塔の建設と集落との出会い
最近、城下から人がよく来る。人死にの報告だ。最近多い。
しかも、原因不明の不審死ばかり。夕刻に多い。何事だろうか。
姫様が会いに来た。琴の騎士を探しているという。夕刻の儀でも会えずじまいなのだとか。
姫様と一緒に探したいところだが、来訪者が多い。門番の役目をおざなりにするわけにもいかない。
とはいえ、琴の騎士のことが気になるのも確か。隙を見て探そう。
今日も人死にの報告が殺到した。忙しい。
王から呼び出された。西方の森へ行くようにとの任を受ける。
西の海の近くに物見塔を建てるのだとか。要はその下見だ。
最近は人死にの報告ばかりで気が滅入っていた。他の門番には悪いが、下見ついでに羽根を伸ばしてこよう。西の海の夕暮れは、特に美しいと聞く。
森は害獣もなく、天候も穏やかで、作業には適しているようだ。
どれくらいの塔を建てるのかは聞いていないが、物見塔を建てるには充分な広さの場所がある。これなら木を切り倒すこともなく、建設できるだろう。
仄かに香る潮風が心地よい。ここに塔ができたなら、さぞや気持ちのいいことだろう。
その日の晩は近くの集落に泊めさせてもらった。
王に下見の報告をした。近くに集落があることを話すと、そこの住人に協力を仰ぎ、建設を開始するよう命ぜられた。塔ができるまでは門番よりもそちらに集中することになりそうだ。
集落の者たちは気前よく応じてくれた。小さいながらも集落全体で協力しあって生きているためか、作業能率がいい。
塔の高さはそれなりだが、さして大きいわけでもないので、一年かそこらで完成するかもしれない。
塔建設が始まってから、ほとんど集落に住んでいるような感じだ。住人とはかなり打ち解けた。子どもたちは王国の話を聞きたがり、仮宿を訪ねてくる。
そんな子どもたちに話をしながら、祖国に思いを馳せる。
あれから人死には増えていないだろうか。




