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「わあ、僕初めて見たかも!」
ディーンは目を丸くして現れた六人を見つめる。
「聖霊王か?」
どうやら見目の良さもそれのもつ力に比例しているのだろう。その麗しい姿は人にはないものだった。
「いかにも、新たな龍よ」
「あ゛!?」
どう言う冗談だと遥は風龍の長に視線を向ける。
「聖霊王達はそれぞれの属性の成龍の元に挨拶にくるが習わしでしての」
「いやそれはわかったが。わたしは人だ!しかも6人もいるじゃないか!全精霊ってことだろ!?」
ありえないだろうと完全拒絶状態の遥に王の一人が歩み出る。
「されど貴女様からは属性はわかりませぬが我らには懐かしく慕わしい龍のオーラが伝わって参りまする」
様々な青が彩り、形作る水の聖霊王が答える。
「や~め~て~く~れ~。まだ人間をやめたつもりはない」
「もちろん、人の気配もしている。それは間違いない。されど龍の気配もちゃんと備えておられる」
「我らが頭を垂れるに相応しい程度に」
「新しき龍よ、我らを受け入れたまえ」
うち揃って頭を下げる王達に遥は脱力感に襲われる。
「悪いな。わたしが自分の真名を与えるのは自分の伴侶にだけなんだ。それが内の家風なんでね」
遥は母と祖母に教わった母の実家の風習をたてにとんでもない申し出を断ろうとした。
「ほほお、古風なしきたりですの」
長の言葉にディーンが目を丸くして遥を見つめ首をかしげる。
「「「「「「しかし!こちらも古の契約故!」」」」」」
六人の王達の契約しなければどうなると思ってるのだと言わんばかりのオーラに遥は譲歩案を出した。
「名は最も古く簡単な呪だからな。通り名でかまわないだろ?わたしは龍でないのだし、精霊使いでもない。そんな巨大な力が手にはいったところで迷惑なだけだ。目指すところは小市民なんだから」
その言葉に六人は顔を見合わせる。
「まあ、別に支障はなかろう。仮契約でかまわぬだろうて。ぬし達もそれで満足せよ。こなた様はそう望んでおいでなのじゃから」
「されば、新しき龍よ。我らに仮名を与えてくれぬか?」
「真名での誓約が叶わぬならばせめて少しでも絆が深くなるように」
言いつのる聖霊王達に遥は仕方ないなとそれぞれを見やる。そして思い付くままに名を与える。
「私のネーミングセンスに文句言うなよ?光王は黄麒、闇王は黒麟、風王は西風、水王は翠蓮、土王は琥珀、火王は紅蓮。これで好いか?わたしはヨウだ。よろしく頼む」
六人は一斉に頭を下げて礼を尽くす。
「「「「「「我ら新たな龍に久しく尽くさんことを誓いましょう」」」」」」
「ほお、これは珍しい。そなた様との誓約の所為か、はたまた与えられた仮名の所為かの?王達の力がさらに強うなったようじゃの」
「そうみたいだな。なんか気配がさらに重くなった気がするな」
六人から感じる気配の重さにげんなりと遥は答える。
「マ、別に問題なかろう。さて、後なんぞ精霊について質問はあるかの?」
「ア~疑問に思ったらその場で誰かに聞くよ」
「ほほ、わかりました」
「我らも何かお手伝いすることはありますか?」
「いや、特にない。それぞれのすべきを果たしてくれ」
王達は何やら後ろ髪引かれるように礼をして去っていった。
「?」
「フォフォフォ。ずいぶんと懐かれましたな」
「そうなのか?」
「まるで、恋しい相手にすげなくされた者のようでしたの」
「そうか?しかし、あんな力使ってほしいとは思わんよ。一人に頼めば他の5人が焼きもちやきそうだし。はぁ」
遥は核弾頭を背負わされた気分でさらに肩を落とす。
「ワハハ、モテルのも考えものですのぉ」
豪快に笑っている長を横目に遥はため息を付いた。
「長~!まだ話はかかるんですか?」
ディノが現れた。
「おお、すまぬ。あとは魔法に付いてじゃが‥、どうせ時間もたっぷりあることじゃて、また明日にしますかのぉ?」
「ああ、そうだな。急ぐわけではないから」
遥はこの数時間でうけた予定外の精神疲労にぐったりしながら長の言葉を受け入れる。
「じゃあ、じゃあ、ヨウの新しいおうち!僕一生懸命つくったの!」
早く行こうと腕をひく龍の子に腕をひかれ、長にまた明日と暇を告げて穴を出た。




