再会
少年は一旦短剣を鞘に納め、姫に差し出す。
「姫君。貴女にこれを持っていてほしいと、言いましたのに」
それが答えだった。
「こ、との、きしっ……ことのきし!!」
「わ、ひ、姫君?」
ひしっと抱きついてきた姫に、今度は少年が動揺する。とりあえず短剣が姫に当たらないよう腰に戻した。空いた手をそっと姫の肩に置くと、その肩は小刻みに震えている。
「ずっと……ずっと、貴方に会いたかったのですよ、琴の騎士」
「姫君……」
姫は泣いていた。
「王国で、貴方の琴の音を初めて聴いたときから、ずっと貴方に会ってみたかった。やっと、会えた」
「僕もですよ」
少年の囁きに、姫が潤んだ瞳を上げる。それを夜空色の瞳で優しく見つめ返した。
「僕はあの頃、目を患っておりましてね。こうして貴女の姿を映すことができるのが、とても嬉しい」
「……目も?」
姫がさりげなく放たれた事実を確認する。
「先程も言ったでしょう? 僕は"ことのきし"なんです」
「それは王国で琴を弾いていた騎士という意味では?」
「それもありますがね。少し長い話になります。聞いてくださいますか?」
姫が頷くと、少年は窓辺に移動し、座った。姫もそれに倣う。
「古い伝承の"ことのきし"には続きがあります」
少年は遠くを見、語り始めた。




