表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不完全世界と魔法使いたち①~⑥  作者: 安路 海途
不完全世界と魔法使いたち① ~ハルと永遠の魔法使い~
3/205

一つめの事件  ― 1(教室) ―

 星ヶ丘(ほしがおか)小学校ではその日、臨時の全校集会が開かれることになっていた。

 朝礼後、体育館への移動がはじまるまでのその時間、クラスではめいめいが勝手に友達と話したり、ふざけあったりしている。

 いつもの休み時間と、同じだった。それはもちろん、宮藤晴のいる五年二組でも変わらない。教室では、生徒たちがわいわいと騒いでいた。

 壁には一週間の時間割りや、生徒の座席表、保健室からのお知らせなんかが貼られている。いくつかの紙は破れて、セロテープで補強されていた。座席表は席替えをしたのに、まだ古いままになっている。

 もっとも、子供たちのほとんどは自分の席についていなかったので、それはどっちにしろ役に立たなかった。数人で一人の席に集まって、何かを見せあっている生徒もいる。

 小野俊樹(おのとしき)が〝何か〟で自慢していたのは、その時のことだった。

「すげえだろ、これ」

 その時、小野俊樹が自慢していたのは、何かのカードについてだった。何とかという、その頃はやっていたアニメのトレーディングカードである。

 近くの席だったが、ハルは特にそういうものに興味はないので座ったままぼんやりしていた。窓の外はうららかな陽気で、ちょっと眠くなっている。ハルはあくびをかみころした。

 やがて担任の葉山美守(はやまみもり)がやって来て、クラスの全員が教室の外に並びはじめた。ほかのクラスでも同じように、廊下に列を作っている。

 ハルも、小野俊樹も、もちろんそれに従って外に出ていった。その時、ハルは俊樹が例のカードだか何だかを大切そうに箱の中にしまい、それに鍵をかけているのを見ている。

 ハルはそれを、別にどうとも思っていなかった。ずいぶん大げさだな、くらいに思って気にもしていない。

 それはそうだ――

 その時のハルは、自分がそのことである事件に巻き込まれるなんて、考えもしていなかったのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ