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 長はあっさり、遥が街に行く事を薦めた。いったんは必要なものを街でそろえ、ディーン達が造った家で3ヶ月ほど公用語の訓練をし、詳しく魔法と精霊の事について学ぶ事になった。言葉がある程度使える様になったら、街で暮らせばいいだろうという話に落ち着いた。

「さて、ヨウ殿。これがとりあえず翻訳の役目を果たす指輪じゃ。右手の中指にはめてみてもらえんかの」

 あっさりした金の指輪を、遥はいわれるままはめる。

「オッホン!『はじめましてごきげんいかが?』」

 同時通訳になっているらしく、タイムラグなく長の声が二重に聞こえる。

「はじめまして。まずまずです」

 遥の話す言葉は勝手に別の音になって発声されていた。内心で、試すにしても、もう少しましな内容があるだろうにと突っ込みをいれながら遥は指輪を外した。

「長殿、質問なんだが、わたしは自身の言語をしゃべっているが、口からは別の音が出ている。口の形と音が合ってないと思うんだが、それは大丈夫なのか?」

「それは大丈夫じゃ。相手には音にあった、口の動きをしておるように見えているからの。目くらましの魔法も同時に稼働しておるのじゃ」

 ソロモンリングよりもはるかに高性能な指輪に遥は大したもんだと呟く。

「さて、お次ぎは着る物かの」

 長はそういって首を傾げる。

「ああ、こちらは性差や年齢によって服の区別が、はっきりしているのか?」

 所変われば品変わる。下手をすれば捕らえられたりする事もあり得る。

「だいたいはある程度差異のある格好はしておるかのう。ふむ、地域によってその差はまちまちだからの。どうしようかの?」

 人化しなければ服など着る必要のない龍に聞いたのが間違いだったかと遥は苦笑を浮かべる。

「確かに一言で説明はつかんな。百聞は一見に如かずという所だな。ならば長殿、傭兵らしい格好で、わたしの見た目に近い民族の衣装の男物を用意してもらえるだろうか?」

 長は遥の言葉に頷きしばし考えた後、指をはじいた。

「これが一番違和感がないと思うがの。キルフェンの近くにあるゴセン島出身の傭兵の男達がよく着ている物じゃ。かの島の男達は、傭兵を生業にする者が多いのでな、まあ、これから行くレステリアンにもたまに訪れる者がおるから、街の者には違和感なく、かといって、そうそうゴセン島の者とはち合わせる事もなかろう」

「わかった」

「はい、鏡!」

そういってディーンが姿見を宙から取り出す。そこに黒いスタンドカラーのシャツに、厚手のゆとりのある黒いズボンの裾を革の長靴中にたくし込み、額に幾何学模様の縫い取りを施した布を巻いた遥の姿が映し出されていた。

「我ながらこういう服を着ると女に見えないのはなんともはやだな。ところで長殿、わたしが着ていた物は?」

「ほれここに」

 さっきまで着ていた服は、きちんとたたまれて遥の目の前に浮かんでいた。パンツまで。

「…。下着まで、わざわざ変えていただいてありがとうというべきなのか、やり過ぎだと怒るべきなのか…。はあ、毒食わば皿までか?」

 遥は服の上にのっているトレンチナイフをつかんで長靴を留めている革ひもを緩めてナイフを装着する。そしてもう一つ、ベレッタM8000通称クーガーをつかむ。

「得物はそれかの?」

「いや、まあ、そうなんだが…この世界に存在するかどうかがわからんからな」

このファンタジックな世界に、銃火器が存在するのかと首をひねった遥だった。

「存在しませんの」

「どういった使い方をするんだ?」

 長ははっきりと存在を否定し、ディノが興味津々で聞いてくる。

「こんな所で使ったら、残響ひどくて耳が阿呆になるから絶対使わん」

洞窟の中でサイレンサーも使わずぶっ放せばどうなるかなど言うまでもない。目の前の人の(龍か?)いいのを驚かすのは面白いだろうが、遥自身の鼓膜を提供してまでやるほどの事ではないのだ。

「外ならいいの?じゃ、外行こう!」

ディーンが転移魔法を展開し、あっという間に森の中に移る。周りの期待に満ちた目に、遥はため息を吐く。

「はあ。風精、これもってあの樹の辺りに浮かんでな」

そういって遥は落ちていた樹の枝を風精に渡し20mほど離れた位置を指差す。

『こうか~?』

空中で頭の上に上段の構えのような格好で枝をもち、風精が浮かぶ。

「ああ、じっとしてろよ。すぐ済む」

 遥は安全装置を外して枝の中程に狙いを付けてためらう事なく1発撃った。枝は、あっさりと中程で打ち抜かれ、上側がはじけ飛ぶ。

「「「『!』」」」

 枝の残りを放り投げた風精が一気に遥のもとに飛んでくる。

『ななななな!』

「心配するな。殺すときはきちんと急所に当てる」

『!』

金魚のように口をぱくぱくさせ言葉もない風精を無視して長老はひげをしごきながら言う。

「ふむ。さすがにそれはこの世界にあっては困りますのう」

「そうか。なら、この世界の主要な武器で使えそうなのを、見繕うしかないな」

一同はまた長の巣へと戻った。

この話でアルファポリス様で発行していた分が終了となります。今週末にはあちらで公開している分を削除しようと思います。よろしくお願いします。

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