第11話
とりあえずスミレの家の前に辿り着いた。
しかし
「うわぁ……手回しはやいっすね」
スミレの家の前には黒服の背の高い男性が2人。
研究家の手のものだと考えるのが一番自然か。
「わ、私の家にまで……」
「瀬良先輩だけなら帰れるかもしれませんよ?」
「どうやって? 這って?」
「あー……」
現在地からスミレの家まで約20メートル。
這って帰宅は物理的には可能だが近くに瞬がいる事が悟られかねない。
「仕方ないっすね……あんまり一般の人あそこに連れて行きたくないんですけど」
「宛てがあるの?」
「ちょっと秘密基地が」
「ってわけで逃しちゃいました。ごめんなさいねェ」
『その割には上機嫌だな堺君』
「ん~? まぁ万策尽きたわけじゃないから」
『だろうな、君がそういう軽口を叩いている間はまだまだ作戦があるって時だ』
「分かってるじゃない!」
今スミレと瞬がいる場所を単語3つで説明するとこうなる。
山奥、洋館、廃墟。
「うわぁ……こんなお化け屋敷があったなんて」
奇しくも「吸血鬼が住んでそうな」洋館だった。
「戦時中にエラい政治家さんが住んでたらしいっす。詳しい事はわかんないっすけど」
”ギィィ”と重い音を立てて正面から洋館に入る。
スミレをお姫様だっこで入る瞬。構図を考えるとファンタジーのようだ。
「王子様気取りで何をやってるかと思えば……ウチの患者に何吹きこんだ、瞬」
そこにいたのはスミレの主治医だった。
「赤土先生?」
「やっぱりここにいたか、親父」
「ちょっとしたツテでな、吸血鬼研究家が大騒ぎしてるって聞いて街中もところどころ騒がしかったから大方お前だろと思ってここに先回りしておいた。瀬良さんを連れてきたのは予想外だったがな」
スミレからすれば話が全然見えない。
と言うより赤土先生今「吸血鬼研究家」って言った?
ということは瞬が吸血鬼だってことも知っているのか?
スミレを一人置いてけぼりにして親子の重苦しい会話は途切れない。
「とりあえずここならいくら暴れようが何も被害は無い。もうじきもう一人知り合いの吸血鬼が来るからソイツとここで金髪の女の人の尖兵を抑える。親父はその研究家の元締めに止めさせるよう言ってくれ」
「簡単に言うんじゃねーよ……ったく」
とは言いながら仕方ないと言った様子で頷く赤土先生。
なるほど逃げるより籠城して戦おうと言う訳だ。
それで赤土先生、つまり「大人」に交渉して事を収めて貰おうというのが瞬のプランらしい。
「あと親父、瀬良先輩の保護も頼んでいいか?」
「断る」
即答で断られた。流石にスミレも驚く。
吸血鬼と研究家が戦うかもしれないこの場に私は置き去りですか?
「俺がヘマして人質に取られたら瀬良さんも巻き添えだろうが、考えろバカ」
「何言ってんだ親父! ここの方が危ないから避難させた方が良いに決まってんだろ」
「そもそもだ!」
普段の赤土先生からは想像もできないような大声だ。スミレもつい「ビクッ」と身体が震えた。
「どうせお前瀬良さんに「吸血鬼になれば歩けるようになる」とか言ってそそのかしてんだろ? そのせいで巻き込んどいてヤバくなったら人任せってか、良い身分だな」
「親父……」
「お前のケジメくらいお前でつけられるようになりやがれ」
そう言って赤土先生は立ち去ってしまった。
え? 私このまま?
Sです。半年ぶりです。
kindle出版と就活にかまけて超長い間サボってました。
挙句こっちの設定とかをすっかし忘れてたってんですホントしょうもねぇw
とりあえずまたよろしゅう