前世の記憶3
「こんにちは。お久しぶりです。」
誰もが見惚れるような爽やかな笑顔で挨拶をしてきたこの人は三条柊。
「…こんにちは。」
今日は顔合わせの日。
梓はずっと不安に思っていたことがあった。
ーーー三条柊はずっと姉美里のことが好きだったのではないか。
以前、パーティで熱い視線で美里のことを見ていたことを知っている。そう、愛しい人に見せる甘い表情でーー
梓は心配だった。
姉のことが好きだったのなら、彼にとって私と婚約することは、きっと本意でないはず…
仲良くしたいと思っていたけれど、大丈夫なのか、と…
(それに……。)
彼女にはさらなる不安がある。
(私は、少なからず彼に好意を抱いているのだわ…)
きっかけはいつか、分からない。しかし梓は彼のことをいつの間にか愛してしまっていたのだ。
(彼に、この想いを抱きながら、普通に接することができるのかしら…)
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ーー半年が経った
柊は、梓に変わらず優しく接してくれる。細やかな気配りやふとした拍子に見せる優しい笑顔。梓の恋は大きくなるばかりだった。
(いつか…いつか、好きって伝えたい…。)
梓にとって初めて芽生えた感情は冷静沈着で繊細な彼女を狂わせていった。
(今日、伝えよう。)
想いを伝えようとしたのだった。
ーーそれが最悪の記憶を紡ぐとは知らずに…