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 遥達は山肌の中腹にある長の巣穴の出入り口に出た。

「夜明け前か?」

 ラベンダー色の空に星影がかすかに残っている。

「うん、もうすぐ朝だよ。ヨウのねぐらは森の中なんだ。移動するよ、手を繋いで」

 ディーンは移動魔法を使って山のふもとの森近くにでた。そして龍の結界内に作ったという遥のねぐらに案内した。

「ここはまだドーン様の結界の中なんだ。人は風龍の森って呼んでる。ドーン様の家はあの山の中腹ね」

「あそこにいたのか」

 木々の合間から山肌が見える。しばらく歩くと開けたところに出た。目の前に石造りの大きくはないがかなり立派な家があった。窓にはガラスがはめてあり、戸はあきらかに一枚板の頑丈な物だった。ディノも人型になって家の前に立っていた。ディノは17、8ぐらいの青少年というやつだった。

「すごいでしょ?一度作ってみたかったんだ!」

「ああ、すごいな」

 致せり尽くせりな状況がドラゴンの義理堅さゆえなのか、単に暇つぶしの種にされているのか内心で首をひねった遥だった。

「中に着替えもおいてある」

 ディノが戸を開けて中へはいれと促す。

「ああ。悪いが少しだけ仮眠をとっていいか?戦闘もあったし、かれこれ20時間以上寝てないはずなんだ」

 遥の腕時計は止まらず働いていた。

「あ、そうか。2階にベットがあるの。僕も一緒に寝る!」

「「あ゛?」」

 ニコニコ笑って添い寝を言い出した龍の子をまじまじと見つめてしまった遥とディノだった。

「独りぼっちは寂いしいでしょ?僕の所為だし…」

「いやいやいや。お前さんの厚意はうれしいがな、もう添い寝してもらうような歳じゃない。それにだ。寝てる間にお前さんの変化がとけて、プチッとヤラレちまう訳にゃぁいかないんだ。遠慮しとくよ。お前さんはディノと一緒に親のところに一度帰っちゃどうだい?」

 遥の言葉にとたんに膨れっ面になったディーンだった。ディノは呆れたようにため息を吐いている。

「い・や・だもん!ちゃんとヨウの面倒をみるって母さんとも父さんとも約束したもん!変化もとけない~!ヨウの傍にいる~!」

 そういってディーンは遥の背中にべったりとへばりつく。遥は助け求めるようにディノをみた。ディノはそれに応えて、ディーンの首根っこを引っ付かんで引っ張るがタコ並みに引っ付くデイーンはなかなかはがれなかった。

「くすぐってみてくれ」

「わかった!」

ディーンの脇に手を差し込むディノはくすぐり始めるがディーンはピクリとも反応しない。

「…」

「「…だめか」」

 諦めた遥はディーンをはりつけたまま家の中に入る。中は綺麗な板張りの床になっており、奥に台所があった。大きな瓶がおいてあり、水が用意してあった。

「ディーン、水を飲むから離れてくれ」

 遥かの後ろにぴったり張り付いたままのディーンは首だけ横にふって自己主張する。

「泣く子と地頭には勝てないか…いや妖怪こなきじじいか?」

 柄杓で瓶の水を掬って喉をうるおしてから2階に向かう。相変わらず龍の子はしがみついたままだ。ディノはあきれ顔で二人の後ろをついてくる。

「そっちがあんたの寝室だ。おい、ディーン、いい加減ヨウから離れろ。もうガキじゃないって自分でいっただろ!?一人で寝ろよ!」

「ベ~。まだ子供だもん!ヨウと一緒に寝るんだ!」

「か~、都合の悪い時だけガキになりやがって!」

「ディノうっさい!あっちいけ!」

「ハア、勘弁してくれ。ディーン、お前さんが一緒でなきゃダメなら添い寝ぐらいしてやるさ。だが先にいっとくがケリ落としても知らんぞ」

「大丈夫!ヨウに引っ付いてるから」

「「さよで」」

 粘り勝ったディーンは遥から離れていそいそとベットに飛び込む。

「わ~、ふかふかだ~」

「はいはい」

 疲れきっていた遥は、着ていたものを脱ぎ捨ててさっさと布団の中に潜り込むと、すぐさま意識を手放した。

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