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足の対価は  作者: sy
15/16

第15話

妻を助けて息子を切り捨てるか。

息子を生きながらえさせて妻を生き地獄に取り残すか。

俺に残された選択肢はこの2つ。

きっとあいつならばどうあれ瞬を生かそうとするだろう。

自分の腹を痛めて産んだ子の命を踏み台に生きたいと願うことは万に一つもない。

元来母親とはそういうものだ。

しかし俺は、この父親は違う。

自分の血を分けた息子が「吸血鬼」なんぞになり果てて、俺が人生でただ1度だけ何のしがらみもなく愛する事の出来た妻を苦しめながら生きている。そんな事態を黙認できるほど俺は寛容じゃない。

瞬から「吸血鬼」を取り除き、あくまで人として死なせてやる。そうして妻を助ける。

そうすればすべて元通りだ。何もかもやりなおそう。

その為に俺はここまで来たのだから。


「あらら、本当にこの子連れてきちゃうなんて」

毎度毎度神経を逆撫でるような声色をするイリエがるんるんと楽しげに1人の眠っている女の子、俺の患者を見ている。

この女は狂気そのものだ。

「うるさい、早く血清を寄越せ」

「そう慌てないでくださいな先生、ちゃあんとお渡ししますって」

そう言いながらイリエは部屋を出て行こうとしている。

「どこへ行く気だ?」

「血清を取りに行くんですよっ、ちょっと”特殊な保存”をしているものでして」

「特殊?」

「赤土先生、興味あります?」

興味はない。しかしこの女が未だに信用できない以上デタラメなものを渡されて気付かずにぬか喜びさせられるのは黙っていられない。俺はその血清を手に入れる為にこの数年間足掻いてきたのだ。

「拝見させて貰おう」

どうせならこの眼で見定めてやらねばなるまい。


この女の指揮下の連中が拠点としている建物の車庫、そこには武装装甲車3台に改造済みの軽乗用車4台が駐車されていた。何とも物々しい光景だ。

2人の吸血鬼と相対するのにこれだけの用意をしてくるとは。

それほど吸血鬼と言うものが恐ろしいと感じているのかそれとも……

そんな物々しい車両群の隅に1台の2トントラックが見えた。その荷台には有名運送会社の名前が書かれている。事もあろうにイリエはそのトラックを指さし

「あそこに血清を保存してますの」

と告げた。何の冗談だ。

「一般の運送会社に輸送を任せるような代物ではないだろう」

「もちろんカモフラージュですよ、あちら側にも使用料として金を掴ませてありますから

全くふざけた女だ。運転席を良く見るとその運送会社の制服を着た運転手が待機している。なるほどあの運転手もイリエの手のものらしい。

「ばれないように超拘っていまして」

イリエのウインクがさらに苛立ちを募らせる。

トラックの傍までやってくるとイリエはコンテナを開け自室のように上がり込んだ。

「散らかってますけどおかまいなくどうぞぉ」

なんと位置付けをすればいいか分からないが物置、倉庫と言うより「移動式研究室」の言い方が正しいような光景だった。荷台の左に並べて置かれているパソコンの液晶画面が3つほど荷台の中を照らし、その反対側の棚には書類が溢れている。ちゃんとした空調さえあれば完璧だろう。

トラックの荷台に足を踏み入れるのに挨拶をするのはなんだか違和感を覚えるが

「邪魔するぞ」

と一言かけてから上がった。

しかし上がってから気付いたが周りに血清のようなものは見当たらない。

「おい、血清はどこにある」

「ちょっと待ってくださいねぇ、今ご用意しますから」

そう言うとパソコンが乗ったデスクの下からどうやらクーラーボックスのようなものを取りだした。

ホームセンターなどで売っていそうな一般的なやつだ。これもカムフラージュのつもりだろうか?

「目立たないとはいえこればかりは中身見られたら捕まっちゃいそうでしてねぇ」

そのクーラーボックスを開けると中はドライアイスがぎっしり詰まっていた。イリエは厚手の手袋をしてそのドライアイスを一個一個取り除いて行く。

「血清を冷凍保存しているのか?」

「まー血清の「元」をですけど、こうしないと腐っちゃいますからね」

腐る? どういうことだ?

「そろそろかなー……あ! あったあった」

そうしてドライアイスの中からビニールに包まれた何かが取り出された。

大きさは2ℓほどのペットボトル飲料ほど、長らくドライアイスの中で冷やされていた為か白い煙のようなものがその何かからも出ている。

「申し訳ないですけど”すぐに”は差しあげられませんわ、解凍の時間を頂けます?」

「解凍? どういうことだ」

「ですからぁ……」

イリエはそのビニール袋の包装を取り中のものを露出させた。

それは腕だった。見紛うことない人の腕。肘から切断された腕。

掌の指を見る限り右手だろう。

「それは……なんだ?」

「吸血鬼”サウス”の右手だったものです。血清はこの中にありますよ」

この時に見せたイリエの表情が今まで見た中で一番おぞましいものに思えた。



「ん? あれ?」

渦原が意識を取り戻した時、洋館には誰もいなかった。

「ここは……あれ? 瞬は!?」

「大きい声出すんじゃねェよやまかしい」

後ろから聞こえたのはいきなりやってきた強面のおっさん。

確か南野とか言ったっけ?

「あ……ひぃ!」

ちょっと前の事を思い出した。このおっさんに睨まれてなんでか知らないけど俺は……

「ンな人を見てビビってんなコノヤロー、ムカつくガキだな」

南野は洋館の椅子に踏ん反り返って携帯を弄っていた。どうやら何かしてくると言う事は無いらしい。

「あ、あの……瞬は?」

「行っちまったよ。”作戦”だとな。俺たちはここで待機してろってよ。生意気な事を言うよな」

じゃあ瞬は1人であいつらに立ち向かうつもりなのか?

「勝てるわけねぇじゃねぇか!?」

「知るか馬鹿野郎」

「あんた止めなかったのかよ!?」

そう叫ぶとまた南野は渦原の目を見た。

それだけで渦原は怯む。さっきと同じことをされると思ったのだ。

「まずテメェの心配をしろや。ほれ、こっちはこっちで来るみてぇだ」

渦原の耳に何台かの車両のエンジン音が聞こえた。

yと比べsは暇人だから投稿が早いわけではありません。今回は前もって「とりあえずそう言う流れで言っときますか」と用意できるとこを事前に書いていただけです。

最近はセルフパブリッシングにかまけて全く浮上してませんでした。いやぁお久しぶりです。


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