切り取りとかハードル高いよね
森を抜けると少し先に石壁で囲われた町が見えた。あれがアルテか。見えている建物はファンタジー映画に似てるな。海外旅行もした事ないし、ちょっとテンションあがるわぁ。
近くまで行くと門の前に少し列ができていた。検問かなんかかな?うーん大丈夫か?
《冒険者になりにきたと言えば問題無く入れると思います。》
ふぁ⁉︎ フィニの声がした。スマホ本体からではなく、頭の中で。何コレ新感覚。
《私の機能の1つである[思考会話]です。マスターの考えを読み取り、音声を出さずにに直接脳へ語りかけられます。私との会話は目立ちますので人前ではこちらが良いかと思います。》
マジか……。そんな機能まであるのかフィニたん……。大まかな説明しか聞いてないからまだまだ驚かされる気がするんだが。
《ご期待に添えられる様精進します》
お、おう。何をどう精進するのかわからないけど。話戻すけどこのまま検問に行って大丈夫なんだな?
《はい。ステータスを鑑定するアイテムがありますが、マスターには犯罪歴は無いので問題ありません。》
え、犯罪歴ってステータスに出るの?
《罪によって殺人者、盗賊、詐欺師などの称号が追加されます。》
嫌な称号だな。まぁなら大丈夫だな。ありがとう。フィニにお礼を言って、早速列に並び、すぐ俺の番になった。門番は槍を片手に革っぽい素材でできている鎧を着ている。40代くらいのがっしりしたおじさんだ。
「よう。初めて見る顔だな。アルテは初めてかい? 」
「あ、はい。冒険者になりたくてきました。」
「そうかそうか! 知っててきたんだろうが、この街は冒険者にとってスタート地点になる事が多いから何かと便利だぞ。」
フィニの言った通りまさに始まりの街みたいな感じなんだな。メティルアも気が利きますなぁ。
「だが、犯罪者を入れるわけにもいかんからな。コレに『ステータス』と唱えてくれ。」
出されたのは四角い鏡の板だ。
「ん? 初めてみるのか? コレはステータス偽装防止の力がある魔道具だ。まぁ、名前、性別、称号、レベル、種族のみの表示だがな。大概の街にはあるぞ。」
「そうなんですね。何分田舎から出てきたなので知りませんでした。」
田舎ってこういう時は便利な言葉だよね。大概仕方ないみたいな感じになる。
「そうなのか! ならこの街で一旗あげて立派になっちまえ! 」
ワハハと笑いながら門番さんはそう言った。いい人やぁ。
「んじゃ、ステータス見せてくれ。」
「はい。『ステータス』」
鏡に俺のステータスが表示された。
「犯罪歴はないな。んん?レベル1だったのか! 冒険者は大変だからな。死ぬんじゃねーぞ?冒険者がんばりな! 」
「は、はい。頑張ります。」
再び大笑いしながら俺を街へ送り出してくれた。やっぱいい人。
でも、やっぱ死ぬ可能性あるのかぁ。冒険者やめようかなぁ。
街はかなり賑わっている。大通りに様々
な露店が並んでいる。なんかめっちゃいい匂いがする! なんか食べよう! 異世界の食べ物めっちゃ興味ある‼︎
なんて考えて食べ物の露店に行こうとしたらフィニが一言。
《マスター。所持金がありません》
そうだったぁぁあ! 金無いんだ! ん? て事は、食べ物もだけどどっかに泊まったりもできないんじゃね⁉︎ どうしよう……フリーターからホームレスにジョブチェンジしちゃったよ。
《ご安心ください。お金がないなら稼げばいいのです》
え⁉︎ フィニたん何かいい案でもあるの⁉︎ 教えて‼︎
《冒険者になればすぐにでもお金が手に入ります。》
うん。予想はしてたよ。そうなるよねー。やっぱ冒険者になるしかないのね。てか、メティルアわかっててこの服装にしたんじゃね? てか、冒険者になるにはどしたらいいの?
《冒険者ギルドで登録すれば大丈夫です。冒険者にはランクにあった仕事が受けられるので簡単なものならすぐにでも稼げます。》
なるほど。じゃあ、まずはギルドに向かうか。道順をアプリに表示よろしく。
《畏まりました。》
地図に街が表示され、現在地からギルドまでの道が出てきて、歩いて5分くらいでついた。
ギルドは石レンガで出来ていて中々の大きさだ。中に入ると酒場と一緒になっているのか飲みながら騒いでる人や食事をしている人もいる。少し奥にカウンターがあり、受付嬢さんが座っている。小柄で可愛らしい顔つきしている。受付嬢ってだけでポイント高いのにヤバイな。とにかく、冒険者登録しないと。
「いらっしゃいませ!どういったご用件ですか?」
声も可愛らしいなっ!
《声なら私だって》
……ん?フィニがなんか言った気がするが気のせいだろう。
「えっと、冒険者になりたいんですけど。」
「冒険者登録ですね!では、こちらにステータスを。」
出されたのは門番さんが持っていた鏡の板がだされた。
「こちらには名前、性別、レベル、種族、称号が表示されます。スキルなどはあまり見られたくない方も多いので。」
なるほど。アレまぁ自分の能力はあんまり見られたくないのかもな。
俺は言われた通り『ステータス』と唱えた
「ナギさんですね。レベル1ですか。冒険者にはそれなりに危険も伴いますが大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です。」
本当はめっちゃ怖いけどね。
「わかりました。では、ギルドの説明をさせていただきます!」
受付嬢さんによると冒険者のランクは下からF.E.D.C.B.A.Sとある。ランクに見合った依頼を受けれる事になり、F〜Dは必ず月に2つは依頼をこなさないとランクが落ち、Fランクの場合資格剥奪になる。Cから上はそう言ったことがないが指名依頼をこなさいといけないらしい。ランクを上げるにはギルドが認めるとランクアップの依頼を勧めてくるので、それを達成するとはれて上のランクへ。断る事も可能とのこと。
「じゃぁ、早速試験内容をつたえますねぇ」
「え? 試験? なんのですか? 」
「冒険者になる為のですよ? 冷やかしの方もいたりするので試験を設けているんです。」
まじかぁぁあ! え、落ちたらどないしよ。
「では、内容なんですが、えーと……スライムを2体、ゴブリンを5体倒してきてください。倒した証拠として魔物の身体の一部を持ってきてもらうのがギルドの規則になっています。スライムは核、ゴブリンは左耳ですね。」
切り取れと⁉︎ 中々ハードル高いな⁉︎ てか、俺倒せるかなぁ……
「わ、わかりました。」
「ちゃんと魔物討伐の報酬もでますよ〜。試験をクリアしたら正式に冒険者として登録しますのでがんばってくださいっ! 」
「が、がんばりまぁす。」
そう言って俺はギルドを後にした。
☆
再び森へ来た。さて色々問題がありますな。まずは魔物を探す、次に魔物との戦闘、魔物の身体の切り取り。まぁ探すのと切り取りは何とかなるかもだけど、戦闘はなぁ
〈マスター。[自己設定]でステータスのカスタムを。魔法を覚えていないので魔力と魔攻撃は他に、また魔法を使う魔物はこの周辺にはいないので魔防御も不要と思われます。そうすればだいぶ戦いやすくなるかと。〉
そうか! [自己設定] があるんだ! 戦闘前は場面に合わせて必ずやる必要があるかな。フィニに言われ早速カスタムしてみた。
【ナギ】
種族:人間
レベル:1
魔力:0
攻撃力:25
防御力:20
俊敏性:20
魔攻撃:0
魔防御:0
【スキル】
なし
【魔法】
なし
攻撃力を少し高くしてはいるが、まぁ平均的にした。確かに何となく強くなった気がしないでもない。
〈このステータスならスライムやゴブリン位なら簡単に倒せます。〉
あとはやってみるしかないか。てな訳でスライムとゴブリンを探しに。んで、早速見つけました。半透明な水色で、真ん中には赤い球体がある。多分アレがスライムだわ。50cm位か? そんなでかくはないんだな。多分こっちには気付いてない。さてどうするか……
《マスター。私のカメラをスライムに向けて頂けますか? 》
スライムに気付かれない様にフィニは[思考会話]で話しかけてきた。
ん? カメラ? そうか。ついてるんだよな。アプリに無いから忘れてた。カメラ向ければいいんだな?
俺はカメラをスライムに向けた
【スライム】
レベル:2
種族:スライム
MP:3/3
攻撃力:6
防御力:6
俊敏性:6
魔攻撃:3
魔防御:3
画面にスライムのステータスがでてきたんだけども?もしかしてこれも?
《はい。私の機能の1つの[鑑定撮影]です。カメラを通して画面に映った対象のステータスを表示します。》
また有能機能発覚したよ……。相手のステータス見れるって中々チートなんじゃない?
《いいえ。スキルにも[鑑定]があるので。ちなみに[収納]というボックスに似たスキルもあります。スキルも多種多様にありますので》
あ、そうなんだ。ならチートってわけじゃないのか。スキルについても今度色々きいてみたいな。さて、スライムのステータス的に俺よりは強くないから大丈夫かな?
俺はスライムの前に飛び出し剣を構えた。スライムは「ぴぎぃ!」と威嚇している。ひ、ひとまず斬りつけてみればいいかな?
《はい。赤い部分がスライムの核になるので、アレを切れば倒せます。》
そう言われ一歩踏み出しスライムを斬りつけた。うまく核を真っ二つにできた。スライムはドロッと力が抜けたように崩れた。うわぁ。きもちわるっ。あ、核取らなきゃ。スライムの体から核をすくい上げた。
ひとまず[ボックス]にいれるか。そう思った瞬間核は光の粒になって消えた。
え?なぜ?
《[ボックス]と[思考会話]を連動させたので、考えるだけでアイテムを出し入れ可能にしました。また他のアプリとも連動したのでマスターの思考次第でアプリを使用可能です。》
フィニたん……君はどこまで出来る子になるんだ
《お褒めいただき光栄です。》
フィニの少し照れた様な声を聞いて少し萌えたところで次の魔物を探しはじめた。