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長は精霊について講議を始め、ディーンはその横で大人しく話を一緒に聞いている。
「まずはですのぉ、この光の粒が一番小さな精霊になりますの。そして精霊は六の属性に別けられますのじゃ」
そう言って長は六色の親指の先程のタンポポの綿毛のような光の粒を掌にのせてみせた。
「あのね、それぞれの色がそれぞれの属性を現してるの!」
デイーンがニコニコと口をはさんでくる。
「ア~、この赤いのが火で、青いのが水か?」
遥が、それぞれを指差して確認する。
「そうそう。黄色が光で黒が闇。白が風で茶色が土ね」
遥は認識にあまり相違がないことにほっとする。時に色に関するイメージは住む環境によって変ってくる。遥の周りに居た小さな光の粒達は自分達の属性を主張するかのようにそれぞれの色に分かれてみせる。
「そして、それぞれの性質の中で最も力をもつ者が聖霊王と呼ばれておりますのじゃ」
「ふーん」
「で、精霊の力と言うのはそれの生命力と同じ物でしての、生命力が大きいほど力も大きい。そして、形も人間の大人に近くなるのですじゃ。寿命はですのぉ、これは一概にいくつと言えませぬ。この小さきモノたちは儚いですが、この中に力をつけて人形に変化する者が出て参りますのじゃ。力を使うことによって精霊が育ち、そして力の強い者ほど長く生きることになりますのじゃ」
「ん?そーれはつまり、精霊も修行によって成長すると言っていいのか?」
「そのようなものですかの。精霊の力、つまり命を使うことによってさらに力を得るようになりますの」
「ふむふむ」
「ここまでよろしいか?」
なぜだかディーンまで頷いている。
「ん、確認。精霊の力はその姿形を見ればわかるわけだな。人の大人に近い容姿であればあるほど力は強い。けれどもそれの歳が姿と相応しているとはかぎらない。力を得てきたスピードがそれぞれちがうってことで」
「いかさま」
「そして、力がある者ほど長生きをすると」
長はそのとおりとこくこくと頷く。
「んじゃ、次は精霊使いだな。この世界の職業のひとつってのは何となくわかる。精霊の持つ力を使って色々やるわけだな」
遥は自分の世界にあったゲームや物語の世界を思い浮かべる。
「まず精霊使いになるには精霊が見えねばなりませぬ」
「うん」
「そして精霊と誓約をかわさねばなりませぬ」
「どんな?」
「500年前ならば、自身が見える精霊と真名をかわすことで誓約は成り立ちましたがの。最近では精霊の真名を聞き出し、強制的に誓約を結ぶのが主流ですの」
長の簡潔な言葉から遥はそこにある暗く深い溝を読み取る。
「つまり、はるか昔は友好関係にあったが、500年の間に関係は悪化。精霊が姿を見せなくなりつつあるわけだ。そりゃそうだな、精霊の力ってのは精霊の命なわけだ。それを使うわけだから少しならかまわないだろうが、目一杯使われた日にゃだわな。それに必ずしも精霊が望むような力の使い方をするやつばかりではなかったと」
「そなた様は聡くて助かりますの」
龍の長は髭をしごきながらのほほんと笑っている。
「誓約を結ぶのにも技術がいるわけだ。となると養成機関が今はあるのか?」
「いかさま、精霊使いの塔と言うのがありますの」
「ふーん。で、精霊使いの数は?最も力のある精霊使いとはどういうやつだ?」
「さよう、1000人強と言ったところですな。現在もっとも力ある精霊使いは北の塔の長で、光と闇の精霊以外の精霊と誓約を結んでいますの。火と風は、人で言うなら十代の後半、水は十代前半、土は十にも満たぬ感じですかの。残りの精霊使いは多くても二精がよいところでしょうな。だいたいは一精がついて、それも十にも満たぬ形の物が多いですの」
「なんだ、かなり人間と精霊の仲は悪いんじゃないか?」
思ったよりも少ない人数、そして精霊の成長の低さに首を傾げる遥に、長は首を横に振ってから答える。
「いや、そもそも人族と精霊には相性と言うものがありましての、人族には精霊が全て見えるわけではないのですじゃ。それぞれに相性のよい精霊が見えるわけですな」
「れ?じゃあ全部見えてるわたしはどうなるんだ?」
碌でもない結末を迎えそうな結論にたどり着いた遥が顔をしかめる。
「ま、人としては希有、龍なら当たり前というところですな。ちなみに、その小さな光の粒の段階の精霊は普通、人にはみえませんの」
「自分の種が怪しくなってくるようなことを淡々と言わんでくれ」
そうでなくても遥かの中には疑惑の種が眠っているのだ。
「ほほ、そのうち変化されるかもですぞ?」
「……」
呵々と笑う長に遥は胡乱な視線を向ける。そんな長と遥をディーンは目を丸くして交互に見つめている。
「冗談ですじゃ」
思わずその場にへたり込んだ遥だった。
「かけらも笑えん」
「で、いきなりですがの、そなた様に会いたいと申しておるものが来ておりましての」
遥は立ち上がって首をかしげる。ここでの知り合いは風龍の一族ぐらいだからだ。
「会いたい?」
「ほほ、まあ会えばわかりますがの。お客人に挨拶を」
長のその言葉に現れたのはそれぞれの精の色をまとった六人の力溢れる存在だった。




