ルイスによる観察
ルイスside
クリスティナが友人であるノエル嬢と壁際へと向かった。
二人が歩き出すだけで周りの人々は自然と道をあけている。ティナとノエル嬢の高貴な雰囲気が他を魅力しているのだ。彼女たちはそのまま壁際へとたどり着いた。
(……壁際に立っているのに、人目を引きまくってる…。)
相も変わらずクリスティナがなると豪語している壁の花には、決してなれてはいない。
そうこう思っていると、彼女たちのそばに二つの人影が近づいていた。
ジュリア・クロフォード・ブランデル伯爵令嬢。
ストロベリーブロンドの艶やかな髪と透き通るような薄い翠の瞳。この国の女性の中では小柄で、庇護欲を掻き立てられる可愛いらしい令嬢で社交界でも人気がある。
そしてこのご令嬢もクリスティナと同じく、男性の誘いを受けないので有名だ。
ティナ程男性が苦手そうでも無さそうだが、彼女が男性の前でにこりと笑っているのをまるで見た事がない。ダンスも同じ相手と続けて踊ることはない。
なぜかは知らないが、とにかく、彼女も男性を苦手にしているっぽい。
そこが、ティナと通じるものがあったのだろう。
最近ではかなりティナと話していることが多いなと感じる。
もう一つの人影の正体はミラ・ブロード・カールソン侯爵令嬢。シャンデリアの光を閉じ込めたような髪と琥珀色の瞳。ジュリア嬢とは対照的にすらっと背が高く、可愛いらしいというより綺麗系でいつもシンプルな装いが多く物静かな令嬢だ。
このご令嬢もまた、男性の誘いはすぐ断るような令嬢だ。
クリスティナによればかなりの人見知りで、男性に話しかけられても何を話せばいいのか分からないし、緊張でおかしくなるから避けているらしい。
彼女を狙っている貴公子は多いというのに、ミラ嬢は避け続けているため彼らが報われるのは、、この調子だと当分ないだろう。
同じ男として、かなり同情する…
最近では、クリスティナを含め、ノエル嬢、ジュリア嬢、ミラ嬢はかなり仲が良く、一緒にいることが多い。現に、今もこうして四人で集まって談笑しているしな。
この四人は揃いも揃って男性が苦手という特典つきだが、男受けがいいのもまた共通している。
壁際に佇む四人。
普通なら華やかなパーティに埋もれてしまい誰一人として見向きもしない場所なのに。
なぜか、あの四人がいると会場中の視線が壁際へと移る。人々の視線を集めて離さない。
普通はあんなに見られてたら不快になるはずなんだけど、彼女たちはそんな視線に慣れているからなのか全く気にした素振りもない。
すでに夜会に参加している貴族達の間では彼女達のことを社交界の女神やら華やらとよばれてきている。
彼女たちに熱烈に近づきたい男は一人ひとりを花に例え口説きにかかっているらしい。
例えば、クリスティナには青薔薇、ノエル嬢には百合、ジュリア嬢にはカーネーション、ミラ嬢にはアマリリス…
誰が考えたか知らないが、クリスティナには青薔薇にちなんだ物が多く届けられる。恐らくティナ以外の令嬢もそうなのだろう。ティナに関して言えば、ティナは花の中では青薔薇が一番好きなのだ。青薔薇の贈り物をされても送り主の下心に気づきもしない。
ーーチラッ
僕の斜め後ろにいる男をチラ見する。
男は薔薇をかたどったネクタイピンをしていた。中央には小さな青い宝石が埋め込まれ、僕は一瞬にしてクリスティナを意識しているな、と感じた。
あそこにいる中年の脂ぎった小太りのオヤジは四人に絡みつくような視線を向けてから舐め回すようにクリスティナの胸元あたりを見ているようだ。
(…ゲスが。)
男はニヤつきながらその視線を外そうとせず、僕は思わず吐き気がする。
(あんな男に興味もたれるなんて、ティナも気の毒だな。)
せめてティナが男と気軽に話せればいいのだが。
ティナが男と話せれば、いい出会いも生まれるだろう。そしてあわよくば親しくなった男にティナをああいった視線から守って欲しいと思う。
僕もできるだけ庇ってはいるものの、あまりともにいすぎてはいけないからな。
父上や母上は僕以上にこういった社交の場では忙しくティナを構う余裕などない。
「……はぁー、早くティナの騎士が現れないかなぁ。」
おっと。
思わず声に出してしまった。
でもまぁ、大丈夫だろう。
なぜか大丈夫な気がする。近く、何かが起こりそうな、そんな感じ。
ま、これは僕の予感なんだけどね。
ティナを傷つける男は許さないけど。
自然と弧を描く口元を意志の力で
いつものように、顔に笑顔を貼り付けた。
ティナの幸せを願って。
僕は今日もクリスティナを見守るよ。
だって、もうすぐその役目も交代しないといけないような気がするからね。
今は期待が大きいけれど、喪失感が大きくなるのはそう遠くないかもしれない。
遅くてすみませんm(_ _)m
ルイスはシスコンでは、ない、はず……。←妹思いの病み属性笑




