ中1だよ?まだ早いって、そういうこと」
「でも涼くんの家泊まったんでしょ?」
「泊まったよ?」
「じゃあ…いや聞かなくていいか。六華が準備出来てても涼くんが迫ってこないと意味ない…
じゃなくて六華から迫らないとダメでしょ!」
「やっぱり?」
「やっぱり?じゃないよ、次泊ることがあったら積極的にだよ?」
「わかった、積極的に、ね?」
「そう!積極的に」
なんかいつもと違うような…もしかしてこれが素?
「そろそろ出ようか」
「そうだね」
女の子同士楽しいお風呂タイムを過ごした。
お互いの髪を乾かして、優衣の部屋へ
「涼くん誘わなくてよかったの?」
「なんで?あたしは今回は優衣だけとデートしたいから誘わなかったんだよ」
もちろん次は涼くんも連れてくけど。
「そうか、それならしょうがないか」
「それにしても、明日楽しみだねー」
「そうだねー、じゃあ明日も早いし寝ようか」
「うん、おやすみ!」
「おやすみ。んっ…」
優衣が唇を差し出す。
「はい…ちゅっ!」
「んふふー、ありがと!」
*****
次の日
「おはよー」
「おはよ、六華。朝ごはん出来てるよ」
「うん、ありがと。顔洗ってくるね」
「はーい」
朝ごはんはなんだろうか。
「朝ごはん何?」
「私特製のフレンチトーストだよ」
「おー特製か、オリジナルレシピ?」
「そうだよー、はいどうぞ」
オリジナルレシピか今度教えてもらおうかな?
「いただきまーす」
「いただきます」
「優衣、これおいしいよー」
「そう?ありがと」
「もしかして優衣も量食べる人?」
「も、ってことは六華も?」
「そう3,4人前くらいは平気」
「私も!」
こんなとこに仲間がいたとは、しかもこの子。
「ごちそうさまー」
「おそまつさまでした」
「片づけ手伝うよ」
「じゃあ、お願い」
2人で食器を片づける。
「よし!着替えて出かけますか」
「おー!」
別々に着替えてリビングに集まる。
「あ…あなたホントに優衣さんですか」
「そ…そういう六華こそ…」
「ど…どうかな?」
「すごく、かわいいよ。私は?」
「何と言うか…その…写メ撮っていいですか?永久保存したい」
「ど…どうぞ」
3枚ほど撮らせてもらった。
「じゃあ出かけようか」
「おー」
玄関を出て、駅へ向かう。
優衣の家から駅まで歩きで10分くらいだそうだ。
「駅近いね。家からだと20分かかっちゃうな」
「そうなんだー。じゃあ電車乗ってどっか行くときは家泊まる?」
「いいの?」
「基本、家に親いないし」
「そうなの?」
優衣、大変なんだなー
「うん、だからいつでも来ていいよ」
「やったー!」
そんな会話をしてるうちに駅に着いた。
「えーっと、次は…」
「今10時ちょうどだから…8分だね」
「じゃあ、あたし飲み物買ってくるよ、何がいい?」
「私、ほうじ茶か緑茶」
「…渋いな。わかった」
飲み物を買って戻ると優衣はベンチに座って何やら思いつめた顔をしてた。
どうしたんだろう?
あたし何かしちゃったかな?
「優衣、お待たせ。どうしたの?」
「何でもないよ?」
「そう…悩み事あったら言ってね?」
「うん、ありがとう」
電車に揺られて、渋谷へ。
「あー、やっと着いたー」
「やっぱ、人多かったね」
「だねー。…行きたかったのってあそこ?」
「そう。六華に似合う服あると思うよ?」
「そうなの?だったら早く行こうよ!」
「そうだね」
なんかボーっとしてない?
「六華、これいいんじゃない?」
「そう?じゃあ試着してくるね」
試着室に入って着替える。
優衣なんかあったのかな?親、家に居ないって言ってたし…もしかして…考えすぎかな。
「お待たせ、どうかな?」
「うん、すっごくかわいい!」
「そう?じゃあ、買おうかな?」
「買うの!?ここのって高いんだよ?」
なんか驚かれた。
値段は…合計28000円か…まあいいか。
「でも、優衣が選んで、かわいいって言ってくれたものだから…ね?」
「そう?ならいいけど」
店を出て、次の目的地のカフェへ
「ここ?」
「そう、ここ」
「じゃあ、入りますか」
「うん、入ろっか」
店に入る。
すっごくおしゃれなカフェだなー、今度涼くん連れてこようかな?
「六華は何食べる?」
「んー、ボロネーゼとハンバーグかなぁ」
「じゃあ、私も同じのにしよっ」
「決定?」
「うん、決定で」
「すいませーん」
「ご注文をお伺いします」
「ボロネーゼ2つとハンバーグ単品で2つとアイスコーヒーを…2つお願いします」
「かしこまりました、少々お待ちください」
さて、聞くべきか否か。
「優衣…?」
「どうしたの?」
「…呼んでみただけ」
「そう?」
やっぱ聞けないな…
「こちらアイスコーヒーです」
「はい」
アイスコーヒーが来た。
「優衣、ミルクとガムシロは要る?」
「ううん、ブラックでいい」
「はいよー」
やっぱ気になるな
いっそ聞いてみようかな
「優衣…」
「お待たせしましたボロネーゼ2つとハンバーグ2つです。ご注文は以上でお揃いでしょうか?」
「はい」
「ではごゆっくりどうぞ」
なんつうタイミングだ!店員よ。
「六華、呼んだ?」
「い…いや?」
「そう、まあいいか。食べようか」
「そうだね…」
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
また聞きそびれたけどいいや。
「これ美味しいね」
「でしょ?」
「ごちそうさま」
会計を済ませて店を出た。
「美味しかったーまた行こうよ」
「いいよ、次は涼くん入れて3人で行こうよ」
「そうだねー」
「よーし!次は水族館に…」
「優衣、どうしたの?」
「い…いや、なんでも…」
優衣が何かをごまかすように早歩きになる。
なんだろうと思って振り向くと、そこには男女2人組が立っていた。