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 小高い丘の上から街の城壁が見える。後ろを向けば平原の先に深く黒い森が続きその先に山脈が連なる。遥はあの山の中腹からディノの転移によってここまで一瞬で連れてこられたのだ。

「…便利なもんだな。転移魔法というのはどこにでもいけるのか?」

「一度行った場所ならな。魔力が要るがそこは龍だからなぁ」

「なるほど。人の身には難しいか」

「ヨウなら大丈夫だよ!」

「…そうか」

 ディーンの言葉に人外認定を受けたようで少なからずダメージを受けた遥だった。

「ヨウ!行こう!」

「ああ」

 丘の上から街道に降り、街に向けてのんびりと歩き出す三人。その周りを人の目には映らない光の粒がふわふわと取り囲む。

 ほどほどに進んだころ、泥濘んだ場所で脱輪している荷馬車に行き当たった。農夫らしい男が一人でなんとかしようとあがいているが、どっぷりハマってしまっている。

「お手伝いしましょうか!」

「あ、すまねぇ。仲間が一人街に助けを呼びに行っとるんだが」

「これはかなり嵌ってしまってますねぇ。前で馬をお願いしてよろしいですか?私達三人で後ろから押してみましょう」

「ほぇ、そんな細こいので大丈夫かぁ?」

「まかせて!」

 ニコニコ笑うディーンにほっこりする農夫。

「そいじゃぁ、頼もうかい」

 農夫は馬のところに行き、三人はそれぞれの位置についた。

「二人はあまり力を入れすぎんようにな」

 遥は二人が龍であることを一応考慮して、注意をしておく。

「「わかった」」

「それじゃ押しますよ!せーのっ!」

「踏ん張れ〜」

「「「ヨッ!」」」

 さすが龍二頭といったところか、あっさり荷馬車が溝から抜け出る。

「ほおお!すごいな!」

 そこに農夫と衛兵らしい人物の二人乗り騎馬と魔法使いのような格好の騎馬が街の方角からやってきた。

「お〜い!イサク〜」

 騎馬の前に乗る農夫から声がかかる。

「あ、ヨハーン!」

「大丈夫か!」

 馬からヨハンという農夫をおろし、街の衛兵らしき男がイサクに近づく。

「あ、衛士さん!旅の人が手伝ってくれて、なんとか出られましたよ」

「そうか!そりゃ良かった。旅の方もありがとう」

「いえいえ、困ったときはお互い様ですから」

「どーいたしまして!」

「気にすんな」

「兄ちゃん達、あんがとな。よかったらせめーけど、馬車に乗んな。街まで乗っけてくぞ」

 イサクがニコニコ笑いながら遥達に乗っていくようすすめる。

「いいですか?ではお言葉に甘えて」

「おっと、その前に道直すの見てけ。珍しいもんが見れるぞ」

「「「?」」」

「ぬかるみはどうだ?」

「早く直さねーとまた誰かが嵌まると思うぞ」

 ヨハンは困り顔になって衛兵に訴える。

「よし!イシュ!やってくれ」

 イシュと呼ばれた男が遥達の横を抜けてぬかるみの方に行くが、その肩にいた淡い姿の精霊らしき幼子が目を丸くして遥達をガン見する。遥は静かに指を口に当てて騒がないよう伝えるとこっくりとその精霊は頷いた。

「土精」

 イシュの言葉に精霊の姿がはっきりと現れる。

「ほら見ろ、兄ちゃん達!精霊だ!滅多にお目にかかれ無いんだぜ」

「なるほど。きれいなもんだな」

 遥の褒め言葉にピクリと反応する土の精霊の幼子。

「まずったか?」

「ヨウ?」

 ボソリとつぶやく遥にディーンが首を傾げる。

「ディーン、土の精霊だそうだ。可愛いな」

「うん?」

 何も言うなという遥の視線を感じ取ってディーンはよくわからないまま土の精霊を見る。可愛いと褒められた土の精霊の幼子は見るからにやる気に満ち溢れはじめた。

「道を整地してくれ」

 イシュがそう言うと土精はキラキラと鱗粉を散らすかのようにその力を振りまいて泥濘んでいた場所をあっという間に整地した。

「助かった。戻れ土精」

 イシュの意に反して土精はフラフラと遥の方に飛んでいき、その顔にくっついた。

「やっぱりか……」

 問題を起こすのが自分になろうとは思ってなかった遥だった。

「なっ!?」

「「「ええ!?」」」

「こら!土精!ヨウにくっつくな!」

「離れろ土精」

 龍二頭の言葉にいやいやと首を振る土精。

「すまん、土精。降りてくれ。前が見えん」

 遥はそう言うと土精を顔から引き剥がす。

「イシュ殿と言ったか?お返しする」

 そう言って、遥が土精を差し出すとイシュは奮然と駆け寄って土精を奪い返した。

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